後半土壇場で神戸製鋼にハラハラ劇的ドロー!
金正奎キャプテン「チームは確実に成長しています」。
リーグ中断期間で過酷なトレーニングを積んだNTTコミュニケーションズシャイニングアークス(以下アークス)は、12月2日(土)、東京・秩父宮ラグビー場に昨季トップ4の一角、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(以下神戸製鋼)を迎えて、第10節を戦いました。
秩父宮ラグビー場には約1万人(9784人)の方々が来場。快晴にも恵まれ、絶好のラグビー日和となりました。
この日もチームブースではスーツに身を包んだ選手達が受付に立ち、訪れたファンの方々に対応。写真撮影なども行って交流を深めました。
対戦相手の神戸製鋼は、言わずと知れた日本ラグビー界の強豪。1994年度には社会人大会&日本選手権7連覇を達成しました。
今シーズンの神戸製鋼は、第9節を終えて6勝3敗でレッドカンファレンス2位(総勝ち点29)。同じカンファレンスに所属するアークスとしては乗り越えなければならない相手です。
迎え撃つアークスは、5勝4敗でレッドカンファレンス5位(総勝ち点23)。2位神戸製鋼との勝ち点差はわずか「6」と大混戦です。
リーグ戦残り4試合を全勝で勝ち進み、各カンファレンス上位2チームによる日本選手権(優勝決定トーナメント)出場を掴むべく、この一か月間は千葉合宿を含む厳しいトレーニングに励んできました。
特にフロントロー(FW第1列)は、FL金正奎キャプテンが「たぶん日本一練習したと思います」と語るなど、練習後のアフター練習や独自の筋力トレーニングに注力。「この一ヶ月は、神戸さんにスクラムで勝つためだけに準備をしてきました」(PR上田竜太郎)。
果たして猛特訓は報われるか。試合前には両軍応援団によるエール交換も行われるなど、天候同様に爽やかな雰囲気のなか、午後2時、運命の第10節は加藤真也レフリーの笛でキックオフを迎えました。
試合は神戸製鋼がキックオフを失敗したことによるセンタースクラムから。
ここで神戸製鋼がコラプシングの反則を犯し、スクラム戦は幸先の良いスタート。神戸製鋼はさらに自陣のラックで反則を犯して、アークスにペナルティのチャンス。
ここでショットを選択したアークスは、FB小倉順平が右脚を振り抜き、ペナルティゴール(PG)成功。3点を先制します。
この日バックスではCTBシェーン・ゲイツが躍動。
自陣での好タックルから相手ボールをターンオーバーすれば、左サイドでもSH光井勇人→CTB石橋拓也とつないでCTBゲイツがラインブレイク。
すると前半11分、敵陣でのスクラムから連続攻撃を仕掛けたアークスは、ショートサイドで22歳のNO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコが突破!
最後は左隅をWTB小泉将が切り取り(ゴール失敗)5点を追加。8-0とリードします。
しかし神戸製鋼もアークス陣で高い集中力を発揮し、前半16分には相手14番が右中間にトライ(ゴール)。リードは1点差(8-7)となり、のちの接戦を予感させる展開となります。
神戸製鋼はディフェンスでアークスを押し戻すなど、鋭い出足の防御を見せますが、たびたびラックで反則を犯して自陣へ後退。
しかし前半24分、スクラム戦では足場の悪いなかで優勢も、アークス陣でのターンオーバーから左サイドで細かいパスをつなぎ防御を突破。
最後は相手12番が抜け出して逆転トライ。ゴール成功でスコアは8-14に。
しかし神戸製鋼はやはりディシプリン(規律)に手こずり、前半28分にはFB小倉がふたたびPGチャンスを確実に決めて3点追加(11-14)。
すると前半32分、自陣ゴール前でピンチをしのいだアークスは、迎えたマイボールスクラムで神戸製鋼FWを圧倒!猛特訓の成果を目に見える形で披露しました。
しかし神戸製鋼は前半終了間際、フリーキックからのリスタートで左大外に展開。相手15番が左隅でトライをもぎ取り、神戸製鋼のリードは10点(11-21)に。
両者ともにミスが多くなったゲームは後半へ。しかしFL金キャプテンが「2、3年前であれば大差で負けていた」と振り返った試合で、アークスは後半に強い精神力、進化を披露します。
10点を追いかける後半はアークスの長い攻撃からスタート。CTBゲイツ、SH光井のライン突破などそれぞれのラン能力を発揮しながら前進すると、神戸製鋼が自陣ゴール前で反則。
ここでFB小倉が3点のショットを決めて、ビハインドを7点(14-21)に縮めます。
しかし直後の後半5分でした。
アークス陣に入った神戸製鋼が防御裏へキック。インゴールへ転がったボールをアークスが押さえ損ね、またTMO判定の結果、神戸製鋼の直前のノックオンは認められず、神戸製鋼のトライ(ゴール)が決まりました。14-28。
【選手入替/後半 7分】NO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ→アマナキ・レレイ・マフィ
ふたたび10点のリードとなり、窮地となったアークス。
しかし後半13分、アークス陣での左スクラムからの一次攻撃で相手9番のパスが乱れ、これをCTBゲイツが敵陣へ蹴り返します。さらにドリブルを重ねてボールを懐へ入れると、そのまま約70メートルを切り返す追撃のトライ!
