Interview

2021.02.02

本当に解決したい「健康」課題のために、私たちが取り組むこと

<C4BASE総合コーディネーターと考える明日のイノベーション vol.3 前編>

C4BASE 総合コーディネーター 藤元 健太郎
C4BASE 企画委員
奥野 洋子 氏(都築電気株式会社)
西村 宏美 氏(株式会社日立製作所)


今回はC4BASEの企画委員でもある都築電気の奥野洋子さんと日立製作所の西村宏美さんをお招きし、中堅若手社員から見た企業変革への関わり方やお二人の共通テーマである「健康経営」への取り組み状況、ダイバーシティの考え方などを伺った。

コロナ禍において変わったこと、体験したことなど、ニューノーマルの状況について教えてください。

西村氏 日立製作所ではコロナ流行以前から在宅勤務ができる仕組みがありましたが、コロナ前はあまり利用できていませんでした。電話会議はたまにありましたが、対面での会議が9割くらい。それが一気に変わり、ほぼすべてオンライン会議になりました。
 実際にオンライン会議をやってみると、最初は不慣れで大変だったのですが、やると慣れてきて、オンライン会議がいいよね、と。会議の際の移動時間がゼロになり、効率が上がりました。会議数も増え、進捗も速くなったので、よかったなと思っています。

C4BASE企画委員 西村氏

C4BASE 企画委員 西村氏

奥野氏 当社は2020年2月時点で1,500人中約1,000人が既にテレワークを実施したことがある状態でした。同年2月に発足した新型コロナウイルス対策本部により、感染対策としてさらなるテレワークの実施推進を行いました。以降はテレワークが当たり前の働き方にシフトしています。
 現在に至る中で、社員の皆さんの健康課題がガラッと変わりました。もともと当社の二大健康課題は、多量飲酒リスクと睡眠不足リスクです。新しい働き方、新しい生活様式により、健康課題も変化しているのではないかと仮説を立て、アンケートを試みました。
 その結果、6割以上の人が眼精疲労と肩こりを感じていることがわかりました。国民病と言われる腰痛は4割と、肩こり・眼精疲労より少ない結果でした。世の中でこれが健康課題だと言われていることと、実際の現場にはギャップがある可能性があります。そのギャップは、データが埋めてくれます。
 ニューノーマル時代の健康経営推進者には、まず仮説を立て、データを基にした働きかけをゼロベースで企画することが求められていると感じています。

お二人の個人的な立ち位置や状況について教えてください。

奥野氏 私の立ち位置は二つです。一つが経営企画室として、SDGs/ESG経営を担当しています。その中に健康経営も位置付けられます。全体企画から個別の取組みまで、企業のサステナビリティにかかる企画を策定し、実行管理するというのが現在のメインミッションです。
 もう一つは、健康に関する研究機関とのコラボレータです。私は健康経営のプロ(笑)として働かせていただいていますが、「健康」そのもののプロではありません。大学の先生、整体師さん、スポーツインストラクターさんといった「健康のプロたち」と共に、実践的で効果の上がる健康経営の推進と、そのシステム開発に取り組んでいます。

C4BASE企画委員 奥野氏

C4BASE 企画委員 奥野氏


藤元 それは自分で希望されたミッションですか。

奥野氏 はい(笑)。こういうことをやりたいです!と手を挙げたところ、大学の先生たちから「研究チームにジョインしてみないか」とお声がけいただくという幸運に預かりました。会社や上長が承認してくださらないと取り組めないことですので、否定せず、認めていただいていることは本当に有難いと思っています。

西村氏 私は入社当初から営業職で、メインはそちらです。加えて、この一年間は営業企画の中にあるSIB推進部で、新しいビジネスを考える業務も担っています。
 新しいビジネスを考えるとき、お金を稼ぐことから入ると絶対に失敗すると思っているので、本当に自分が社会において解決したい健康の課題に焦点を当てています。日立の社内でやってみて需要があれば社外にも広げていく方針です。
 私も奥野さんと同じで、自分から希望したミッションとして取り組んでいます。SIB推進部と営業職を兼務することも、もともとやりたいとアピールしていて、その中で声をかけてもらいました。健康の課題に対して自分からアイディアを挙げて、SIB推進部(SIB=Social Innovation Business)の支援を受けながら取り組んでいます。

