REPORT

2021.07.06

会社に“真のDX”を実装するための、経営層の動かし方とは?

SAPジャパン村田聡一郎氏登壇、C4BASE STUDIO LIVE Season2#01 アフターインタビュー


「IT化とDXの違いとは」「“デジタルは手段である”は、なぜ誤りなのか」「日本の強い現場力が、なぜDXの足かせになるのか?」などDXにまつわる疑問を、C4BASEオンラインイベント『今さら聞けないDX』(2021年6月3日開催)で一閃してクリアにしてくれたSAPジャパンの村田聡一郎氏。
後日、イベント参加者限定で開催したのが、DXの悩みに村田氏がお答えするオンラインカウンセリングセッションです。その終了直後、セッションでも司会を努めたNTTコミュニケーションズの中澤良一と穐利理沙が、本編に入り切らなかった「ココだけの話」に斬り込みました。「経営層の動かし方」とは?

「一部門だけ」「自社だけ」で、DXは走らない

中澤:自社の領域だけではなく、仕入先や製造元からエンドユーザーのニーズまで「エンド・トゥ・エンド」でビジネスのプロセスを見つめ直す。そのうえで、現在はヒトがやっているプロセスをデジタルに入れ替え、本当に価値の高い顧客体験を生み出せないか考えて、それを実装する——。

イベント本編でもカウンセリングセッションでも、村田さんが多くの事例を挙げつつ、DXを成功させるには「自分の領域、自分のプロセスだけを見ていてはダメだ」とおっしゃっていたのが、印象的でした。

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村田:多くの日本人は、目の前の自分の仕事の磨き上げに注力してしまう傾向があると思います。そのため、それぞれの現場は単体ではとても優秀で、これ以上ないほどのクオリティで仕事を仕上げてくる。しかし、企業や事業全体で見ると、それは仕事の一部でしかない。要は「部分最適」で留まってしまうんです。

ですが、エンドユーザーからすると「自分にどんな価値が届けられるか」が大切で、会社の一部門だけの仕事ぶりや、サプライチェーンの一部だけが磨かれても別段うれしくありません。エンドユーザーに響くためには「全体最適」を目指す必要があるわけです。DXの出番もこの全体最適にあります。

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穐利:セッションでもおっしゃっていた、ドイツの圧縮空気製造機メーカー、ケーザー・コンプレッサーの例がわかりやすいですよね。

村田:従来のコンプレッサー業界では、品質そのものは日本製の方が優れていて、10年間故障しないほどのクオリティです。ただし、日本メーカーのクオリティは、生産現場や工場内での磨き上げやカイゼンでなしえた価値でした。一方、実際にコンプレッサーを使うエンドユーザーの本当のニーズは「10年間故障しないこと」ではない。「圧縮空気がいつでも安定的に供給され続けること」です。

ケーザーはこのリアルなニーズにフォーカスした結果、コンプレッサーを売るだけでなく、「圧縮空気を売る」という新しいビジネスモデルに踏み出す決断をしました。ユーザーにセンサーを搭載したコンプレッサーを基本無償で渡し、そこから供給され続ける圧縮空気に従量課金する、サービス提供型のビジネスモデルに変革させたわけです。そしてコンプレッサーの使用量と稼働状況をセンシングすることで、運用・保守を最適化できるようになりました。

穐利:結果としてエンドユーザーは電気代などのランニングコストが大幅に削減できますし、ケーザーも月々得られる課金によって経営が安定しました。DXのすばらしい成功例ですが、村田さんがおっしゃったように「コンプレッサーのメーカーとしての自社」だけを見ていたらこの着想はできないですよね。

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中澤:興味深いのは、これまで「C4BASE STUDIO LIVE」に登壇していただいた、プロ経営者のハロルド・ジョージ・メイさんや、早稲田大学大学院の入山章栄教授のお話と近い話であることです。お二人の「自分だけでつくらず、他人の力を借りる」「既存業務を深掘りすると同時に、外の多様性に目を向ける」というお話と、村田さんのお話に共通点があると思いました。

村田:現場のカイゼンだけでは、DXはなし得ない。やはりエンド・トゥ・エンドで視座を高くして考え、自分の部署や会社、業界を飛び越えることがDX成功の第一歩でしょうね。

穐利:私自身、自分ごととしても、とても腑に落ちます。一方で、こうしたイベントで刺激を受け、企画書をしたためる方も多いと思いますが、実際に上長に提案してその案を通していくことは難しい場合も多いと思います。
カウンセリングセッションの質疑応答でも、「会社の上層部が実際にはDXを理解しておらず、乗り気ではない。彼らを説得するにはどうすればいいか」という意見が目立ちました。C4BASE会員の多くの方々が抱いているリアルな悩みなのだと思います。

村田:そうですよね。決定権がある人が、本心から「やるぞ!」と言ってくれないと、実現は難しいと私も思います。

ただ、昨今は大企業の多くがイノベーションの必要性を説き続けている。的はずれな投資をしている企業がないわけではありませんが、少なくとも強い“追い風”はまだ吹いていると思うんです。風が吹いているうちに経営層をうまく焚き付けて、仕組み化を図りたいですよね。

潜在的にリソースが豊かな大企業が本気でDXを進めてイノベーションを起こせたら、日本は確実に変わるはず。そのためにミドルマネージャー層が経営層に火をつけないといけません。

中澤:村田さんは、セッションで「火を付けるためには、危機感の醸成から始めるしかない」とおっしゃっていました。そのために、日本企業と海外のライバル企業の売上や時価総額の推移をグラフで重ねて見せ、この10〜20年で開いてしまった格差をビジュアルで見せていますよね。

村田:危機感のない方には何を言っても伝わりません。ただ、あおるだけでもダメ。実はこのとき、必ず実践していることがもう一つあるんです。

まず認める。経営層を動かすためにすべきこと

穐利:どのようなことを実践されているのでしょうか?

