「ムダな会議」の損失は15億円!リーダーが知っておきたい会話術とは

「ムダな会議」の損失は15億円!リーダーが知っておきたい会話術とは

公開日:2022/05/27

会社では、多くの会議が行われます。 そして多くの人が「ムダな会議」の存在を認識しています。 業務上の優先順位が高いとは思えない、出席しても結局何の結論も出ない— そんなムダ会議によって、大企業で年間15億円の損失が生じているとする試算もあります。 とはいえ、会議の必要性を全否定することもできないのは、務め人の本音でしょう。 では、ムダにするのではなく、生産性のある会議を進めて行くにはどうすれば良いのか。 ちょっとした会話術をご紹介します。

「ムダ会議」損失は年間15億円?

米デューク大学で教鞭を執り、マーケティング戦略コンサルタントでもあるドリー・クラーク氏は、会議についてこのように表現しています。

参加を求められた時点ですでに、生産的でないことが予測できる会議は少なくない。「チーム進捗報告会議」は、各メンバーが1週間をいかに過ごしたかを聞くだけで2時間が過ぎる。「プランニング会議」では、他で済ませておくべきどうでもいい詳細について、話し合わなければならない。「ブレインストーミング・セッション」では、出しゃばりが思いつきを叫んでいる。

<出所:「時間をムダにするだけの会議を避ける5つの方法」ハーバード・ビジネス・レビュー 2018年1月>

共感する人は多いのではないでしょうか。 そんなムダな会議について、2018年にパーソル総合研究所がこのような統計を公表しています。 まず、社内会議や打ち合わせに費やす時間を階層ごとに示したのが下の図1です。

図1 社内会議や打ち合わせに費やす時間 (出所:パーソル総合研究所・中原淳(2017-8)「長時間労働に関する実態調査(第一回・第二回共通)」)

部長級になると1週間で8.6時間、つまり1週間のうちまる1日を会議や打ち合わせに割いていることになります。係長級でも1週間に6時間という量です。 しかしこれらの会議については「ムダ」だと思われているものが少なくありません(図2)。

なお、会議をムダだと思っている人の割合はメンバー層で23.3%、上司層で27.5%だということです*1。 これらを人件費に換算してみましょう。それが下の図3です。

図3 ムダだと感じる会議で生じる人件費 (出所:パーソル総合研究所・中原淳(2017-8)「長時間労働に関する実態調査(第一回・第二回共通)」)

つまり、1万人規模の企業では年間に15億円もかけて「ムダだと思われる会議」を実施していることになるのです。1500人規模の企業でもその額は年間2億円にのぼっています。

会議をムダにしないためのリーダーの話法

誰かだけがしゃべっている、他は当事者意識なく座っているだけ。 発言者に質問をしても、的を射た回答を得られない。 ムダ会議の特徴です。

そして、会議に価値を持たせることができるかどうかでは、リーダーの話法が試されます。

話を「聞く」方法で会議の充実性が変わる

米アデルフィ大学学長のクリスティーン・M・リアダン氏は、会議や会話でリーダーが取るべき行動として以下のようなものを挙げています*2。

1)認識する リーダーはあらゆる聴覚だけでなく表情、ボディランゲージなどあらゆる感覚で情報を受け取る。相手が言ったことだけでなく言わなかったことにも気を払う。 具体的にはこのようなフレーズです。

  • 「気持ちを伝えてくれてありがとう」
  • 「考えをもう少し話してもらえますか」
  • 「みんながどう思っているかを理解しておくことが(自分には)重要だ」
  • 「乗り気のようだけれど、それはなぜなのか、もう少し聞かせてください」

2)処理する 会話のポイントを正しく追いかけ、相手の発言を広い文脈で言い換える。

  • 「この会議で出た重要なポイントを整理しておくと…」
  • 「合意できたのはこの点で、合意できなかったのはこの点です」
  • 「次の会議までに……の情報を集めてください」
  • 「次はこうしようと思いますが、意見を聞かせてください」

3)応答する

しっかり話を聞いたということを相手に保証することが必要です。 言葉に出して感謝する、明快な質問をする、言い換えることで確認する、というステップです。

これらのステップが不明瞭なために、言葉だけが飛び交い、何も決まらない。そんなシチュエーションに筆者も度々遭遇しました。相手の言葉のあとに何かしらリアクションをしなければ、発言は空に浮いてしまうだけです。

また、自分の言葉で相手に確認して初めて「理解」につながります。言葉面だけを追いかけても、のちになって内容までをリアルに思い出すことが難しくなります。

このステップをきちんとこなすことで初めて参加者にとっても、ちゃんと話を聞いてもらえたという肯定感が得られ、参加者の信頼も得られます。結果が雑談であっても参加者ひとりひとりにメリットを与えることができるのです。

「話を聞けない」人の特徴

また、ハーバード・ビジネス・レビューには、「あなたが人の話を聞けない理由」という興味深いコラムが掲載されています*3。

あるコンサルタント会社のプリンシパルとして成功を収めている女性が、会議で質問に答えないことがあり、他のメンバーの意見を正しく理解できていないことがある、と指摘を受けました。

彼女が自分のどこに問題があるのか掘り下げていった結果、次の必要な要素を見いだしたということです。

・自分の中から聞こえてくる批判の声を無視する=自分のパフォーマンスを気にするあまり、議論に集中できていなかった。とくにプレゼンテーションの場で、うまく発表できているかという不安のせいで、参加者からの質問の根底を把握できていなかった。

・リーダーとしての自分の役割を広くとらえる=自分の役割を「問題解決の提供者」という狭い枠にはめてしまっていた。役割を「信頼される助言者」へとアップデートする必要があった。

・恐れや期待に囚われない=今目の前に置かれているテーマではなく、次に何を話そうか考えていたり、次に相手が何を言うのか予測したりしている自分に気づいた。

・考えを変えることを恐れず、変えたらそのことをオープンに伝える=自信ありげに見せようと苦心している自分、とにかく自分の意見を印象づけようと焦っていることに彼女は気づいた。自分の考えを通すためではなく、最善の考えを発見するために、みんなの意見を聞くことがコツである。

中途半端は全てをムダにする

上記のように、自分のことと周囲のことを同時に考えるのが難しいというマネジメント層は多いのかもしれません。 しかし、それでは自分自身も「ムダ時間」に巻き込まれてしまいます。

ところで筆者が高校生の頃、つまらない授業のときは後ろの席でこっそり別の科目の勉強をする「内職」が流行っていました。つまらない、2次試験で必要のない教科の話を聞くのは時間のムダ、と感じていたからです。

しかし、実はこうした「内職」は効率的なものではありません。 バレないだろうか。ということを考えながらやっているため、授業の内容も内職もどちらも中途半端になってしまっていた記憶があります。時間の割に効果は上がりませんでした。

それであれば、授業の方をきっちり聞いていたほうが効率的であったかもしれないと今思います。

「目の前にあるテーマ」「目の前にいる人」に集中しない会議は、全てをムダに変えてしまう温床なのかもしれません。 今ある議題やメンバーに集中して向き合い、最大限を引き出す。それが真に必要な会議だと考えます。

資料一覧

  • *1 パーソル総合研究所・中原淳(2017-8)「長時間労働に関する実態調査(第一回・第二回共通)」
  • *2「ハーバード・ビジネス・レビュー」2022年2月号 p88-89
  • *3「ハーバード・ビジネス・レビュー」2020年10月号 p100-102

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この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に関連メディアに寄稿。

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