FB小倉のゴールも成功し、アークスが7点を返して21-28としました。
【HIA/後半 14分→後半22分】SO友井川拓→菊池功一郎
【選手入替/後半 18分】LOアイザック・ロス→石神勝
【選手交替/後半 22分】SO友井川拓→菊池功一郎
受けに回った神戸製鋼は自陣で反則を重ねますが、アークスもタッチキックやラインアウトでミスを重ね、敵陣から中盤にかけてエリアを一進一退。
HO三浦嶺の好タックル、ラインアウトでのFL鶴谷昌隆のスティール、途中出場の菊池功一郎の独走など、アークスも好プレーで攻勢をかけますが、神戸製鋼も要所で好ディフェンスを見せて抵抗します。
【選手入替/後半 24分】PR上田竜太郎→庵奥翔太/HO三浦嶺→須藤拓輝
【選手入替/後半 31分】PR三宮累→小野慎介
【選手入替/後半 36分】WTB小泉将→溝口裕哉
ビハインドは7点のまま、試合は最終盤へ。
後半終了直前、自陣から攻め立てるアークスに対して、相手12番が故意のノックオン。TMO判定の結果シンビン(10分間の一時退場)となり、神戸製鋼は土壇場で14人に。
ペナルティをもらった後半ロスタイム。
ハーフウェイライン付近から1トライ1ゴール(7点)を狙ってアタックを始めたアークス。しかしディフェンスに回った神戸製鋼がノックオンを誘い、ボールを奪取。
そのまま神戸製鋼がタッチへ蹴り出して無念の敗戦、と思われましたが、相手19番にハイタックルがあったとして、これもTMO判定の結果、相手19番の選手がシンビンに。
【HIA/後半 42分→後半47分】FL鶴谷昌隆→三浦嶺
相手が13人の状況でペナルティをもらったアークスは、敵陣左サイドからラストアタック。しかしここでも神戸製鋼にハイタックルがあり、ペナルティをもらったアークスは途中出場の溝口裕哉が右奥へ好タッチキック。
この最終盤で巡ってきたラストチャンスについて、FL金キャプテンは試合後、「鶴谷(昌)が抜けてしまい、ラインアウトについて不安に思われていたと思いますが、僕たちはモールに自信を持っていこうという話をして、上手く意志統一ができました」。
FW出身のロブ・ペニー ヘッドコーチ(HC)、大久保直弥FWコーチらの指導で磨いてきたラインアウトモールの見せ所がやってきました。
途中出場の須藤拓輝がスローインしたボールは、この日キャリアーとしても奮闘し続けたLO牧野内翔馬の手へ。モールは相手に引き倒されても後方は自立し、そこから手薄となった右方向から前進。
モール最後尾は日本代表戦の直後にも関わらず後半投入のアマナキ・レレイ・マフィ。そのまま力強くインゴールへ雪崩れ込み、少しの間があってからトライ認定の笛。26-28!
しかしビハインドはまだ2点。同点となるか、敗戦となるか――チームの命運はゴールキックを蹴るFB小倉に託されました。
やることは何も変わらない――そんな平常心で臨んだというFB小倉のゴールキックは、バックスタンドのアークス応援団が見守るなか、見事にHポールの間をすり抜けました。
そしてノーサイド。同点ゴールが決まったのは後半47分。最終スコアは28-28。
勝利こそなりませんでしたが、神戸製鋼に対しては2011年度以来6年ぶりという黒星以外の決着を迎えました。
劇的なドローとなったことに関しては、ペニーHCは試合後「我々は勝利したような気持ちで、おそらく神戸さんは負けたような気持ちでしょう」と表現。
TOP4入りへ自信を深めるドロー(勝ち点2)を土壇場でもぎ取りました。
試合後、FB小倉順平選手の日本代表キャップ授与式が行われ、ラグビーらしいノーサイドの精神で両チームの選手が混ざっての記念撮影。お互いの健闘を称えました。
今シーズン初の同点決着となって勝ち点2を加えたアークスは、総勝ち点25でレッドカンファレンス5位のまま。
第10節を終えて、レッドカンファレンス2位は第12節で対戦予定のトヨタ自動車ヴェルブリッツ、3位は神戸製鋼、4位は東芝ブレイブルーパス。
リーグ戦は残り3試合。まだまだカンファレンス2位以内に入る道は残されています。
次戦の第11節の舞台は、ふたたび東京・秩父宮ラグビー場。12月9日(土)、4勝6敗でホワイトカンファレンス5位のキヤノンイーグルスと相まみえます。