社会保険料の種類とは?加入条件や負担割合について解説

社会保険料の種類とは?加入条件や負担割合について解説

公開日:2023/2/8

健康保険や厚生年金などを社会保険と言います。この、社会保険にかかる保険料が社会保険料です。

いくつもの種類があるため、社会保険料の計算を給与計算ソフトなどに一任している企業の担当者の中には、「毎月の業務としてこなしているけれど、今一つわからない」という方もいるでしょう。

本記事では社会保険料の種類や加入条件、負担割合などについてわかりやすく解説します。

社会保険料は5種類ある

社会保険料とは社会保険に支払う保険料のことです。社会保険適用の会社に勤務する従業員で、条件を満たしている場合は必ず社会保険に加入しなければなりません。

社会保険料は月々の給与から差し引かれ、会社が納付しています。なお、労災保険については会社が全額負担するため、被保険者の負担はありません。

企業の「社会保険料」に含まれる社会保険は次の5つです。
・厚生年金保険
・健康保険
・介護保険
・雇用保険
・労災保険

厚生年金・健康保険・介護保険を「(狭義の)社会保険」、雇用保険・労災保険を「労働保険」と呼ぶこともあります。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

厚生年金保険

日本には公的年金制度として「国民年金」があり、20歳以上60歳未満の全ての人に加入義務があります。厚生年金は国民年金の「2階部分」に当たる年金です。

そのため、厚生年金に加入していると、年金支給時に国民年金に上乗せした料金が支払われます。会社に勤務する人の多くが原則として加入している保険です。

厚生年金で支払われるのは老後に支払われる「老齢年金」だけではありません。けがや病気などで障害が残った際には「障害年金」、被保険者が死亡した際、残された遺族に支給される「遺族年金」があります。

健康保険

業務外の病気やけが、それらが原因による休業、出産・死亡などに備える公的な医療保険制度が健康保険です。勤務先が所属する健康保険団体などの保険者となります。

会社に勤務し一定の条件を満たした人は強制的に加入します。

健康保険に加入していると、病気やけがなどで病院にかかる時に全額支払う必要がありません。年齢により異なりますが69歳までの会社員であれば、原則3割が自己負担です。残りのお金は普段給与から天引きされている健康保険料で賄われています。

健康保険に加入していると、その他にもお金を受け取ることができます。主な例は次のとおりです。
・高額療養費:高額な医療費を支払った場合
・疾病手当金:病気やけがで一定期間以上会社を休む場合
・出産育児一時金:子どもが生まれたとき
・出産手当金:出産で会社を休むとき

介護保険

健康保険の被保険者が40歳になると、介護保険に加入することとなります。介護保険加入者が、一定の条件を満たした介護が必要と診断された場合に、介護保険サービスが利用できる保険です。

雇用保険

雇用保険は、雇用に関する支援を行う制度です。失業や休業をした場合などに、ここから給付が行われます。

雇用保険の給付には次のものがあります。
・求職者給付:定年退職・倒産・自己都合などで離職をした人に支払われるお金。失業手当とも言う。支払われる期間は年齢や保険加入期間、離職理由などによって異なる。
・就職促進給付:離職後、再就職した際に給付される。
・教育訓練給付:一定の条件を満たした教育訓練を修了すると、受講料などの一部が支給される。
・雇用継続給付:労働者が働き続けられるよう支援する制度。「高年齢雇用継続基本給付金」「育児休業給付金」「介護休業給付金」がある。

労災保険

業務上あるいは通勤途中の出来事に起因して、ケガ・病気・障害・死亡などが起きた場合に保険給付を行います。

労働者を1人でも雇用する会社には加入が義務付けられている保険です。なお、社会保険料のうち、労災保険については、保険料全額を事業主が負担します。

・労災の補償内容のうち、主なものは次のとおりです。
・療養補償給付:ケガや病気が治癒するまでの療養費用の給付など
・障害補償給付:障害が残った場合に給付される。一時金と年金がある
・休業補償給付:ケガや病気で労働できない場合(休業4日目から)
・遺族補償給付:遺族補償年金・遺族特別年金・遺族特別支給金・遺族補償一時金など。(遺族の年齢などにより異なる)
・葬祭料:死亡した人の葬祭を行う人に対して支給
・傷病補償年金:療養開始後1年6か月経過しても治らない場合などに支給
・介護補償給付:条件を満たした場合に支給

そのほかの給付として二次健康診断等給付などもあります。

社会保険の加入条件は決まっている

社会保険の加入条件は、労働時間や給与形態、年齢、事業所の人員などにより異なります。また、社会保険の種類によっても異なるため、それぞれについて見ていきましょう。

厚生年金保険・健康保険

法人事業所及び常時5人以上の従業員を抱える個人事業所は厚生年金保険及び健康保険に加入しなければなりません。

被保険者の加入条件は次のとおりです。
・常時雇用されている
・70歳未満

アルバイトやパートである場合の加入条件を見ていきましょう。
週20時間以上働き、1ヶ月の所定内賃金が88,000円以上
従業員数が100人を超える会社に勤務(2022年10月から)
学生ではない
予定される雇用期間が2か月超

