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DX時代の人材育成でカギとなる「リスキリング」とは?

「リスキリング(reskilling)」は、テクノロジーが進展したことによって、新たに求められるスキルを習得することです。近年ビジネスの形が大きく変わり、それに伴って人材に求められるスキルも変化しつつあります。この変化に適応するための取り組みとして、多くの企業がリスキリングに取り組み始めています。

テクノロジー進展に伴う新たなスキル習得を意味するリスキリング。AIやDXによる業務変化に直面する組織の人材育成の取り組みとして注目、実践されつつあります。

第4次産業革命で求められるリスキリング

AI(Artificial Intelligence)やIoT(Internet of Things)、ビッグデータなどといった革新的な技術により、従来人が行ってきた労働が自動化される「第4次産業革命」と呼ばれる世界の実現、新たな時代が着実に近づきつつあります。

通称「ダボス会議」で知られる「世界経済フォーラム」では、2018年から3年連続で「リスキル革命」と銘打ったセッションが開催されました。そのテーマは、「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」というもので、「第4次産業革命により、数年で8,000万件の仕事が消失する一方で9,700万件の新たな仕事が生まれる」と予測しています。

具体例として挙げられるのが、AIを用いた自動運転です。その技術によって自動運転トラックを実現できれば、人が運転する必要はなくなるでしょう。実際、すでに先頭のトラックだけを人が運転し、後続の2台目、3台目のトラックは無人運転となる後続車無人隊列走行の技術の実現に向けた取り組みが進められています。

事務作業の自動化も積極的に進められるでしょう。これまで企業はITの活用などによって、事務作業の効率化、自動化を図ってきましたが、人の判断が必要な作業の自動化は困難でした。たとえば入力された内容が正しいかどうかを判断し、その内容に応じて処理を柔軟に変更するといった作業です。しかし今後AIが普及すれば、このような人が判断していた作業についてもスキル可視化が可能になり、自動化されていくと考えられます。

ロボットやドローンに代表される、スマートマシンによる自動化も進むでしょう。実際、倉庫内でのピッキングをプログラミングされたロボットで行い、人手による作業を大幅に軽減したといった事例は数多くあります。また個人向け宅配サービスにおいて、ドローンを用いて商品を配送する実証実験も各地で進められています。

このようにさまざまな業務が無人化・自動化されると、人が職業を奪われる可能性が出てきます。これは多くの人にとって脅威と言えるでしょう。ただし、その一方で新たな業務が生まれることも事実です。多くの作業がロボットに置き換えられるのであれば、そのロボットを開発したり、業務に合わせてロボットをカスタマイズしたりする人が必要になるうえ、プログラミングによりロボットを管理・制御する人材も求められるというわけです。

しかしながら、新たな業務に対応するためには、そこで求められるスキルを学習し身に付けておく必要があります。OJTなどでは取得することが難しい、新しいスキルを身に付ける取り組みが「リスキリング(reskilling)」もしくは「リスキル(reskill)」です。リスキリング(リスキル)によって新しいスキルを身に付けていれば、たとえ自分の仕事がAIやロボットに置き換えられたとしても、別の業務で仕事を続けられる可能性が高まります。

また、企業においてもリスキリングは重要です。たとえば、ロボットを効率的に運用するための人材が必要になったとき、そのスキルを持った外部人材が取り合いになっていて、雇用するのが難しいといった状況が考えられます。しかし、将来を見据えて従業員に対してトレーニングを行い、今後必要なスキルを身に付けてもらうリスキリングの取り組みを進めていれば、外部に人材を求める必要はありません。

なお、リスキリングに似た考え方に「リカレント(recurrent)」があります。「recurrent」はもともと反復、循環などを意味し、知識やスキルをアップデートするための取り組みであるという点において、リスキリングとリカレントは似ています。異なるのは、学ぶことに重点が置かれているリカレントに対し、リスキリングは働き続けるためにスキルを習得することを重視している点です。ちなみに「リカレント教育」とは、生涯を通じて学び続けることを意味します。学校を離れた社会人が、学び直しする行為がリカレント教育です。一方、リスキリングは単に学ぶだけでなく、環境が変わり現在の職がなくなっても、新たな業務で価値を創出して、生き抜くことが目的となっています。

さらに、リスキリングと類似の言葉に、「アップスキリング」という言葉もありますが、リスキリングがスキルを塗り替えることであるのに対して、アップスキリングはステップアップでスキルを高めることを意味します。

