Interview

2021.02.05

すべての人が、その人らしく働ける社会を目指して

<C4BASE総合コーディネーターと考える明日のイノベーション vol.3 後編>

C4BASE 総合コーディネーター 藤元 健太郎
C4BASE 企画委員
奥野 洋子 氏(都築電気株式会社)
西村 宏美 氏(株式会社日立製作所)


前編に引き続き、C4BASEの企画委員でもある都築電気の奥野洋子さんと日立製作所の西村宏美さんをお招きし、お二人の共通テーマである「健康」に関する取り組みについてお話を伺った。
後編では、プロジェクトを進める上で苦労しているポイントや、ダイバーシティをどう捉えているかについて深掘りした。

ご自身の取り組みで、苦労されているポイントを教えてください。

奥野氏 「目的・KPIが異なる人たちと物事を進めること」です。私の所属する経営企画部門や、研究開発部門にとって、西村さんのような新規事業企画部門や営業部門は社内における連携先ですが、プロジェクトを進めるにあたってのKPIは全く違います。
 例えば健康経営では「どれだけの人が健康になったか」や、「ワークパフォーマンスがいかに上がったか」がKPIになりますが、ビジネス推進の場合は当然、収益をKPIとする必要がありますよね。プロジェクト推進において、ダイバーシティ・多様性は可能性であると同時にハードルになります。これらを乗り越え、新規事業ですぐに成果を出すことは大変な労力を要することだと思います。
 でも、社会的意義やインパクトがあることであれば、社内に限らず様々な方が評価してくださったり、協力してくださったりと、ポジティブな後押しがあると思います。もちろん、収益の追求はとても大切ですし、所属や考え方が異なる様々なメンバーとの連携は、お互いのWin-Winを統合して推進する、大事なプロセスだと思っています。

C4BASE企画委員 奥野氏 C4BASE 企画委員 奥野氏

西村氏 私は健康の専門家でもなく、健康経営の専門家でもないので、社内、社外を問わず、専門性を補ってもらえるコネクションを作ることが最初の壁でした。
次の課題は、人事総務や健康経営の部署から、女性をターゲットとする取り組みに承認をもらうことです。拒否する人は一人もいなくて、むしろやらないといけないと思ってくれているのですが、ダイバーシティの観点からも一つの性別に特化した活動にすることには考慮しなければいけない点が多々あります。受け手から、どちらかの性別に寄っているのはだめだという声が、この時代だからこそ多くて。最終的には私達のプロジェクトも、全ジェンダーそれぞれに特化したツールを用意したいと考えているのですが、どうしても最初は一つずつしか進めないじゃないですか。

奥野氏 女性特有の健康課題に絞るメソッド、男性特有の課題など、固有の健康課題にフォーカスする様々なラインナップがあって、自分に合ったものを自由に選択できる形で提供できたら最高ですよね。窓口は広く、でも一人ひとりに深く刺さるような施策が大事だと思います。実現が難しい(笑)。

西村氏 健康経営がなかなか社員に広まらないのも、窓口が広すぎて、個人的な課題や必要性に落とし込めるほどのインパクトを与えられていないところかなと思います。インパクトを与えるためには個人に刺さる深い課題を扱う必要がありますが、ダイバーシティの観点では窓口を最初から広げておく必要がある、難しいところですね。
 そういった壁に対しては、健康は女性の社員の離職率や生産性向上と結び付くという観点からも提案することで受け入れてもらえる可能性をあげようとしています。

C4BASE企画委員 西村氏 C4BASE 企画委員 西村氏

奥野氏 西村さんの取り組みはキャリアパスの課題からアプローチされていて素晴らしいと思います。人材開発の分野では、すでに階層別研修など特定の層に向けた取組みは浸透しているかと思いますので、ライフとキャリアをコラボレーションする取組みは、人材開発と健康経営の双方を前進させる効果があると思います。

西村氏 そして、もう一つ私達が考えているのは、社会課題であるということに焦点を当てて、「女性個人が困っていることではあるが、広く見れば少子化や女性活躍の問題とイコールである」という意識を持ってもらえるようにするアプローチです。