共創の観点から、お二人が共通して取り組んでいるテーマ「健康」についてお話を伺いたいと思います。具体的にどんなことをやっているか、教えてください。

奥野氏 グループウェアの中に、動画を見ながらのトレーニングや姿勢チェックができる「SMART LIFE CHALLENGE」(以下、スマチャレ)というシステムを実装しました。在宅勤務で背中が丸まり、呼吸が浅くなっている人が多いですが、人間は呼吸が命です。姿勢と呼吸を起点に、心身の不調や運動不足などを解消する、様々なメソッドを用意しています。ここで実際にやってみましょうか。

実際のSMART LIFE CHALLENGE画面イメージ

SMART LIFE CHALLENGE画面イメージ

取り組みシーン

SMART LIFE CHALLENGEのプログラムを体験したシーン



奥野氏 メソッドを実践すると、システムに健康貯金として利用履歴が登録されます。自分が取り組んだ健康行動の見える化ですね。そして、PCのカメラを用いた「姿勢チェック」の機能では、初回に撮影した自身の姿勢と最新の姿勢のビフォーアフターを自分で点検できます。
 システムの企画・リリースを経て感じたのは、新しい生活習慣を定着させるのはすごく難しいということです。説明会や掲示板で「やってみましょう!」と呼び掛けても、実行に移す人は全体の1割に届きません。企画時点でこだわったポイントが、利用者になかなか届いていないことがとてももどかしいですね。実際にメソッドをやってみると、身体の痛みに気づきますし、やったほうがいいなと感じていただけるのですが・・・。
 そこで、メソッド実施者を増やすために、説明会やダイレクトメールなどで、具体的なメソッドの利用シーンをお伝えしています。例えば、お客様との商談前やチームミーティングのアイスブレイク、連続したオンライン会議の合間、ランチタイム中・午後の始業前など、新しい生活様式に合致する習慣づくりに取り組んでみましょう!とお伝えしています。草の根活動により実践いただくことで、個人に変化を実感いただきながら、社員の健康づくりは当社の文化だ、ということをトップダウンで発信いただく。この両輪が大切だと思います。
 どんなに働く環境が変わっても、元気でなければ挑戦は続けられないのではないでしょうか。持続的な成長に向けた挑戦には、その土台である心と体が元気であることが最重要だと考えています。健康経営の役割は、より高いワークパフォーマンスに向け、健康な心と身体、意識、そして習慣づくりを支援することです。

藤元 それはコロナの前から考えていたんですよね。在宅勤務をする人が増えた中で、その考え方が良い方向に働いているのではないかと思いますが、どうですか。

奥野氏 そうですね。コロナ状況下では、会社方針として出社制限や懇親会の自粛などを発信しています。それを受けて、無意識に引っ込み思案になっている人が多くいらっしゃるように感じています。今までとは違う働き方に皆さんどこか不安を感じていて、不安を補うコミュニケーションもすごく減っている。心身、習慣、共に大きな変化にさらされているからこそ、スマチャレを自分自身やチームのセルフケアツールとしてうまく使っていただきたいと思っています。
また、2月以降、希望する企業・団体にスマチャレを無償で使っていただける環境のリリースに向けて準備を進めています。研究の成果は、広く世の中の皆さんの役に立ってこそ意味を持つと思います。是非、今後の当社のプレスリリースにご期待ください!!

