INTERVIEW

2021.09.08

スマートシティは、人間の暮らしをどう変えるのか?

藤元 健太郎(D4DR代表取締役社長)


9月1日、デジタル庁が設立され、日本のデジタル化は大きな変革を遂げようとしています。トヨタが発表しているウーブンシティの構想をはじめ、スマートシティは単に都市をデジタル化することではありません。むしろ、人間のこれまでの暮らしを根底から覆す可能性を秘めています。
そこで、SmartCityのコンサルティングを手掛け、NTTコミュニケーションズが運営する共創コミュニティ「C4BASE」の総合コーディネーターでもあるD4DR株式会社の藤元氏が、スマートシティの真の価値について解説します。

人間中心になる都市

工業化社会は、その象徴とも言える車とともに発展してきた社会でもあります。モータリゼーションは当然のごとく、都市の中心から道路を張り巡らし、自動車中心の都市を生み出してきました。しかも自動車のかなりの台数が自家用車であり、ある調査*1によると世界の主要都市の面積の1/3は駐車場で占められているというデータがあります。

*1:「駐車場からのまちづくり 都心部駐車場の密度の観点から」より

しかし、今始まっているモビリティの様々なテクノロジーでは、MaaS、シェアリングエコノミーや自動運転技術などで、車を個人で所有しなくても必要な時に必要なだけ利用できるようになりつつあります。そうすると道路も今のような幅も必要無くなり、駐車場もいらなくなります。つまり、ようやく都市の主役が車ではなく、人間に戻って来るというわけです。すでにヨーロッパでは、街中に車を通れなくして道路を自転車やパーソナルモビリティ専用にするような動きも出てきています。

スマートシティと言うと、都市をデジタル化するようなイメージを持つかもしれませんが、今から起こる都市の変化はもっと大きいものになります。まさに都市から道路が無くなるぐらいの構造的な大変化が起ころうとしており、それを無数のデジタルテクノロジーで支える、という方が正しいでしょう。トヨタが富士山の麓で創ろうとしているウーブンシティも、そうした新しい時代の都市のあり方を見据えた街作りの実験とも言えます。

人口が減少する日本においては、物流も移動も、無人化の動きは加速せざるを得ません。免許を返納しなければいけない高齢者が安心して暮らすためにも欠かせない技術です。生活のために必要なサービスはテクノロジーが提供し、子供たちが街の中のどこで自由に遊んでいても交通事故、犯罪など親が心配しなくてもよいような人間中心の生活を支える都市。それこそが、これから求められるスマートシティそのものと言えるでしょう。

都市OSによって、コンピューター業界で起きたことが都市でも起こる

スマートシティを日本中や世界中に広めていくためには、これからは「都市OS」という考え方が重要になると考えます。

専用ハードに専用アプリケーションという垂直統合なサービスを投入していても、コストが高く、陳腐化しやすいデメリットがあります。しかし、パソコンのように規格などを標準化していくことで、規格に準拠しているセンサーであればどこのメーカーの製品でも良くなるし、性能が上がった場合に交換をしやすくなります。アプリケーション側はハードを意識しないで作ることができるようになります。結果的に、ハードウェアもアプリケーションもそれらの開発を担うベンチャーも、どんどん参入しやすくなります。

また都市OSが重要なもうひとつの理由は、これからの都市においてデータ活用がとても大事になるからです。

例えば韓国のソウル市では、バスの運行状況や今何人乗車しているかがリアルタイムで把握できます。それによってバスの路線、停留所の場所や時刻表などを常に最適化し、採算を大きく改善しているそうです。さらに深夜バスの路線を決めるために、携帯電話からタクシーを呼んだ場所、タクシーの行き先などのデータを全部分析し、深夜バスの路線を決めています。これらによって、市民ニーズにマッチしたサービス提供が可能になっています。

このように都市の中には、生活を効率化したり、便利にするためのデータがたくさん存在しますが、日本ではまだほとんど活用が進んでいません。コロナ禍でも、人流のシミュレーションはとても大雑把でした。現在デジタルツインという概念で、都市の様々な活動をリアルタイムでシミュレーションしようという動きがでてきていますが、そのためにもデータの収集、蓄積、活用が大事になります。

これまでは様々なサービスやアプリケーションごとにハードを設置し、データを取得し、メンテナンスもしてきたため、運用コストも高くなりがちでした。しかし、これからは例えば防犯カメラデータから取得したデータを匿名処理し、人流や交通流などのデータとして様々なサービスが共通で活用できればメリットも大きくなり、投資も効率化されます。

かつてパソコンがマイクロソフトとインテル中心のOSで事実上標準化されたことで、大量のハードとソフトが市場に投入され巨大な業界になったように、都市OSの考え方が普及すると、巨大な新しいビジネスチャンスの市場が誕生することは間違いないでしょう。

都市OSのレイヤー構造

レイヤー 項目 考え方
ライフスタイル・価値観レイヤー シェアリングエコノミー、他拠点生活、マルチジョブ、多元的コミュニティ、新パブリックなど 新しいスタイルへの挑戦
サービスレイヤー 防災、防犯、獣害、ゴミ収集、教育、ヘルスケア、フード、エンターテイメントなど 民間でできるサービスへの参入を容易に
データレイヤー 環境データ、トランザクション、情報銀行など 蓄積とオープンデータ化
通信・センサーレイヤー LPWA、5G、カメラ、各種環境センサーなど アプリケーション別ではなく共有資産として運用
インフラレイヤー 道路、水道、モビリティ、エネルギー、建築物など 効率的なメンテナンスと分散運用を実現

都市間競争時代の“選ばれる都市”になるために

コロナ禍は、我々がこれまで当たり前だと思ってきたことを一気に変えてしまいました。中でも、ホワイトカラーの仕事がテレワークで可能であることを知らしめたことは大きかったでしょう。

もともと工業化社会は、都市に労働者を集約させ、労働集約型の産業を創出し、大量生産大量消費のもとに、都市を経済成長の拠点としていました。しかし、その代償として都市は化石燃料を中心としたエネルギーを膨大に消費し、フードロスなどの様々な無駄を生み出し、通勤地獄も生み出しました。そうした反省から、現在の都市はがむしゃらに働く場所ではなく、人々が幸せに生きる場所であり、SDGsが叫ばれ社会課題を解決しなければいけない場所になろうとしています。

スマートシティはそのための手段であり、決して都市をデジタル化することが目的ではありません。しかし、テクノロジーの進歩が我々のライフスタイルを確実に、劇的に変えようとしていることも事実です。どこにいても仕事ができるようになったということは、これまでのように雇用を求めて都市に来るのではなく、都市が人々に選択される時代になります。逆に言えば、選択したくなる魅力に溢れた街で無ければ、わざわざその街に住んで働く必要はありません。

サスティナビリティに対応し、安全、利便性、ホスピタリティをテクノジーの力によって実現し、住人が幸福である街こそが、世界中で起こる都市間競争に勝つためにも必要になってきます。スマートシティとはそのための重要な実現方策と言えるでしょう。

◆C4BASE事務局よりご案内

デジタル化によって、変わっていく世界の街並み。
日本においても、これからスマートシティがより進んでいくことでしょう。
次回は、スマートシティ構想を発表している注目の企業にお話を聞いてみました。
近日公開。お楽しみに。

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