条件をすべて満たしている場合、年収が130万円未満でも厚生年金保険に加入しなければなりません。

また、2024年10月からは企業規模が「従業員が50人を超える」会社に適用範囲が広がる点を把握しておきましょう。

派遣社員の場合でも条件を満たせば、健康保険・厚生年金保険に加入しなければなりません。なお、社会保険の加入手続きや会社負担分の支払いを行うのは、派遣元である派遣会社となります。

原則として役員にも適用されます。

介護保険

健康保険に加入している40歳~64歳の被保険者が加入対象です。

雇用保険

雇用保険の加入条件は、「一週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日間以上引き続き雇用される見込みがある」場合です。なお、高等学校や大学に在学している場合は適用除外となります。

上記条件に合致している場合、正規雇用・パート・アルバイトなどの区分は関係ありません。また、以前は雇用保険の対象者は65歳未満でしたが、平成29年1月1日以降は65歳以上の方も雇用保険の対象となっています。

なお、労働者性があると認められない役員は適用されません。

労災保険

労働者を一人でも雇う場合、加入が義務付けられている保険です。労働形態は、パート・アルバイトを含めます。また、基本的に1日でも雇っていれば必ず加入しなければならない保険となっています。(※農林水産事業の一部を除く) なお、労働者性があると認められない役員は適用されません。

社会保険料の負担割合

社会保険料は、会社と従業員が折半するものと、会社だけが支払うものとがあります。各保険の負担割合についてみていきましょう。

・厚生年金保険料:会社と労働者が折半
・健康保険料:会社と労働者が折半
・介護保険料:会社と労働者が折半
・雇用保険料:会社と労働者、双方が負担(会社の方が負担割合は大きい)
・労災保険料:全額会社が負担

社会保険料の計算や納付などを行う、バックオフィス業務のDX化についての記事はこちらです。

社会保険料は会計上では法定福利費となる

社会保険料の会社負担分は、会計上、法定福利費で処理します。

従業員から天引きした分を「法定福利費」あるいは「預り金」として計上しましょう。社会保険料の納付期限は翌月末となります。従業員天引き分と会社負担分とをあわせて納付します。

法定福利費を含む、福利厚生費について詳しくはこちらの記事をどうぞ。

給与と賞与では基準額が異なる

厚生年金・健康保険・介護保険の場合、給与と賞与では社会保険料の基準額が異なります。
・給与:標準報酬月額に基づく
・賞与:標準賞与額に基づく

給与の標準報酬月額は4月~6月に支払った報酬の月額を元に決定します。

賞与の場合の計算方法を見ていきましょう。
・厚生年金保険料=標準賞与額 × 厚生年金保険料率
・健康保険料=標準賞与額×健康保険料率
・介護保険料=標準賞与額×介護保険料率
・雇用保険料=賞与支給額×雇用保険料率

給与の場合の計算方法を見ていきましょう。
・厚生年金保険料=標準報酬月額 × 厚生年金保険料率
・健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率
・介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率
・雇用保険料=給与支給額×雇用保険料率

雇用保険については「標準報酬額」はありません。賞与時・給与時共に、支給総額に対して雇用保険料率をかけて算出します。

労災保険料は企業が全額負担

社会保険のうち、労災保険だけは会社が全額支払っています。他の社会保険とは異なり給与天引きがないため、従業員の中には自分が労災に加入していることを知らない場合があるため注意が必要です。

業務上、または通勤途中のケガや事故などに対しては、健康保険ではなく労災保険の対象となります。労災保険に加入していると知らない従業員の場合、業務上のケガや事故でも健康保険を使って病院にかかる可能性があるため、労災保険について周知徹底しておきましょう。

社会保険料(狭義)の納付期限は翌月末

狭義の社会保険料(健康保険・厚生年金保険・介護保険)は月末時点で在席している従業員に対して納付義務が生じます。そのため、一般的に翌月の給与から天引きします。

労働保険料の納付期限

雇用保険と労災保険が労働保険です。

労働保険料の保険期間は4月1日~翌年3月31日です。この期間の保険料を、年に1回(6月1日~7月10日の間)に概算で申告・納付を行います。翌年度、賃金実績に基づいて差額を精算します。

なお、概算保険料が40万円を超える場合は、年3回の分納が可能です。分納のスケジュールは次のとおりです。
・7月10日
・10月31日
・1月31日

必要に応じて分納を検討してみましょう。

会計処理についての詳しい記事はこちらです。

まとめ

厚生年金保険・健康保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つを社会保険といいます。

それぞれに、加入条件は異なります。特に、健康保険・介護保険・厚生年金保険については2024年10月からは「従業員が50人を超える」企業に加入義務が拡大される点には留意しましょう。

社会保険料を仕訳する場合は「法定福利費」として処理します。納付期限は「社会保険(狭義)」と「労働保険」で異なるため注意してください。

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