REPORT

2021.08.26

東芝の最高デジタル責任者島田太郎氏が語る、日本企業が世界を席巻するチャンス

C4BASE STUDIO LIVE Season2 #02 アフターインタビュー


C4BASEでは、2021年7月14日に『共創成功の鍵はスケールフリーネットワーク』と題して、オンラインによる講演&クロストークを開催。講演で株式会社東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者の島田太郎氏は、“日本企業の”デジタルトランスフォーメーション(DX)の課題を指摘し、スケールフリーネットワークの可能性を明示しました。講演終了後、その島田氏にC4BASEの運営を担当するNTTコミュニケーションズの中澤良一と穐利理沙が、講演内容のより本質的な部分をお聞きしました。

自社データをオープンにして、他社データと“掛け算”する

中澤:ご著書の『スケールフリーネットワーク ものづくり日本だからできるDX』では、GAFAに席巻された今後の日本企業の可能性を提示されました。

島田:私がスケールフリーネットワークの本を書いたのは、日本の経営者の方に発想の転換をしてほしかったからです。

例えば、企業のデータはどれだけ膨大なデータであっても、偏りのある非対称性のものです。それをオープンにして掛け算にすることで、トランスフォームが起きてきます。自社のデータだけでは世の中を変えることはできません。それが分かるとDXも一気に進みます。こういう考え方はIT系のベンチャー企業からすると普通のことですが、それを日本企業が理解して実践することで、眠っている力を開放することができるはずです。

レポートイメージ 株式会社東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者
東芝デジタルソリューションズ株式会社 取締役社長
島田 太郎氏

穐利:DXについては多くの方が指摘していますが、島田さんは東芝での実践者だからこその視点があるように思います。

島田:日本企業を否定することで終わってしまっては、未来は見えてきません。「こうすれば勝てそうでしょ」と分かってもらいたかったのです。

思いも寄らない価値が生まれる“ビオトープ”

中澤:ただ、現状GAFAのようなITの世界的大企業と日本企業の間は大きく水をあけられてしまっています。だからこそDXに注目が集まっているわけですが、日本企業の強みはどのようなところにあって、どのように進めていけばよいと考えますか。

レポートイメージ C4BASE事務局 中澤

島田:日本企業は切り捨てることが苦手です。今まではそれが弱点だと言われていました。しかし、切り捨てなかったことでとんでもない技術が蓄積されてきています。私はそれを多様な可能性が生息している“ビオトープ”だと捉えています。

これまで多くの欧米企業で選択と集中が進められてきました。例えば、ある企業は世界市場で1位から5位に入れないもの以外はやらないと決めています。確かにポートフォリオを狭めれば収益性は高まります。しかし、一巡すると痩せてきます。変化に弱くなってしまうんですね。

中澤:大企業がベンチャー企業のケイパビリティを求めて手を組むという事例も増えている背景には、そうした行き過ぎに対する反動もあるのでしょうね。

島田:大事なのは、選択と集中よりもダイバーシティです。日本企業に残っているビオトープにダイバーシティとインクルージョンの視点が加わることで、思いも寄らないものが生まれてきます。日本の経営者には、そこに気づいてもらいたいのです。

コンテキストを意識すると“みんなのDX”になる

穐利:島田さんのお話には論理性があって思わず納得してしまいます。そういう理論構築をどう学んできたのでしょうか。

レポートイメージ C4BASE事務局 穐利

島田:日頃当たり前のことだと感じていたことでも、裏付けがあると納得するものです。納得すると腹落ちします。そのためには現実を抽象化することが大事なんです。スケールフリーネットワークという言葉を持ち出したのも、今起きている現象を抽象化してまずフレームを理解してもらうためです。

穐利:ユヴァル・ノア・ハラリ氏のベストセラー『サピエンス全史』にある“認知革命”ですね。人間は虚構を信じることができたことで、大きなスケールで動くことができて、それが他の動物たちとの差異化につながったという。今のSNSの爆発的な広がりもそう考えると理解できます。

島田:理論の重要性を実感したのは前職のシーメンス時代です。理論がないと、上司の私が命じてもやってくれません。ところが一旦腹落ちすると高速で動き出します。私は理論を構築する力を磨くことで、プロジェクトを成功させることができました。

自分でやるのが早道と考えるのではなく、丁寧に理屈をつけて繰り返し説明して、やってもらうようにしていくと、物事は大きく進んでいきます。

中澤:理論の構築は、DXはもとよりプロジェクトを成功させるために欠かせないのですね。C4BASEでDXのカウンセリングセッションをした時には「何をしたらよいのか分からない」という質問が多く寄せられました。具体的にやることを示すために島田さんが大切にしているポイントはどのようなことでしょうか。

島田:コンテキスト、つまり文脈を大切にしています。例えば従量課金が重要と言われてもピンときません。でも自分の仕事に当てはめて考えれば理解できます。それが弊社内で進めている “みんなのDX”という取り組みです。例えば、電車をつくって売ってきた人に、電車をサービスとして売ることを考えてもらうわけです。結局自分の仕事に置き換えないと腹落ちしないんですね。

レポートイメージ

100回くらいの社内プレゼンを経て、トップダウンとボトムアップでDXを加速

中澤:多くの日本企業ではDXが進んでいないと言われていますが、東芝ではいかがでしょうか。伝統的な企業であればあるほど、DXに抵抗する力が働くのではないかと思いますが。

島田:まず上から押さえました。当社にとってのDXをしっかり定義して、役員や事業部長に対して100回くらいプレゼンテーションして理解してもらい、コミュニティを作ってボトムアップを図る活動を展開しました。

中澤:社内ピッチ大会では多くのアイデアが出てきたそうですね。今進められている「ifLink」もその産物だと。アイデアが生まれて形になる正の循環が作り出せれば、次々と新しい事業が生まれてきそうですね。

島田:東芝にはたくさんの従業員がいますが、自分の事業以外の人との接点は少ないのです。人と人とを結びつけるだけでスパークが生まれます。サポート役としての私はそれをすることが楽しくて仕方がないのです。

腹落ちした人たちがDXに取り組んでくれて、実践して成果を出す。それを見た人が自分もやろうと勝手に動き出す。そういう状況になっています。それぞれ時間軸の違いはありますが、今までにない勢いで進捗しています。

レポートイメージ

穐利:東芝はDXを通じて事業のプラットフォーム化も目指していますね。

島田:プラットフォーム化は利益を上げやすいですが、辿り着くのは大変です。自分の事業がモジュールの一つになってしまうということが障害となることもあります。一足飛びにはいきませんが、時間はかかってもやるべきことははっきりしているので、前に向く力も生まれてきます。

人間の脳の構造はスケールフリーネットワーク的です。それをデジタルで実現したのがSNSですが、それはあくまでも仮想空間。一方、リアル空間をつないでデジタルツイン型で新しいスケールフリーネットワークを作ろうというのが、東芝が推進するCPS(サイバー・フィジカル・システムズ)のプラットフォームです。サイバー空間のデータは、地球上のデータの約2割に過ぎず、後の8割はリアル(フィジカル)にあります。それを活用することが、これからのビジネスを勝ち抜く鍵なのです。

中澤:まさに、日本企業が世界を席巻するチャンスになりますね。

今回のアフターインタビューでは、C4BASEの会員がDXやビジネスを推進していく上でのヒントをいただくとともに、とても参考になるお話をうかがうことができました。本日はありがとうございました。

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