海外で進むリスキリングの取り組み

デジタル時代を迎え、ビジネスモデルや事業戦略が変革する中、必然的に人材戦略も変えていかなくてはなりません。そこで、リスキリングによる人材戦略に取り組む企業も現れ始めています。たとえばAmazonは、2025年までに7億ドルを投じて10万人の社員を再教育する計画を打ち出しました。研修プログラムの拡充や新たなプログラムを追加し、より高度な職種への異動や転職を支援することが目的であるとしています。

リスキリング事例として、ユニークな取り組みを行っているのがウォルマートです。同社はVR(Virtual Reality)を用いてトレーニングコンテンツを従業員に対して提供し、実践的なスキルを身に付ける取り組みを進めており、100万人以上のスタッフに向けてトレーニングが行われています。

なお、経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」(2021年)においても、企業・組織内外におけるリスキリング促進の重要性が述べられています。このような経済産業省の指針を裏付けるように、日本においてもDXを推進することなどを目的として、リスキリングを実践する企業が現れ始めています。ある企業では、DX人材を育成するための取り組みを積極的に進めており、国内全従業員を対象としてDXの基礎教育を実施しています。

こうしたリスキリングへの取り組みを2013年から進めているのがAT&Tです。同社は2013年に「Workforce 2020イニシアティブ」と呼ばれる取り組みをスタートしましたが、その背景にあったのは、将来必要となるサイエンスやテクノロジー、数学的スキルといったスキルを25万人の従業員のうち半数しか持っていなかったという事実でした。

そこでAT&Tは既存従業員に対して新たなスキルを獲得できる機会、学び直しする機会を提供することで、この課題解決を図ります。それがWorkforce 2020イニシアティブの取り組みで、2020年までに10万人の従業員にリスキリングを目的としたトレーニングプログラムを提供しました。

またAT&Tは単にリスキリングの機会を提供するだけでなく、業務の整理・統合や、それぞれに求められるスキルや能力を明確化しました。また従業員における業績評価において、事業目標の貢献に加え、業務の市場価値の視点も取り入れています。これによって市場価値の高い業務への移行や、そこで必要となるスキルの習得を促すという戦略です。なおAT&Tのリスキリングプログラムに参加する従業員は、参加しない従業員に比べて、1.1倍高い評価、1.3倍多い表彰、1.7倍の昇進を実現し、離職率は1.6倍低いという結果が出ています。

さらに社内にある職種やそこで求められるスキル、想定給与レベルなどが見られるポータルの提供や、自社作成のコンテンツだけでなく、著名な大学と協業して作成したオンライントレーニングコンテンツの提供、大学が提供するオンラインプログラムを受けるための学費のサポートなど、広範な支援を行っています。

AIなどによって業務が自動化されることは、従業員から見ると職を奪われることにつながります。とはいえ企業としても、それを実現するための人材がいなければ自動化が果たせないことになり、企業としての競争力の低下につながりかねません。つまり企業側から考えても、業務の自動化はメリットもあるが、リスクを内包していると捉えられるわけです。

もちろん、そのために必要な人材を外部に求めることも可能ですが、デジタル人材などは容易に採用できないことも考えられます。そこで重要となるのが既存の従業員のリスキリングであり、企業として積極的に取り組まなければ、将来的なビジネスに支障が生じることが十分に想定されます。

なお、日本マイクロソフトはパーソルイノベーションと協業し、「学びのコーチ Microsoft Skilling Partnerプログラム」を提供しています。これは企業のデジタル人材の育成や、リスキリングを支援すること目的としたものです。今後、このように企業のリスキリングを支援するサービスも広がっていくでしょう。

日本における人材教育とリスキリング

それでは、日本企業の従業員に対する教育研修の現状について見ていきましょう。

産労総合研究所が公表した「2021年度 教育研修費用の実態調査」によれば、2020年度の教育研修費用総額は4,625万円で、前年度(6,559万円)よりも減少傾向にあります。また従業員1人あたりの教育研修費用についても、2020年度は24,841円で、前年度(35,628円)を下回る結果となりました。

なお、2020年度予算と2021年度予算を比較すると、予算が増加した企業は35.4%、減少した企業が50.3%であり、減少した企業が増加した企業を上回っています。しかし、教育研修費用総額についての今後の見通しでは、「現状維持」(39.3%)や「やや増加」(36.5%)と回答した企業が目立っていて、「やや減少」(12.8%)、「かなり減少」(4.7%)は少数となっています。コロナ禍の状況下で、企業は研修費用を減らす傾向にあったが、ここにきて次第に増加する傾向が見られるようです。

