法人のお客さま総合 > Business ADVANCE > ICT用語ガイド > GUIDE 022 グリーンIT(Green IT)
パート1 注目されるグリーンIT
グリーンITとは、PCやサーバ、ネットワーク機器などに必要な電力や、二次的に発生する温室効果ガスを削減し、地球環境に優しいITを目指すもので、アメリカから始まった環境資源保護の動きです。主にデータセンターなどのIT関連機器が集中する設備での対策を指しています。この背景には、インターネット利用者の増加と、それに伴って増加したPC利用による電力消費量の急増などが挙げられます。
今世紀に入ってから、氷河の後退、北極圏や南極圏の氷の溶解、世界規模の海面上昇、大型暴風雨や巨大竜巻など、地球温暖化の影響と思われる現象が多数発生しています。なぜグリーンITが注目されているのかというと、これら温暖化の原因と考えられる温室効果ガス(二酸化炭素)は、電気エネルギーなどを得るために化石燃料を燃やすことからも生じるため、エネルギー消費量を減らすことが地球温暖化を防ぐことにつながるからです。異常気象や地球温暖化現象などへの関心や環境保護意識の高まりからであると考えられます。
世界的な経済成長や生活向上に伴い電気エネルギー消費量は増えており、一部の国では電力不足も起きています。これら電気エネルギー消費において、ITが必要とする量は大きな割合を占めています。経済産業省によると、2006年度国内のIT機器の電力消費量は総発電量の約5%を占めており、これは二酸化炭素(CO2)に換算すると乗用車約800万台に相当します。さらに現在のペースでIT機器が増加した場合、総発電量の約15%から20%に達すると予測されています。
また、いくつかのコンピュータメーカーやネットワーク機器メーカーからも今後の増加についての試算がなされており、それによると世界中のネットワーク利用者は1週間で300万人の割合で増加し続け、2008年中には13億5,000万人がPCを利用すると予測されています。デスクトップPCは1台で200Wの電力を必要とするため、毎週600,000,000W(600MW)の需要が増え続けることになります。
電力を消費するのはコンピュータだけではありません。ネットワーク機器も電力を必要とします。インターネットのトラフィック増加により、ルータなどネットワーク機器が処理に必要とする電力も増え続けています。もし、省消費電力対応がされていないルータを使い続けた場合、数年間で水力発電所一基分に匹敵する電力が消費されるとの予測もでています。
コンピュータやネットワーク機器が抱える問題は電力消費量の増加だけでなく、より高速なCPUの採用や大量のデータ処理によって起きる発熱も問題となっています。CPUは高速になればなるほど回路の動作が速くなり、結果として消費電力が増えるため発熱量も増加し、最近の高速なCPUの表面は70度以上に達するほどです。半導体はある温度を超えると正常に動作しなくなるため適切に冷やす必要がありますが、PCならヒートシンクやファンなどで冷却できても、大型コンピュータやサーバを設置するコンピュータルームともなると発熱量は膨大なものになるため、コンピュータルームの部屋そのものを冷やさなければならず、さらに冷房による電力消費が問題となります。
サーバが集中するデータセンターでは、コンピュータだけでなくネットワーク機器、空調設備、監視機器、照明なども電力を消費します。IT関連機器の電力消費においてデータセンターの電力消費量は約1/4を占めており、早急な省消費電力化が求められているのです。
しかし、ITそのものは地球温暖化対策に大きく貢献しています。例えば電子メールやWeb会議により会議や打ち合わせが減ることで、移動などにより発生する二酸化炭素が削減されます。また、ミュージックダウンロードでは、CD制作やユーザが音楽CDを購入する場合に発生する環境への負荷が削減されます。このように地球環境温暖化には優しいITですが、技術が進化しサービスが高度になればなるほど、より高速なCPUを搭載したサーバや膨大なデータを扱うデータセンターが必要になってきます。Webサービスやストリーミングビデオ配信など増え続けるデータに対応するため、アメリカではデータセンターを巨大化させたメガセンターの建設が進んでおり、さらなる電力消費量の増加が問題となっています。
これらのようなデータセンターでの電力消費量を減らすために、次のような対策が求められています。
もちろんこれらの対策はデータセンターのみで行えるわけでなく、プロセッサメーカーやハードウェアメーカーなどとの協業が必要となってくるため、業界の枠を越えた取り組みも世界中で始まっています。
データセンターの電力消費量問題に対応するコンソーシアム、The Green Grid(米)は、2007年2月26日、データセンターにおけるエネルギー効率運用、建設、設計を目的とした非営利団体として設立されました。The Green GridはAMD、HP、Sun、IBMが中心となって結成され、APC、Dell、Intel、Microsoftなど102社に及ぶメンバー企業が参加しており、データセンターにおける電力効率の基準の策定、電力効率統計情報や効率的なデータセンター構築のガイドラインなどを提供しています。
また、2007年6月よりGoogleとIntelによって始められたClimate Savers Computing Initiative(米)ではコンピュータ業界、企業、一般消費者、政府、環境団体が協力して、PCやサーバ機器の電力効率を飛躍的に高めていくことを目的としています。これに参加しているコンピューターおよび部品の製造者は、特定の電力効率目標を満たす製品を製造することを、利用者である企業関係者は、電力効率のよいコンピューターシステムを購入することを約束し、賛同する参加者が取り組むことによって2010年までにコンピュータ電力消費量の約50%を削減することを目標としています。
すでに、AMD、Intel、Sunなどのプロセッサメーカーからは相次いで省電力プロセッサが発表されており、これらを利用したサーバによる大幅な省電力化が見込まれています。また企業からも環境保護への取り組みの発表が相次いでいます。
日立製作所からは、2007年10月1日付けでデータセンター省電力化推進組織を設置することが発表されました。これによると、サーバ集約化やデータ集約化に伴うIT機器の増加でデータセンターのエネルギー消費量が増加しており、今後拡大するデータセンターの省電力化に向けて今後5年間で全体消費電力の50%削減を目指すとしています。
また、松下電器産業からは2007年10月5日に、全世界の工場から排出されるCO2の総量を、今後3年間で30万t削減する方針を発表しました。さらに一定の省エネ性能の満たさない商品を発売しない予定としています。
一方、経済産業省でも、本腰を入れたITの省エネルギー対策への取り組みが始まろうとしています。経済産業省では2008年度産業技術関連予算の概算要求の中で、エコイノベーションの推進のためのプロジェクトとして、「グリーンIT革新プロジェクト」予算に48億円を計上しました。これにより、サーバやネットワーク機器などIT関連機器の省電力化へ向けた技術開発への資金援助を行うことで、ITの省エネルギー技術開発を積極的に進めて行く考えです。
このようなグリーンITへの取り組みは始まったばかりです。またこの取り組みは政府やメーカー、そしてデータセンターだけでなく、利用するユーザの参加も重要であると言えるでしょう。未来に向けた地球環境保護のために、無駄のない効率的なITの活用が求められているのです。
