中部電力株式会社
IoTプラットフォームの構築で
電力ネットワークの保全業務を効率化

中部電力株式会社
電力ネットワークカンパニー
電子通信部 計画グループ
課長
中村 聡氏
「パートナーとして一緒にDXを進められるのではないかと考えたことも、NTT Comを選定した大きな理由の1つです」

中部電力株式会社
電力ネットワークカンパニー
電子通信部 計画グループ
主任
三山 恭弘氏
「わかりやすいユーザーインターフェイスを持つThings Cloud®であれば、IoTに詳しくない人でも運用できるのではないかと感じました」

NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部
西日本営業本部 東海支店 営業推進グループ
担当課長
山澤 雄氏
「このプロジェクトで得られた知見やノウハウを活用して、DXによるお客様や社会の持続的成長に向けて貢献していきたいと思います。

NTTコミュニケーションズ株式会社
プラットフォームサービス本部
データプラットフォームサービス
サービスクリエーション部門
鈴木 彩氏
「IoTを活用して具体的に実現したいことのイメージが中部電力様にあったからこそ、最終的なゴールに向けて短期間で構築できました」
課題
電力網の効率運用に向けてIoTの活用を模索
中部地域におけるエネルギー供給を長年に渡り支え続けてきた中部電力株式会社(以下、中部電力)。同社の新たな成長分野として掲げられているのが「コミュニティサポートインフラ」である。これは「デジタル化」「お客さま起点」「低炭素化」をキーワードとして、電力・情報通信ネットワークと最新デジタル技術を活用し、顧客、地域、コミュニティが抱える課題を解決するための既存のエネルギーインフラの発展形だ。このように「デジタル化」のために、積極的な新技術の活用に取り組む中部電力では、2017年ころからIoTを活用するための検討が進められていた。その背景について、中部電力の中村聡氏と三山恭弘氏は次のように話す。
「独自のIoTシステムを社内に配布して現場の意見を収集」
中村:お客さまに安定的に電気をお送りするため、電力設備、電力ネットワークは当社の通信ネットワークを通じ、常に監視、制御されており、電力供給に支障を与える可能性がある障害や故障は、すぐに検知できるようになっています。
しかし、障害を未然に防ぐための確認や点検は、現地で人が行っているものがまだ少なくありません。これらの点検データの取得をデジタル化し、一元的に管理・分析することができれば、電力設備や電力ネットワークのさらなる効率的な運用につながるとの期待から、IoTへの取り組みをスタートしました。
三山:取り組み始めた当初は、安価なセンサーを組み合わせたシステムを手作りし、試行・検証を希望する部署に配りました。まずIoTを使ってもらう。そして、どういったことができ、どのような効果が得られるのかを考えてもらい、成果をフィードバックしてもらうという活動をしました。
当初は「これは何だ?」といった反応が大半でしたが、活動を続けるうちに「こういうものを活用した改革はどんどん進めていくべきだ」という意見を持つ社員が徐々に増えてきました。「ここに活用したらこんなことができた」とか「こう使うことで業務が効率化するんじゃないか」といった声が聞かれるようになり、IoTの活用に向けた取り組みが本格的に始まりました。

「IoT活用のための取り組みの中でプラットフォームの必要性を認識」
中村:IoTの活用について模索する中で、得られたデータを一元管理するための共通プラットフォームが必要だと考えました。IoTの観点で言えば、現状は各メーカーが提供する個別のサービスを利用して監視するような形が一般的です。しかし我々はコストや効率の観点から目的に応じて最適なIoTデバイスを選定し、なおかつ包括的なプラットフォームで運用したいと考えていました。そういったことができるプラットフォームを探し始めたところ、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)から提案を受けたのが「Things Cloud®」でした。
山澤:IoTプラットフォームである「Things Cloud®」の導入で、IoT機器を一元管理し、そこから得られるデータをグラフなどで見える化することが可能になります。NTT Comには、Things Cloud®を活用し、設備保全主業務の高度化や効率化を達成してきた実績があったため、中部電力様の生産性向上にも寄与できるのではないかと提案させていただきました。また中部電力様が考えている、データの有効活用による新サービスの創出という取り組みは、DX Enablerを目指すNTT Comとして、ぜひサポートしたい案件でもありました。
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対策
幅広いIoTデバイスのサポートやセキュリティなど
厳しい要件を満たしたNTT Comの「Things Cloud®」
中部電力では、NTT Comを含めた数社のIoTプラットフォームを比較・検討し、最終的にThings Cloud®の採用を決めた。その理由として、コスト面での優位性に加え、中部電力が提示した要件を満たせることが大きかったという。
「DXを推進するパートナーとしてNTT Comを指名」
中村:当社の課題について十分に理解してもらい、将来像を含めた具体的な提案をいただきました。さらに信頼性の高い当社専用の設備構築や、我々のニーズに合わせた機能追加などに柔軟に対応してもらえることが期待できたため、ご協力いただくこととなりました。
IoTは現状、数多くのメーカーからさまざまなデバイスが提供されています。しかし、通信方式や伝送する情報の形が統一されていません。そのため製品選定では、多様性のあるIoTデバイスに対応できる柔軟性を備えているかどうかを重視しました。さらにライフラインである電力インフラの運用に用いることから、セキュリティも重視しました。
鈴木:従来型のThings Cloud®は複数のユーザーがリソースを共有する、マルチテナント型のサービスです。しかし、中部電力様のセキュリティ要件や、IoT機器のさまざまな通信方式に対応するというニーズにはマルチテナント型では応えることができません。
そこで中部電力様には、専有型のThings Cloud®をご提案することにしました。専有型であれば閉域網を用いて接続することで高いセキュリティを実現できるほか、多種多様なデバイスを接続するために必要な機能を提供することが可能になります。このような柔軟な対応力も評価いただいたと思っています。
図:「Things Cloud®」を利用した中部電力の設備保全業務の高速化・効率化の取り組みイメージ