2020 年度予算と2021 年度予算の比較

画像:2020 年度予算と2021 年度予算の比較

教育研修費用総額の今後(1~3 年)の方向性

画像:教育研修費用総額の今後(1~3 年)の方向性

※出典:産労総合研究所「企業と人材」:「2021年度 教育研修費用の実態調査」

この背景にある理由はいくつか考えられますが、その1つとして挙げられるのは、新型コロナウイルスの影響による収益低下の影響でしょう。新型コロナウイルスによって売上が下がり、従業員の教育や研修に十分な予算を確保することが難しくなっているといった状況です。

教育研修費用の減少は、コロナ禍における一時的な対応である可能性もありますが、もし将来にわたってダウントレンドが続けば、従業員のスキル不足や組織力の低下などにもつながりかねません。

DXやAIを用いた自動化などに社内の人間では対応することができず、必要な人材を外部から雇用することも困難などといった自体に直面すれば、デジタル時代のビジネスそのものにも影響を及ぼしかねないでしょう。

こうした事態を避けるためには、教育研修費用を未来への投資としてあらためて位置付け、積極的にリスキリングに取り組み、従業員の積極的なスキルの再開発にチャレンジすべきでしょう。

AIで業務が変わるコンタクトセンターのリスキリング

このリスキリングが求められつつある現場として、コンタクトセンターがあります。すでに数多くのコンタクトセンターにおいて、顧客応対をAIで自動化するための取り組みが積極的に進められています。今後さらにAIが進化し、顧客からのお問い合わせの多くについて、人手を割かずに対応できるようになれば、オペレーターに求められる資質は確実に変わるでしょう。

さらにオペレーターの管理などを行うスーパーバイザーの仕事も変わる可能性があります。たとえばNTT Comが提供している「コンタクトセンターKPI管理ソリューション」には、 AIによる感情分析や音声マイニングによってオペレーターの感情や顧客の満足度を可視化する機能が提供されています。こうした領域は従来スーパーバイザーの仕事でしたが、AIによって効率的に支援されるため、スーパーバイザーは他の業務で価値を生み出すことができるようになるかもしれません。

このように状況が大きく変化したとき、オペレーターやスーパーバイザーのワークスタイルや必要なスキルが変わることは十分に考えられます。このような変化に対応することを考えたとき、リスキリングの取り組みは極めて重要な意味を持つことになります。

たとえばAIによって余剰が生じた人的リソースを活用し、リスキリングを行って既存の人材に新たなスキルを身に付けてもらい、プロフィットセンター化に向けた取り組みを推進するといった形です。企業にとっては、将来的な人材のキャリア開発を見据えた戦略が求められるでしょう。

DXへの対応が求められる情報システム部門のリスキリング

DXへの取り組みを積極的に進めるためにも、リスキリングの取り組みは重要です。その際、特に重要となるのは情報システム部門でしょう。

これまでの情報システム部門は、財務・会計管理や製造管理、受発注管理など、業務の記録や管理を目的としたシステムの開発や運用が重要な仕事の1つとなっていました。しかし、これらのシステムはSaaS化が進みやすい領域であり、実際に基幹系システムをSaaSで構築する事例も増加しています。

一方、企業内で新たに増加しているのは、外部にサービスを提供する、あるいは顧客とのコミュニケーションを支援するなど、新たなプロフィットを生み出したり、顧客との結びつきを強化したりするためのシステムです。今後DXが進展すれば、こうしたシステムの重要性はさらに高まり、情報システム部門に求められる役割も大きく変化します。

情報システム部門として、このような変化に追従するためには、そこで働く従業員のリスキリングが欠かせません。具体的にはAIやIoT、ビッグデータといった最新技術に関する知識やスキルの習得、アジャイルやDevOpsに代表される新たな開発・運用に関する方法論への理解、多種多様なクラウドサービスを利用してシステムを構築する技術などが挙げられるでしょう。

とはいえ、新たなシステムが必要になったとしても業務の記録や管理のためのシステムが不要になるわけではありません。また、重要性が増し続けているセキュリティ対策の強化なども継続して進めることが求められています。情報システム部門としてDXに取り組むうえでは、こうした既存業務のアウトソースや外部サービスの活用も視野に入れるべきです。

たとえばNTT Comでは「トータルマネージドソリューション」を提供しています。これを活用すれば、新たなITインフラとレガシーシステムの運用最適化や情報セキュリティ強化、社内ヘルプデスク業務などをワンストップでアウトソースすることができます。

このようなソリューションを活用して情報システム部門におけるDXへの対応を強化しつつ、さらにリスキリングも進めていくべきではないでしょうか。

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