村田:大切なのは、これまでの経営を頭ごなしに否定せず、しっかりと称えることです。たとえば時価総額でも名目GDPでも、他国との悲惨な差を見せたうえで、「日本だけ成長していない。これはみなさんがサボったからですか? 違いますよね。他国のように人とデジタルの両方を走らせてこなかったからです。むしろ、人だけを走らせてここまで持ちこたえているのはすごいことです」といった具合です。

あるいは、タテ軸に「従来の競争軸」、ヨコ軸にデジタルによる「新たな競争軸」を配して、「この十字の右上に顧客の真の欲求がある。そこを目指しましょう」と訴えるのも一つの手。そうすることで、従来の競争軸を捨てるのではないことを示すことができます。いくら本質的にマインドセットを変える必要があるとしても、これまでの努力を否定するようなことを言ってしまえば、プライドを傷つけることになり、動いてもらうことはできません。

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村田:また、日本企業は利益率の目標値が低すぎるので、経営者が「利益率を5%から8%にまであげよう!」などと言うだけでも、大英断になる。でも、その程度ならば、従来の延長線上でビジネスプロセスを磨きあげるカイゼンでなんとかしよう、と考えてしまうのが日本のすごいところであり、悪いところです。

中澤:いっそ「利益率を5%から15%にまであげる!」くらい圧倒的な数字を掲げたほうがいい、と。

村田:そのとおりです。かつて松下幸之助さんが「3%のコストダウンは難しいが、3割ならばすぐにできる」と言っていた話は示唆的です。小さな数字よりも、大胆に大きな数字を出すと、これまでのやり方を脱却し、大胆な策を実践しなければならない。そうすると覚悟が決まります。

「共創」以前に重要なのは、「落ちているカネを拾う」こと

中澤:C4BASE会員の方々からは「DXで解決する課題を見つけ、ユーザーにどんな新たな価値を与えられるか。それを見出す発想力が足りず悩んでいる」とのコメントも多くありました。それに対し、村田さんは「デジタルは二番煎じでいい。先行事例をパクるべき」とおっしゃっていましたね。

村田: 土木建設工事のあらゆるデータをオープンに提供して業界全体の生産性をあげるコマツの「LANGLOG」や、トラック、鉄道、開運、駐車場など港湾業務にかかわる企業の作業情報をオープンプラットフォームでつなぐハンブルグ港湾局、そしてシーメンスのIoTプラットフォーム「Mindsphere」も、DX先行事例の一つです。

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すべて異なる業界の事例ですが、構造的にはまったく一緒。バラバラのデータ発生源が「第1層」としてまずあり、それを新たなデジタル・プラットフォームにすべて吸い上げるのが「第2層」。「第3層」では、集まったビッグデータを目的に沿って解析し、ソリューションとして活用することで、「第4層」のエンドユーザーに新たな価値として提供していきます。

穐利:エンド・トゥ・エンドを意識したうえで、自分たちの事業に4層のフレームを当てはめてみれば、着想のヒントが生まれるかもしれませんね。

そのためにも異業種の事例を多く知り、具体化と抽象化を繰り返す反復練習のようなものが必要になってくると思います。C4BASEではそのためのワークショップも実施していますし、そもそも他業種の方々集まる共創の場なので、自然とよい刺激とケーススタディが得られるのではないかと思います。

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村田:本当にそうですね。C4BASEのような場が必要なことは変わりありませんが、一方で、誤解を恐れず言うと、私は「共創」という言葉をあまり信用してない面もあるんです。

中澤:どういうことでしょう?

村田:「共創」の名のもとに、多くの企業の人材が集まること自体は素晴らしいですが、集まっただけで「やった感」が生まれてしまい、満足して終わってしまう傾向にもある気がします。

穐利:確かにそうですね。その轍を踏まないために気をつけるべきこととして、村田さんが考えていることはありますか?

村田:同じことばかり言って恐縮ですが、やはり「そこにカネが落ちているか」を見極めることだと思います。たとえば冒頭にあげたケーザーの事例では、ビジネスモデルを変えたことで、ユーザーがこれまでコンプレッサーを動かすことに支払っていた電気代を節約できるメリットがあったわけです。「ムダな電気代」というカネが落ちていたからこそ、DXが成功したとも言えるでしょう。

中澤:共創よりも前に「どこにお金が落ちているか」を探す意識づけこそが必要ですね。そのお金を拾うために、どんな共創ができるかを考えることが大切だと。

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村田:そうだと思います。他国と比べてDXが進んでいないということは、多くのチャンス=カネが落ちていることでもあります。海外の企業がDXで成し遂げたことを自分たちにあてはめる(つまり“パクる”)だけで、頭一つ抜け出せる可能性が高い。素手によるカイゼンだけで戦ってきた日本企業が、人とデジタルの両輪を回しはじめたら強いはずです。SAPジャパンとしても、日本企業の多くが正しくDXを進めることをサポートし、逆転劇の演出をしていきたいと考えています。

中澤:C4BASEはその強烈な起点の一つになっていきたいですし、必ず実現させたいですね。これからの日本の真のDX推進に向け、パートナーとしてご一緒していきましょう。

村田:ぜひ、そうしていきましょう!



C4BASEでは、共創を実行する集団・DX Landerが会員の皆さまの抱えるビジネス課題の解決に向けて支援を行なっています。ビジネス創出に向けた新しいビジネスアイディアの発想はもちろん、皆さまの会社の幹部への「危機感」を醸成する活動もお手伝いします。こちらから、お気軽にお問い合わせください。

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