2020年度より必修となるプログラミング教育を、どのように授業に取り入れていくかという課題を抱えている教育現場。本ページでは、さまざまなセンサーと連携することで多様な教科や単元にプログラミング教育を取り入れることを可能にする「センサープログラミング」の課題解決事例をご紹介します。
お客さまが抱えていた課題とは?
プログラミング教育の導入が、教育現場の大きな課題に
2020年に小学校で必修となる「プログラミング教育」。すでに人々の生活の中に浸透し、また産業や経済の基盤となっているICTについて、子どもの頃から学び親しむことは重要です。しかしプログラミング教育を取り入れる教育現場には、課題がありました。必修化はされたものの、どの学年で教えるのか、どの教科のどの単元に取り入れるのかといった具体的な指針はなく、それぞれの学校の裁量に任されることになっています。現場の先生は必ずしもプログラミングやコンピューターに詳しいわけではなく、「どのように教えればよいのか」、「自分たちで教えることができるのか」と、教育現場からは不安の声が上がっていました。
ドコモでは研究開発部門と法人営業部門が組織横断的に混成チームを構成し、社会や企業の課題を解決する「トップガン」の取組みを推進しています。同プロジェクトでは、早速このプログラミング教育必修化の課題を解決するべく、サービス開発をはじめました。

課題解決へのアプローチ:センサーとの連携で多様な教科にプログラミング学習を
ドコモでは以前から、「IoT(モノのインターネット/身の回りのさまざまなものをインターネットに接続することで、新たな価値を創造すること)」の拡大・発展を目的としたプロジェクト「Project Linking」に参画し、さまざまな研究・開発を行っていました。「Project Linking」で培った、各種センサーとICTの連携技術・ノウハウを活用し、プログラミング学習にセンサーを連携させることで、さまざまな教科・単元の中でセンサーを活用し、プログラミングを学びながら、同時にその教科・単元の理解を深めることができるのではないかという発想に至りました。
プログラミングのプラットフォームには、「Scratch(スクラッチ)」を採用しました。MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボが開発したプログラミング言語学習環境で単純な命令のブロックをタブレットの画面上で組み合わせることで、プログラミング言語を知らない子どもたちでも直感的にプログラムを作ることができます。わかりやすく、また無料で導入できるため、すでに多くの小学校のプログラミング体験授業などで活用されています。先生にもなじみのある環境を利用することで、現場への導入ハードルを下げました。
こうして、ドコモが蓄積してきたセンサーとの連携ノウハウと、「Scratch」を活用した、直感的で教育現場でも導入しやすいプログラミング学習環境を組み合わせ、さまざまな授業で活用できる可能性を持ったプログラミング学習環境「センサープログラミング」が出来上がったのです。
※「Scratch」は MITメディア・ラボのライフロング・キンダーガーテン・グループによって開発されました。詳しくは http://scratch.mit.eduをご参照ください。

2018年から2019年にかけて、相模原市の3つの小学校を対象に、「センサープログラミング」の実証授業が行われました。
たとえば、4年生の理科の授業では「空気の暖まり方」の授業などで活用されました。ストーブをつけると、どのように部屋全体の空気が暖まっていくのか、子どもたちに事前に仮説を立てて予想させます。そのうえで教室に温度センサーを取り付け、部屋の温度変化をリアルタイムで測定します。同時にセンサーから温度データを取得し、時系列でグラフにするプログラムを作成、子どもたちは自分たちが立てた仮説を、自身のつくったプログラムで検証できます。
実証授業を行った教師の1人である相模原市立九沢小学校の木原智裕先生は「プログラミングの知識だけでなく、その教科に対する理解が深まったと思います。なによりも子どもたちの楽しそうな顔を見て、やってよかったと思いました」と話します。
行政の立場から今回の実証実授業に携わった相模原市教育員会の渡邊茂一様は「実証実験は子どもたちにとって、学校のなかだけでなく、社会のなかでプログラミングやICTが活かされていること、またプログラミングやICTを活用することで自分の身の回りの環境や暮らしをよくすることができることに気づく機会となりました。新しい学習指導要領では、主体性・創造性のある学びが重視されています。センサーと連携したことで、プログラミングだけではなく、プログラミング的思考で課題を解決する発想を学ぶことができたのではないでしょうか」と評価します。

「プログラミング的思考」人材の教育へ、さらに広げる
ドコモでは、今回の実証授業を契機に、センサープログラミングの教育現場での活用について、さらなる展開を目指します。今後、全国のほかの小学校でも実証授業を行い、授業での活用ノウハウを積み重ねていきます。新学習指導要領で例示されており、すでに実績のある理科や算数はもちろん、家庭科や社会などほかの教科にプログラミング学習を取り入れることにも取組みます。「小学校では、プログラミングの基本的な考え方を体験することが大切です。その体験が、中学、高校での発展的なプログラミング的思考力の醸成へとつながれば、と考えています」と相模原市教育委員会の渡邊様が話すように、今後ますます必要になるIT人材育成への貢献が期待されます。
プログラミング的な思考法、発想法は、今後の教育にとって大切なものになるでしょう。今後もドコモは、「センサープログラミング」をはじめとするさまざまなソリューションで、教育現場のプログラミング教育への取組み支援をしていきたいと考えています。


(取材日:2019年5月14日)