NTT Com グローバル Watch vol.3

NTT Com グローバル Watch vol.3

アジアの金融市場の成長を支える、低遅延ネットワークと高機能データセンター

国際的な金融取引システムのスピードアップはとどまるところを知らない。コンピュータとネットワークを駆使した取引では、マイクロ秒(1秒の100万分の1)単位での遅れが致命的になるときもある。成長力の高いアジア金融市場でも、高速かつ高頻度でやりとりされる取引を、安定して行うためのネットワーク環境が求められるようになった。アジアの金融センター東京・香港・シンガポールと、さらにそれらを北米の取引所とつなぐ、NTT Comのバックボーンや高機能データセンターが注目されている。

マイクロ秒単位で注文を出す高頻度取引がアジアにも拡大

金融取引の世界では、一瞬の判断の遅延が大きな差を生むといわれる。わずかな時間で入手した情報が、100万ドルの利益を生むこともあれば、大損害をもたらすこともある。金融市場で効率よく利益を上げるには、取引情報に迅速にアクセスし、取引のチャンスを見極め、直ちに行動することが欠かせない。
近年、この判断のスピードはますます高速化している。その理由は、コンピュータ・プログラムを駆使したアルゴリズム取引や自動取引が一般的になったからである。なかでも1秒間に数千、数万回の取引を行うHFT(High Frequency Trading:高頻度取引)が注目されている。[図1参照]

米国、欧州、アジアでの高頻度取引割合

米国、欧州、アジアの各市場における高頻度取引の割合。米国市場はすでに70%近くに達し、欧州、アジアでも伸びている。2012年の予測では、アジアでも取引の20%が高頻度取引になる。

出典:Aite Group : Connecting to Future Opportunities : Cross‐Border Low Latency Connectivity

米国の金融業界では、例えば機関仲買人(ブローカー)の電子取引が1ミリ秒遅れただけで、数百万ドルの損失が生じることもあるといわれる。これが10ミリ秒ともなれば、年間での収益ロスは計り知れないものになる。
つまり、取引にかかわる処理速度を可能な限り短くする、ロー・レイテンシー(Low Latency:低遅延)への取り組みが、いまや取引所の競争力の源泉となっているのだ。

例えば、東京証券取引所では、取引所システムの競争力を高めるために、これまで以上に安全性・拡張性・高速性を強化した次世代売買システム「アローヘッド(arrowhead)」を導入し、2010年1月より稼働を開始した。この導入によって、注文応答時間を2ミリ秒にスピードアップし、さらに2012年5月に向けてそれを1ミリ秒以下まで短縮するという(※1)。

むろんこうしたスピード競争に追いつくためには、証券取引所システムの性能向上だけでは十分ではない。国境をまたぐ通信回線のスピードやネットワークの品質、さらにデータセンターの機能もまた不可欠のインフラになる。

とりわけ注目されるのは、アジアや北米の証券取引所をつなぐネットワークの増強だ。かつてロンドン、ニューヨーク、東京は3大国際金融センターといわれたが、90年代の日本経済の停滞および他のアジア市場の成長によって、現在は、香港、シンガポール、上海、東京を含む東アジアが、ロンドンや北米と並ぶ世界第3の中心地となっている。
高頻度取引の流れはアジアにも拡大しており、特にアジアのハブとしての香港・シンガポールに注目が集まっている。

※1 出典:日刊工業新聞2011年10月27日

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アジア金融市場をリードする香港・シンガポール

中国大陸の成長力を背景に伸びる香港金融市場

ここで、あらためて香港とシンガポールの国際金融市場における役割を振り返ってみよう。[図2-1、図2-2参照]
香港は世界有数の外為市場、証券市場として知られる。外為市場として香港はアジア第3位、世界第6位。1日平均の純取引額は2,376億米ドルにも及ぶ(※2)。証券市場としても香港証券市場(HKEx)は2010年末時点でアジア第3位、世界7位の時価総額(2兆7,000億米ドル)を誇る(※3)。さらに香港市場の特徴は中国企業が積極的に上場していることであり、事実、時価総額のうち中国企業が占める割合は55.5%に達する(※4)。後背地としての中国大陸との経済貿易関係はますます強化され、アジア太平洋地域の重要な金融センターとしての位置を固めようとしている。

図2-1 外国為替取引額(1日あたり) ※2 図2-2 株式市場時価総額 ※3

大胆な金融改革に成功したシンガポール

金融知識に精通し、英語が堪能なプロフェッショナル人材が豊富な点も、香港がアジアの金融拠点としての機能する理由の一つだが、この事情はシンガポールも似ている。
シンガポールの外為市場の1日あたりの取引額は、香港が2376億米ドル(世界シェア4.7%)であるのに対し、シンガポールは2660億米ドル(同5.3%)とほぼ拮抗している(※2)。
シンガポールは日本などよりも先んじて、金融改革に成功した国としても知られる。1999年に合併で誕生したシンガポール取引所(SGX)は、世界の主要取引所間での国際競争が激しくなる中、様々な規制緩和や大胆な改革を実施した。アジア各国をはじめ、欧米やオーストラリアなど海外の取引所との関係強化にも熱心だ。2007年には新興企業のための株式市場 CATALIST を新規開設。これは中国、インドを含むアジア新興国の株式の上場促進を狙ったものである。

アジア新興諸国の経済成長を背景に、重要度の高まる香港・シンガポールの金融市場。高頻度取引も、いまや欧米からこの地域へ集中するようになった。アジアの各拠点を緊密に結び、さらにアメリカともシームレスに接続する、信頼性の高い金融インフラへの期待は高まる一方だ。