藤元 その場合、IRになりますね。

西村氏 日立製作所のビジネスは公的なものが多いので、「少子化が進むと自分たちが困る。だから、自分たちが解決することが非常に大切だ」というアプローチで、経営層に訴えていきたいと思っています。

奥野氏 当社の取り組み「SMART LIFE CHALLENGE」においても、女性特有の健康課題の解決を組み込んだメソッド開発を心がけました。ですが発信の際、女性にのみ焦点を当てると、男性が最初から無関心になってしまいます。 西村さんのおっしゃる通り、女性特有の課題解決策の提示は絶対に必要です。それと同時に、同じ深さの個別施策が多様にあり、それを選べる状況をつくることが重要で、チャレンジだなと思います。

藤元 プロデューサー的能力が必要ですよね。

奥野氏 特定の分野にアプローチするため、取り巻く環境を俯瞰する能力ですよね。西村さんのように、新しい挑戦をする方を増やして、そういう方々がより元気に活躍できる仕組みを作ることが、経営企画に求められていると思います。
 挑戦するモチベーションが下がる要因の一つに、その挑戦を上司など周りから評価されないことが挙げられます。新しいことが評価されるのに時間がかかるのは当たり前なので、社外で自分のことを「いいね!最高!」と評価してくれる人を増やすことが大事です。社会課題解決型ソリューションは、社会に「いいね!」と言ってくれる人が多いので、発信してフィードバックをもらうコミュニケーションを社内外で実践できる環境整備が重要だと思っています。

C4BASE企画委員 西村氏

藤元 そこはC4BASEをぜひ活用してほしいですね。

西村氏 奥野さんに質問したいのですが、健康の取り組みの課題の一つに、健康を意識してほしいという思いがなかなか広まらないことがありますよね。

奥野氏 「健康」を前面に出した取り組みは、受け取る人が限定されると思います。だって、健康って、土台というかほとんどの方にとって当たり前なので。人生の幸せ、幸福を追求するというのが、人間に共通の欲求ではないでしょうか。

藤元 ウェルビーイングですよね。

西村氏 私も「健康を意識してください」ではなく「自分のライフプランを実行するために必要だ」というところを訴えています。そこを感じてくれるかどうかが非常に難しいんですけど。

奥野氏 正直、「楽しくなさそう」なのかもしれませんね。押し付けられている感じがあるのかも。自分のライフプランやキャリアを考える時間より、ポテトチップスを食べながら動画を見てゆっくりする時間の方が楽しいじゃないですか。結果的に得られる幸せやメリットは、だらだらするよりこっちの方が大きいですよ!という訴求ポイントを、一緒に見つけられたら嬉しいですね。

西村氏 その自分ごと化が非常に難しいですよね。一度でも健康のことで自分が困った経験がある人は健康意識が高くなるんですけど。

奥野氏 そうなんですよね。健康の難しいところです。かといって、ウェルビーイングです、笑顔の総量を測りましょう、などと安直に量的換算して自分ごと化しようとすると、多分しんどくなる(笑)
 人間と健康の関係性って、付かず離れず、インターネットで新しい動画を見るくらいの距離感でいれたらいいのかなと思います。デジタル社会で、どう構築していくかは新しい課題だと思います。

C4BASE企画委員 西村氏

お二人がダイバーシティをどのように捉えているか、教えてください。

奥野氏 私にとって、ダイバーシティはデリケートでとても難しい問題です。働き方や人生は十人十色です。会社として多様な価値観を支えるために、より良い環境整備を取り組もうとするなら、生物学上の違いやライフプランの立て方の違いを踏まえた施策は必要になってくるように思います。
 しかし、いわゆる「女性活躍推進」施策として振り切った企画をすると「男性活躍は?」などという意見も出てくるだろうし…なかなか実現が難しいです。
 社員の人生や価値観のバリエーションを広く受け入れられる会社って、素敵だと思います。その実現に向けて、私の立ち位置から何ができるか考えていきたいですね。

