アミューズメント産業のような労働集約型の産業にとっては労働力の確保が大きな課題となっています。本ページでは、AI技術を活用したロボットによる労働力の確保と施設の付加価値を向上させた事例をご紹介します。
お客さまが抱えていた課題とは?
経営課題解決に、ロボット活用の可能性を探る
神奈川県相模原市にあるアミューズメント施設、さがみ湖リゾート プレジャーフォレスト(以下、プレジャーフォレスト)。運営する相模湖リゾート株式会社 代表取締役社長 道本晃一様は「労働人口が減少していくなか、アミューズメント産業のような労働集約型の産業にとっては労働力の確保が大きな課題となっています」と話します。また、魅力ある場所であり続けるために、付加価値をどう高めていくのかも大きな課題です。
プレジャーフォレストでは、神奈川県の「さがみロボット産業特区」に認定されたことをきっかけに、ロボットを活用して経営課題を解決する取組みをはじめました。「私たちのアトラクションは、アスレチックや迷路などの体験型の施設が多く、人間が操作しなくては安全が保てない、というものは多くありません。人と対話できるロボットを置くことで、人員削減と魅力の創出が同時にできるのではないかと考えたのです」と道本様。
ドコモでは、研究開発部門と法人営業部門が横断的に連携し、お客さまの課題を解決する取組み「トップガン」を推進しています。プレジャーフォレストの課題に対して、トップガンとして「ドコモAIエージェントAPI ®」を活用することを検討しました。

課題解決へのアプローチ:AIを活用したオリジナルのコミュニケーションエージェント
「ドコモAIエージェントAPI ®」は、AI技術を活用し、自然な会話のなかでユーザーの目的にあった情報を提供する対話型エンジンを、あらゆるデバイスに組み込むことができるサービスです。「それぞれのお客さま向けにオリジナルの“エージェント”を作れることが、最大の特色です」と話すのは、ドコモソリューションサービス部の門畑。エージェントのキャラクターを形作る“声”は、子どもから老人まで、数十種類の声色から選ぶことができます。また、さまざまなデバイスと連携でき、どのような見た目・形のものにもこの基盤を導入できます。人型のロボットにも、既存のキャラクターにも、車や建物にも、あらゆるものに組み込むことができ、「世界で唯一」のエージェントを生み出すことができるのです。
今回プレジャーフォレストでは、周辺の豊かな自然にマッチしたミミズク型のコミュニケーションロボット、「ZUKKU(ズック)」と連携。ロボットは精密機械なので稼働環境への配慮が必要ですが、「ZUKKU」は小さく、透明のプラスチックケースに入れることで風雨をしのげます。どんなデバイスとも連携できる「ドコモAIエージェントAPI ®」ならではの解決法で、「屋外で働けるコミュニケーションロボット」を実現しました。

実証実験:複数の技術を組み合わせ自然な対話を演出
トップガンプロジェクトの提案を受け、プレジャーフォレストでは2018年10月から実証実験を開始しました。迷路とクイズを組み合わせた子ども向けのアトラクション「パディントン博士のサイエンスメイズ」の入り口に設置された「ZUKKU」が、基本的なルール説明をします。ルール以外の質問、たとえばトイレの場所などを聞かれた時にも対応します。「スタッフが実際に説明している内容をベースに、シナリオを作っています」と話すのは、ドコモの上原です。
シナリオに沿った対話だけでなく、外部から情報を取得し、たとえば園内の天気や、閉園までの時間を伝えるなどの機能も組み込んでいます。顔認証の機能も備え、お客さまが目の前に来ると、「ZUKKU」の方から「このアトラクションに来たことはある?」などと話しかけます。こうした技術を組み合わせることによって、来場者により自然な対話を楽しんでもらえるように工夫しています。「現在このアトラクションは、スタッフ2人で運営していますが、最終的に1人で対応できるようになってほしい」と、道本様は実証実験への期待を語ります。

ロボットによる労働力確保と付加価値増大を、
技術で支える
「今後はロボットによる労働力確保、付加価値増大の流れをさらに加速させていきたいと考えています」と道本様。すでに「草刈りロボット」や「窓拭きロボット」など園内美化や清掃業務のオペレーションの一部をロボットに任せることに取り組んでいますが、園内を循環するバスの自動運転などにも広げていきたい考えです。「将来的には、複数のロボットを1人のスタッフが管理する体制を構築したいと思っています」。顔認証などでお客さまの顔を覚え、あるアトラクションを訪れたお客さまに、「別のアトラクションで遊んでいたよね」などと声がけすることで、お客さまの体験価値をさらに向上することもできれば、と期待を寄せます。
ドコモとしては、この取組みをモデルケースとして、今後「ドコモAIエージェントAPI ®」をアミューズメント施設、金融、医療・福祉、飲食など、それぞれの業界ごとに持っている課題に特化した「ソリューションテンプレート」として成長させていきます。
サービス業などでは、ロボットをはじめとするエージェントへのニーズが、今後ますます高まっていくことでしょう。プレジャーフォレストとドコモは、AI技術の活用によってその可能性を広げる第一歩をともに踏み出しました。
※「ドコモAIエージェントAPI」は、株式会社NTTドコモの登録商標です。

(取材日:2018年10月19日)