西村さんの取り組みを教えてください。

西村氏 まず、私は営業職なのになぜ健康の取り組みをしているか。今までの経験から、これは解決しないといけないと思い、やらせてくださいと声を上げたんです。
 20代半ば、仕事が大好きで自ら進んで長時間労働をしていたころ、突然婦人科系の疾患を発症しました。私はいつか子どもを産んで家族で過ごしたいという理想があって、そのために仕事も頑張っていたんです。それが疾患を発症したことで子どもを産めるかわからなくなり、夢がお先真っ暗な状態になりました。最初は治療をしながら仕事をしていましたが、完治するまでにメンタルの調子を崩し、一度会社を休み、復帰の際も大変な思いをしました。
 そのときに、「単に戻ってくるのも面白くないし、私以外にも同じ経験をしている人がたくさんいるのでは。健康問題やライフプランを取り巻く状況を、日立で改善したい。日立で無理なら他社でやろう」と考えていたところ、SIB推進部で取り組む機会をもらいました。まずは日立製作所内で改善しようと活動しています。

レポートイメージ

西村氏 実は、女性の社会進出が進むほど、不妊の数は比例して増えているという意見もあるんですね。仕事が原因だとはっきりつかめているわけではありませんが、何かしら関係性があることはわかっています。今は仕事をしたい女性が増えてきているので、そこを改善する必要があると思っています。
 日立では、健康経営の担当者も人事総務部も、全社員向けの取り組みについてはすごく頑張っています。ただ、いろいろなジェンダーに特化した取り組みはこれからな状況です。性別に特有の疾患を発症するケースが多いことに対し、現場から声を上げて、女性に特有の課題をITのツールやアプリケーションを使って改善することをめざして取り組んでいます。
 私がアイディアを持って活動したことで、女性の働き方、ヘルスケアについて現場から改善を目指すプロジェクトが立ち上がりました。日立製作所の基礎研究所が関わっている健康的な社会を作るために研究開発を行っている北海道大学COIという団体に声をかけたことで、プロジェクト化できました。

北海道大学COIとは

プロジェクト資料

北海道大学COIとのプロジェクト資料

西村氏 プロジェクトでは、女性社員にヒアリングをして課題を抽出しました。そこで多く挙がった課題に、健康診断では性別に特有の疾患が見つからないということがあります。私自身も、疾患になっている時ですら健康診断の結果は全てAだったんです。
 妊娠・出産に関しては、妊活をいつやるべきかとか、何歳くらいまで産めるのかという情報を、若い人ほど知らないことが多く、知識が不足していることが課題です。周りにも妊活を考えていますと言える雰囲気ではなく、一人で問題を抱え込んだり、後ろ倒しして結局諦めないといけない状況になっていたり。
 また、コロナ状況下では、在宅勤務が進んだことで女性社員にどんな人がいるのかが見えなくなり、自分が理想とする将来像を実現している社員がいるのかどうか、日立でずっと働いてその理想を叶えられるかという不安を抱えている若い社員もいます。日立社員の女性の方はすごく頑張っているので、それを次の世代に活かしていく仕組みが必要だと言うことも見えてきました。
 ライフプランの実現に関しては、今は上司が部下にプランを聞くときも、聞き方を間違えるとセクハラになってしまいます。外から指示をしたり、フォローをすることが難しい。希望するプランを実現するための判断力や決断力を本人が持つことが必要です。決断のためには自分が何をすべきかを可視化してあげる必要があると思っています。そのうえで、社員個人が決断していくのを周りが受け止め、許容できる環境も整えないといけません。

C4BASE企画委員 西村氏

西村氏 これらの課題に対して、私たちは二つのアプローチを考えています。
 一つは、リテラシー教育です。今後のプランを考える人と、それを受け止める側のマネージャー層を対象に、健康やダイバーシティの知識、仕事に対する影響について冊子を作って配ろうとしています。
 二つ目は、アプリケーションの提供です。まずはライフプランとキャリアプランを作成し、自分がいつ何をする必要があるか、必要な情報を見える化する。そして、健康に問題があれば産業医・産婦人科医と連携してそれを管理してもらうことを目指しています。
 まずは今年度、社内で冊子とアプリケーションを作って小さく試してみます。うまくいけば人事総務部と連携もしたいですね。

後編では、プロジェクトを進める上で苦労しているポイントやダイバーシティの観点からお二人の取り組みについて伺った。(近日公開予定)

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