多彩なアタック、激しいディフェンスで魅了も
チャレンジ阻まれ今季2敗目。
前半戦の大一番――。2017年度のトップリーグは第4節を迎え、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(以下アークス)が、9月9日(土)、昨季1位のサントリーサンゴリアス(以下サントリー)と対戦しました。
舞台は東京・秩父宮ラグビー場。気候は9月のナイトゲームということもあり過ごしやすく、涼しい夜風の中、7964人の方々が成長著しいアークスと、昨季王者との一戦を見届けました。
対戦相手のサントリーは、アークスと同じレッドカンファレンスに所属。開幕3連勝でカンファレンス2位(総勝ち点14)につけている上位陣です。
昨年は就任1年目の沢木敬介監督のもと、4年ぶり4度目のトップリーグ制覇。オーストラリア代表で111キャップを重ねたFLジョージ・スミスなどの世界的スターに加え、多くの日本代表選手を抱える強豪です。
しかし多くの才能を誇るのはアークスも同じ。前節では、近鉄ライナーズに36-10で勝利して2勝1敗(総勝ち点10)。カンファレンス4位から上位を窺います。
アークスにとっては前半戦の大一番。照明の焚かれた午後7時、塩崎公寿レフリーの笛で、アークスのキックオフボールが舞いました。
立ち上がりで存在感を発揮したのはアークス。
SO小倉順平のキックパスを交えながら16次攻撃を仕掛けると、前半6分にはサントリーがラックで反則。ここはSO小倉がペナルティゴールを成功させて、3点を先取します。
アークスはその後も自陣から積極的にボールを展開。磨かれてきたハンドリングスキルを活かしてボールを左右へ動かします。
しかしラックでボールをターンオーバーされると、前半9分にはサントリーがこの日最初の敵陣でのアタック。6次攻撃目でループプレーから相手11番が左隅にトライ。キックは不成功で3-5となります。
さらに攻勢を掛けるサントリー。持ち前の連続攻撃でアークス陣内に攻め込みますが、前半13分、NO8アマナキ・レレイ・マフィが相手14番に絡みついて攻撃権を奪取。チームをピンチから救うビッグプレーを見せます。
しかし前半17分、アークスのハイタックルにより攻め込んだサントリーは、連続攻撃から相手14番が右隅でトライ(ゴール失敗)。両WTBがスコアして3-10とリードが拡大。
しかし前半25分でした。
NO8アマナキ、CTBブラッキン・カラウリアヘンリーらが左右でゲインを切り、敵陣22mエリアに入ったアークス。応援団の声援を受けながら、PR庵奥翔太、HO三浦嶺、PRレイルアマーフィーのFW第1列も力強いボールキャリーを重ねます。
さらにFL金正奎キャプテンもトップスピードでゲイン。ここで一度はボールを奪われ外に展開されますが、もう一人のFLである栗原大介が、片腕一本で相手14番を倒す剛腕を披露!すぐに起き上がりNO8アマナキらと共にボールをターンオーバー。
右で待っていたCTB石橋拓也が右中間を突破し、この日チーム初トライ!ゴールは失敗も8-10と点差を縮めます。
勢いに乗ったアークスは、再開後のプレーでも自陣から展開。ラインブレイクに長けたCTB石橋の突破からNO8アマナキ、WTB鶴田諒とつないで敵陣へ入ります。
相手のハイタックルでさらに敵陣深くに侵入したアークスは、FL金キャプテンが防御網を切り裂く突破を披露。相手ゴール目前に迫ると、ここでボールを右展開するチャレンジングなアタックを見せます。
しかし最後は相手7番にボールを奪われ、自陣に戻されます。試合後にFL金キャプテンも「取りどころで取り切れなかった」と悔やむシーンのひとつとなりました。
アークス陣内に入ったサントリーは前半35分。
安定しているラインアウトから波状攻撃を仕掛け、相手15番がタックラーを弾きながら左中間にグラウンディング。ダミープレーを交えながら外で取り切る勝負強さを見せ、ゴール成功で8-17。
【HIA/前半38分→前半39分】PRレイルアマーフィー→白隆尚
【選手交替/前半39分】PRレイルアマーフィー→白隆尚
さらに前半終了間際の38分、サントリーはスクラムから左展開して相手13番が突破。左隅で生まれたラックを基点にして、最後は相手6番が突進からトライ(ゴール失敗)。
8-22とサントリーのリードで前半を折り返します。
後半もスタートダッシュを決めたのはアークス。
自陣でサントリーの攻撃を受け止めると、途中出場のPR白隆尚がイーブンボールへ反応してボール奪取。SO小倉のキックで敵陣へ入ると、後半5分にサントリーが反則。
ここはSO小倉がショットを冷静に沈めて、ビハインドを11点(11-22)に縮めます。
ここからゲームの好守がさらにヒートアップ。
アークスのターンオーバーを交えて、お互いに長い攻撃が続きます。アークスは再度、自陣へ攻め込まれますが、最後は相手10番がノックオン。
ディフェンスで奮闘したアークスが粘り勝ちで攻撃権を引き戻します。
【出血/後半11分→後半13分】FL栗原大介→牧野内翔馬
後半15分、アークス陣内に入ったサントリーは、モールコラプシングのペナルティからスクラムを選択。アークスはこの日劣勢だったスクラムで、ここから2度のコラプシングの反則を取られてしまいます。
【選手入替/後半17分】HO三浦嶺→種本直人
HO種本を投入して組み直した同地点での3度目のスクラム。
ここでもレフリーにペナルティをコールされてしまい、反則の繰り返しにより途中出場のPR白がシンビン(10分間の一時退場)。すでに同ポジションの3番で先発していたPRレイルアが、脳しんとうの検査により交替不可能のため、スクラムは押し合いをしないノーコンテストスクラムとなりました。
直後の後半21分、右ゴール前ラインアウトを選択したサントリーは、6番が密集を抜け出してトライ(ゴール成功)。11-29とリードを広げられてしまいます。
【選手入替/後半25分】PR庵奥翔太→上田竜太郎/SH湯本睦→友井川拓/NO8アマナキ・レレイ・マフィ→ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ/CTBブラッキン・カラウリアヘンリー→シェーン・ゲイツ
14人となったアークスですが、LOヴィリー・ブリッツがボールを奪い取るなどディフェンスで粘り、失点を防ぎます。
逆にサントリーが反則を重ねたことで相手ゴールへ迫りますが、ノックオンなどもあって得点はなりません。
【選手入替/後半29分】WTB小泉将→マックス・ウッドワード
【選手入替/後半35分】LO杉浦直人→牧野内翔馬
15人に戻った後もアークスはゴールを背負って身体を張り続け、サントリーの反則を誘ってエリアを戻すなど、試合後ロブ・ペニー ヘッドコーチが「選手の努力を誇りたい」と語ったハードワークを披露します。
しかし後半終了間際の40分、相手15番にタックルを何度も外されてゴール中央を奪われてしまいます。ゴールキック成功で、最終スコアは11-36。
自陣やゴール前で何度も挑戦的なアタックで魅了し、ディフェンスでは一時的に14人になりながらも奮闘。
確実にファンを増やした戦いぶりを見せたアークスですが、サントリーの敵陣に入れば高確率でスコアする決定力、強いスクラム、個の力などにチャレンジを阻まれてしまい今季2敗目。
7点差以内のボーナスポイントはなく、勝敗は2勝2敗(総勝ち点10)でカンファレンス4位残留。
1週間の休みを挟み、次節の豊田自動織機シャトルズ戦へ向かい、再浮上を目指します。