※2 出典:国際決済銀行(BIS)調べ。2010年4月

※3 出典:国際取引所連合(WFE)調べ。2010年末

※4 出典:HKTDC:Economic and Trade Information on Hong Kong

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アジアの主要データセンターをつなぐ
「アジアン・トライアングル」始動

香港・シンガポールに高機能データセンターを増強

金融インフラ構築についてNTT Comのアジア各地での取り組みをみると、香港では2010年度第3四半期に、データセンター国際基準「Tier III」以上(※5)を満たし、環境にも配慮したプレミアムデータセンター「香港TKO」の建設を開始した。サービス提供は2012年度第4四半期の予定だ。

シンガポールでも、2010年7月、あらたなプレミアムデータセンター「セラングーン・データセンター」の建設に着手した。香港TKOと共に国際標準レベルTierIII基準相当以上を満たしており、現地に展開するITや金融系企業からはビジネス拡大ための戦略的インフラとしてその活用が期待されている。

アジア3拠点と世界を結ぶ「超低遅延」ネットワーク

香港、シンガポールでの取り組みに加え、NTT Comは東アジアと世界を結ぶ低遅延ネットワークの構築にも着手している。各地の金融センター間の遅延を最小化することが、国際金融ビジネスを活性化する鍵になるからだ。

東京・シンガポール・香港に設置された高機能データセンターのそれぞれをハブに、アジア3極のマーケット、金融センターを高速ネットワークで結ぶ。この「アジアン・トライアングル」は、当然ながら米国の主要データセンターともシームレスに接続している。[図3参照]

図3 全世界に広がるNTT Comのデータセンターと低遅延ネットワーク

全世界に拡張されたNTT Comのデータセンターとネットワークが、世界の金融市場における超低遅延取引を実現する。図の中心部に見えるアジアン・トライアングル(東京─香港─シンガポール)は、北米、欧州市場とも接続されている。

こうした金融ネットワーク網は、超高速・高頻度取引に対応した「超低遅延」(Ultra low-latency)ネットワークでなければならない。NTT Comの超低遅延ソリューションは、すでにニューヨーク、シカゴ、東京、香港、シンガポール、ロンドン間を結んでいる。なかでも日米間海底ケーブルPC-1は、世界最短・最速(ランディングステーション間)を誇るもの。このPC-1を使い、シカゴ証券取引所(CME)と東京の金融マーケットをエンドツーエンド・最短遅延値で結ぶサービスの準備も進んでいる。

北米・欧州からアジアへと拡大する金融ネットワーク。それを支えるために、NTT Comは主要マーケットの最前線で今後も高品質なネットワーク、データセンターサービスを提供し、お客さまをグローバルにサポートし続けていく。

※5 データセンター国際基準はTIA(米国電気通信工業会)およびTUI(The Uptime Institute, Inc.)によって定められたもの。商用電源、空調、UPS、発電機、配電ルートなどデータセンターに必要なファシリティの冗長構成や、運用体制・レベルを詳細に評価し、データセンター全体としての品質、信頼性を客観的かつ包括的に評価する仕組みで、「Tier I」から「Tier IV(最高水準)」までがある。

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現地事業担当者からのメッセージ

NTT Com Asia Ltd.

2013年からサービス提供を予定しているデータセンター「香港TKO」は、香港で初となる金融向けデータセンターで、国際標準レベルとして広く認知されているTier III基準以上(Tier IV ready)を満たし、金融機関等のお客さまの高い要求水準にも応えるNTT Com海外最大級のデータセンターです。敷地面積は約30,000uにも及び、香港内のデータセンターサービスプロバイダーが提供するデータセンターの中でも最大級となります。

本データセンターは、香港九龍半島東部に位置し、香港証券取引所に隣接する場所に建設中です。データセンター内の取引システムと取引所の距離が近いため、金融機関のお客さまへの低遅延ネットワークサービスの提供が可能です。

また、データセンターから取引所、その先の世界の金融ハブ拠点のデータ通信や電子取引のスピードに応える超低遅延ネットワーク環境も提供しています。この「データセンター間コネクティビティサービス」では、本データセンターをご利用いただくお客さまへ、より競争力のある価格・ルートをご提案します。

さらに、アジア地域をつなぐ新しい大容量光海底ケーブル「Asia Submarine-cable Express」(略:ASE)の陸揚げ局やグローバルネットワークのノードを使用したコロケーションは、香港、シンガポール、東京の金融ハブに対して超低遅延接続を可能にします。また、日米のランディングステーション間を最短で結ぶ海底ケーブルPC-1を使って、アジア経済のハブとアメリカもつないでいます。

NTT Singapore Pte. Ltd.

NTT Singaporeでは2011年11月に開催された金融イベントに出展し、低遅延ネットワークや高信頼・高品質なデータセンターへの需要の高さを再認識しました。NTT Singaporeでは、東京やシンガポール、香港の証券取引所に近接したデータセンターとNTT Comの超低遅延ネットワークを組み合わせることで、金融機関のお客さまに対してよりスピーディーな取引を実現させる低遅延ソリューションを提供しています。

2012年4月にオープン予定のNTT Singaporeの新しいデータセンター(セラングーンデータセンター)は、Tier IV readyで設備に対する高水準な要望にもお応えします。1ラックあたり12KVAまで対応可能で、生体認証をはじめとするさまざまなセキュリティ対策も万全です。また、NTT ComのTier 1ネットワークにも接続し、商業データセンターとして初めてシンガポール建設局(BCA)から「グリーン マーク プラチナ アワード」を受賞しています。

24時間365日業務を継続するだけでなく、非常に高スペックな通信インフラを求められるIT企業や金融機関のお客さまに対して、NTT Singaporeではセラングーンデータセンターを含む高品質なICTサービスを提供しながら、サポートして参ります。

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