小売業界において、メーカーは小売店舗のリアルな棚割情報を取得することに多大な人件費を投じており、大きな課題を抱えています。このページでは、ドコモのAI技術と2種類の認識エンジンを活用することで課題の解決に至った事例をご紹介します。
お客さまが抱えていた課題とは?
大手メーカーでは、小売店に対して新しい棚割を提案するために、現状の棚割と売上の把握、そして分析を行っています。
しかし、各店舗における現状の棚割情報を収集するためには大きな工数が発生してしまい、大手メーカーでは膨大な人件費をかけています。大人数のラウンダーが1日に複数の店舗をめぐり、ハンディスキャナーを1つずつ商品にかざすことで、日常的に商品の陳列状況の把握を行うという膨大な稼働もかかります。
また、自社製品の店頭シェアや、新商品の陳列状況を把握したくても正確なデータがない場合もあり、普段の店舗ラウンド業務で売場の写真は撮影していても、それらの上手く活用できていない状況でした。
課題解決へのアプローチ:2種類の認識エンジンと商品画像データベースの活用
これらの課題に対して、ドコモはサイバーリンクス社と協力して解決の糸口を探りました。そして、ドコモ社のAI技術とサイバーリンクス社の商品画像データベースを組み合わせることで「棚SCAN ® -AI」が誕生しました。
「棚SCAN ® -AI」は、スマートフォンやタブレット端末で撮影した売場の棚割画像から商品情報や位置情報を判別し店頭陳列(棚割)のデータ化を可能にするため、従来のメモや打ち込みといった作業をなくし、棚割データの入手に関する業務を効率的に改善します。
店頭分析や棚割システムへの連携も可能なため、スピーディ―な棚割の分析や提案に活用することが可能です。
また、「棚SCAN ® -AI」を支える技術と環境は、大きく3つで構成されています。
▼物体検出エンジン
Deep Learning(深層学習/機械学習)の技術を用い、写真の中の「どこに商品が並んでいるか」を自動的に判別します。
▼特定物体認識エンジン
画像内の特徴点を抽出し、商品画像データベースと照合。「どの商品」が最も類似しているかを自動的に選定します。
▼商品画像データベース
Mdb(Multimedia Data Base)センターで、商品の基本情報の登録や撮影を実施。正面だけでなく、側面や背面、斜めなど多面角度からの撮影により、さまざまな陳列形態に対応し特定物体認識の精度を支えています。
これらの技術によって構成された「棚SCAN ® -AI」は、これまで多大な労力を必要としていた棚割情報の取得に関する業務コストを改善します。
課題の解決によって得られた効果とは?
今回の課題解決アプローチでは、「棚SCAN ® -AI」を導入することで棚割状況をスマートフォンやタブレット端末で写真撮影をするだけで、データ化・専用棚割システムへの連携が行えるため、棚割状況のデータ化にかかっていた時間の短縮だけでなく、人手不足解消にもつながりました。
店頭のリアルな陳列にも対応できるため、商品同士の重なり、不定形商品の崩れ、陳列角度など、実際の店頭には自動認識の精度を阻害する要因が多く存在します。「棚SCAN ® -AI」は、さまざまな陳列パターンをAIエンジンに学習させ、多面角度での商品画像データベースと照合させることで、高い認識精度を実現させます。
また、「棚SCAN ® -AI」は画像認識システムのみを販売するのではなく、商品画像データベースの構築・管理も含めたサービスを提供します。ユーザーの企業様が、一から商品画像マスターを独自に準備するといった必要はありません。
年間数万件の登録や撮影を行っているMdbセンターのノウハウをもとに、一般企業では対応できない高品質な多面角度の撮影を代行することで、安心してサービスを利用できる環境を提供します。
※「棚SCAN」は、株式会社サイバーリンクスの登録商標です。