西村氏 それをジェンダー、性別、国籍などを問わない社会にしていきましょう、というのがダイバーシティの考えだと思いますが、今は過渡期だからか、性別を意識しすぎている感じがするんです。例えば、全国籍の全ジェンダーの管理職を増やそう、ということならわかりますが、なぜか女性だけ増やしましょう、という雰囲気が強く感じられて違和感を感じます。
 最終目標は、属性を意識しなくていい社会を実現することなのに、私の取り組みのような、ある属性の人たちのための施策に制約があるのはなぜなのか、とても違和感があります。

奥野氏 何のために「ダイバーシティ」を追いかけているのか、よくわからないですよね。一歩踏み出して、企業のダイバーシティを高めることが、企業の存続目的や企業価値向上とどのように紐付いているか、その企業なりのストーリーで示すことが求められていると思います。
 今後は、ステークホルダーと対話する中で、「当社ではダイバーシティをこのように定義しています」と形にできたら良いなと。文章でも、絵や写真、音楽でも、何でもいいので、企業らしい定義を形にすることで、その会社にとっての共通言語になるし、他社との比較もしやすい。そういう議論をできる会社は素晴らしいし、そうありたいと思っています。

最後に、お二人の今後のビジョンについてお話を伺いたいと思います。組織の中の自分としてやりたいことでも、プライベートの一人の自分としてやりたいことでも、どちらでもかまいませんので、教えてください。

西村氏 私は、営業の仕事は続けつつ、営業の視点から社会課題を解決したり新しいビジネスを生み出したりすることを続けたいと思っています。どうしてもお金や予算の視点から入ってしまい、それは本当に社会課題を解決しているのか、と疑問に思うようなソリューションが世の中に溢れていますが、そうならないように気をつけながら今取り組んでいる健康のプロジェクトも進めたいと考えています。
 そして、健康のプロジェクトでは、ITを活用してツールを提供しますが、それが幸福度につながることを大切にしたいです。ITが広まって、効率化は進んだと思うんです。でも、それで幸せになったかはイエスと言いきれないところがあるので、そこでイエスと言える世界を作りたいと思います。

C4BASE企画委員 西村氏

奥野氏 私の大きな目標は、孫の代までに、社会保障制度がなくなっても存続できる社会システムを作ることです。その第一歩は、従業員の「心身の健康」へ投資する企業を増やし、過労死や自殺はもちろん、在職中の死亡・罹患率を減らすサイクルをつくることだと思っています。健康投資と同時に、働き方・生き方のバリエーションを増やし、新しい文化をつくることも大事です。
 私の地元は熊本県の天草市、ふるさとが大好きです。コロナ禍でとても帰省しづらくなりましたが、時間経過とともに、感染予防と経済活動の両立に向けた「適切な手段と情報」が徐々に広まり、新しい生活様式として受け入れられてきているのを感じています。今後は、場所に縛られない働き方・生き方が主流になるのではないでしょうか。私は家族と自分を育ててくれた土地を大事にしたいし、東京も大好きです。それぞれで軽やかに働き、大切な人や場所と共に生きていく。そんな文化を発信し、世界の幸せの総量を増やせたら、最高ですね!

C4BASEt対談企画

藤元後記 若手女性の立場で現在の大企業を見ると,まだまだ変革の途中で色々もがいている風景がたくさん見えているようだ。新規事業を生み出すための試行錯誤の挑戦と社内に健康経営を根付かせたり,ダイバーシティに対応していく改革の挑戦はかなり相似なのかも知れないし,社会課題の解決の前に社内課題を解決できなければ新規事業を生み出すことも難しいと言えるのかも知れない。
 また「女性活躍」の文脈でついつい捉えがちなダイバーシティについても本来は社員の多様な幸福を会社としてどのように実現していくかの文脈でもっと考え行くべきなのだろうとあらためて考えさせられた。会社の共通のビジョンを実現するための求心力と実現のための多様な方法論。まさにこの両立こそがこれからの企業に求められる社会的使命なのだと思う。

C4BASE企画委員 西村氏

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