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2020年11月10日(火)UP

C4BASE総合コーディネーターによる連載シリーズ 第2回
C4BASE企画委員 渡辺氏との対談<前編>


C4BASE 総合コーディネーター藤元 健太郎
C4BASE 企画委員 渡辺 徳生 氏(株式会社QUICK イノベーションセンター長)


 大企業の中ではニューノーマル時代に向けてDX(デジタルトランスフォーメーション)や新しい事業モデルを生み出すイノベーションの動きがより加速し,重要な役割となりつつある。こうした中でC4BASEのコミュニティにはDXやイノベーション活動に関わる多数の人々が存在し,悩んでいることも多いと考える。今回は企業におけるイノベーションの共通課題や課題解決のヒントを探るべく,第一線で活躍している方々の生の声をお届けする。第一弾はC4BASEの企画委員もしているQUICK渡辺氏(イノベーションセンター長)にお話を伺った。

C4BASE 企画委員 渡辺氏

     

 

現在の業務を教えてください。

 1971年の創業以来、弊社は日本経済新聞社グループの一員として、日本の証券・金融市場を支える情報インフラとしての役割を担ってきました。公正・中立な立場から、付加価値の高いグローバルなマーケット情報を迅速にお客さまに提供することをミッションとして、時代に先駆けたさまざまなサービスを展開してきました。
 一方、近年ではインターネットやスマートフォンの普及により金融情報サービスのコモディティ化が急速に進んでいます。そのような中、私のイノベーションセンターは、全社イノベーション体制の実現と先端技術の活用を目的に設立されました。
 具体的にはオープンイノベーションや様々な実証実験を行い、将来の売上・利益に結びつけることが私たちのミッションです。またそのプロセスの中で得た様々な知見やノウハウを、社内にフィードバックすることも重要なミッションのひとつです。

全社的なイノベーションを推進するあたり何を意識していますか?

 大切な要素は沢山ありますが、まず企業内においてイノベーションという言葉の定義が重要と考えています。一般的には物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)などを指しますが、最近ではイノベーションの定義を「持続的」と「破壊的」の2つに分けて、ビジネスの新潮流を語るケースも多くなりました。
 一方、企業内においては、経営者や事業責任者は新製品・新事業の創造と言ったり、情シス部門ではクラウドや先端技術の活用を指したり、バックオフィス部門ではRPAやロボティクスなどによる業務改善を指す場合もあるでしょう。
 ここで重要なのは、企業内における『イノベーション』は、立場や組織によって捉え方がかなり違うということです。特に最近では「DX」や「破壊的イノベーション」という言葉が流行ったため、ともすれば、斬新なアイデアの創出やAIやブロックチェーンなどの先端技術を使って何かしよう―という方に意識が向きがちです。
 しかし、それ以外にも社内イノベーターの育成や必要な制度改革、地道な業務改善も企業にとって大切なイノベーション活動のひとつだと考えています。繰り返しになりますが、私は企業内におけるイノベーション活動に偏りや重複がでないよう、最初にイノベーションの定義や共通言語などを社内で作っておくことが大切だと感じています。


QUICKではどのようにイノベーションを定義し、推進していますか?

 色々な方法を取り入れています。わかり易い例ではオーストリアの経済学者シュンペーターの5分類方法も活用しています。

 


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C4BASE事務局オリジナル


 


 いかがですか?これだけ見てもイノベーションは技術革新や事業創造だけではないことが理解できると思います。
 この観点で言うと、弊社は比較的バランスよく取り組めているように思います。下図にある通り既存の事業部門や様々なプロジェクトが既存領域から挑戦しつつ、私のチームのような新しい部門が少し飛び地から攻めるような感じです。
 具体的な成果はこれからですが、DXや働き方改革では既に効果を出しつつあります。私のイノベーションセンターでは、外部と連携するオープンイノベーションの推進,先端技術の調査・研究、そしてイノベーション人材の育成をメインに取り組んでいます。


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QUICK社業務方針資料より引用

 

最近では「両利きの経営」が注目されています。その中で「知の探索」については如何でしょうか?

 イノベーションを推進するにあたり、「知の探索」は非常に大切だと思います個々が「新しいことを知る」・「興味を持つ」・「やってみる」・「失敗し改善する」を繰り返すことで成長し、そこから変革の芽が育まれると思います。これは子供が育つ過程では当り前のことですが、何故かサラリーマンになると売上や利益に貢献する「知の深化」ばかりを優先してしまいがちですよね。
 しかし、最近は「VUCA」という言葉が注目されるように、我々がいる世界は今後の姿を予見できない時代に入りました。そうした中、変化に柔軟に対応するには「知の探索」が益々重要になると思います。

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C4BASE事務局オリジナル

 

御社の「知の探索」について教えて下さい。

 探索と言っても「闇夜に鉄砲」になってはいけないと思います。例えば「ラーメン屋が儲かる」という話を聞いたからといって、金融情報が生業の弊社がそれを始めるのはおかしいですよね。その企業の理念やビジョンを念頭に、自社の 強みや弱み、今後発展する機会や備えるべき脅威などを見据えて、「知の探索」をする必要があると思います。
 弊社では「知の探索」に向け、ビジネス・イノベーション委員会(BI委員会)という仕組みを3年前に立ち上げました。社員からでる様々なアイデアやコンセプトを迅速に形にし、市場調査や実証実験を通してその価値を判断していくための社内プロセスで、社長を委員長とし各部門の中堅・若手社員を中心に構成しています。
 例えば、弊社は今年7月に電力市場向け情報サービス 「QUICK E-Power Polaris」の提供を開始しました。これもBI委員会を通して形になった一例です。近年では電力自由化に伴い、電力事業に参入する事業会社が増えています。その市場(電力スポット市場)では、翌日に発電または販売する電気を前日までに入札し、売買を成立させる必要がありますが、その入札価格は地域別のスポット価格や発電所の稼働状況、天気、燃料価格など、様々な情報をもとに決定されます。これは金融取引のビジネスモデルと似ている部分が多く、弊社が持つ様々なノウハウを応用したケースと言えます。

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QUICK E-Power PolarisのWebページ(リンク付き)

     

 


 この他、海外事例の調査も積極的に行っています。下の写真はエストニアに訪問した際のものですが、現地では様々なスタートアップ企業が独自のビジネスモデルを多く生み出していました。「知の探索」と言う意味では、海外企業の取組みは非常に参考になると思います。

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エストニアにあるFunderbeam社にて

     

 

コロナの影響をどのように受け止めていますか?

 「知を探索」と言う意味では、3月以降、新たな人と出会うスピードは下がったと感じます。
 しかし、TV会議やSNSなどのデジタルチャネルが更に普及することで、「知を探索」は今後益々早くなるのではないでしょうか。あと企業におけるDXの取組みも急拡大するでしょうね。
 例えば営業スタイルの変容は想像しやすいと思います。従来型の名刺交換から始まり、対面による顧客課題の掘り下げ・提案など― 従来型の営業スタイルは大きく変わると思います。
 想像するときりがありませんが、これまでは十年単位で進むと考えられていた変革が、もの凄い勢いで進むのは間違いないでしょう。そしてその波がしらを捉えることができれば、その企業の成長に繋がると思います。


後編に続く(近日公開予定)

2020年11月10日(火)

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