三山:専有型による通信方式などの課題解決のほか、Things Cloud®がよかったのは、ユーザーインターフェイスがしっかり作り込まれている点です。運用フェーズでは、構築したプラットフォームを使うのは技術に詳しい人間とは限りません。そのとき、わかりやすいユーザーインターフェイスを持つThings Cloud®であれば、技術者ではない人でもスムーズに運用ができるのではないかと考えました。
また、Things Cloud®を使ってどのようなビジネスを生み出すのかなど、踏み込んだ提案をしていただいたのも評価した点です。現在はデータの可視化を中心に、取り組みを進めているところですが、将来的には電力設備の保全に留まらない領域にも踏み込み、パートナーとして一緒にDXを進められるのではないかと考えています。
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効果
多様なデバイスに対応可能なIoTプラットフォームを構築
今後も業務効率化に向けた施策を検討中
中部電力はパートナーとしてNTT Comを選定し、Things Cloud®を利用したプラットフォームの構築に向けて動き出した。ただし中部電力が分社化する2020年4月1日までにカットオーバーする必要があり、プロジェクトはスピード重視で進められることになった。その中で苦労した点として、三山氏が挙げたのは要件の整理である。
「複雑な要件にもかかわらず短期間でプロジェクトを完遂」
三山:当社の電力設備は山間部にも多くあるためLPWA(Low Power Wide Area:消費電力を抑えて遠距離通信をする通信方式)など、多種多量なIoTデバイスの導入が想定されます。そのためさまざまなメーカーのデバイスや伝送方式に対応できる運用管理基盤にしなければなりませんでした。ただし実現すべき要件が極めて多く、その整理や実現方法の検討に苦労していました。
山澤:プロジェクトは複雑に絡み合った要件を整理するところから始めました。時間的な余裕がなかったため、あらかじめ要件をしっかり固めるのではなく、中部電力様と密にコミュニケーションを図りつつ、その時々で要件を確認し、必要であれば変更できるようにアジャイルでプロジェクトを進めました。今回のプロジェクトの肝は、幅広いデバイスおよび伝送方式に対応すること。これを満たすためにさまざまなオプションや外部サービスとの連携機能を実装しています。
中村:要件が多く、時間的な制約があるにもかかわらず、非常にしっかりしたものを作っていただくことができたと思います。十分なリソースとこれまで培ってきたノウハウがある、NTT Comだからできたのでしょう。
「電力設備以外にもThings Cloud®は活用できる」
中村:現状は実証実験を含め、いくつかの項目について社内各部門と一緒に取り組みを進めています。さらに今後は監視対象の設備や項目を順次拡大していく予定です。また電力設備以外にも、会議室など共用スペースの利用状況の可視化といった、業務全体の効率化に向けたIoTおよびThings Cloud®の活用についても検討を進めています。
三山:Things Cloud®を導入したことで、多種多様なIoTデバイスを運用していく目処を付けることができました。しかし、これから実運用が始まると、想定していなかった課題が生じることも十分に考えられます。そのときは、またご協力をいただけると非常に心強いですね。
山澤:プロジェクトの規模や従来とは異なる作業の進め方など、我々としても大きなチャレンジでした。それをやり遂げてサービス提供までこぎ着けたことは、NTT Comとしての実績につながる大きな成果だと思っています。このプロジェクトで得られた知見やノウハウをThings Cloud®にフィードバックし、よりよいサービスにしていきたいと思います。

「コミュニティサポートインフラのプラットフォームとしても期待」
三山:中部電力ではコミュニティサポートインフラの創造を目指しています。さらにモノの先にいる人までつなぐ、「IoH」(Internet of Human:ヒトとインターネットの融合)の実現に向けて取り組んでいきたいという思いもあります。その際、今回構築したプラットフォームは大きな役割を果たしてくれるのではないでしょうか。
中村:DXの技術は今後ますます発展していくでしょう。また当社としても、今回の取り組みがきっかけとなり、活用したいデータがますます増えていくと考えられます。その中でNTT Comには柔軟かつ先進的な提案や対応をお願いしたいと思いますし、あらゆるモノやコトをデジタル化し、業務の効率化と住みやすい社会の実現に向け、共創していければと考えています。

※中部電力(株)さまは2020年4月に中部電力(株)、中部電力パワーグリッド(株)、中部電力ミライズ(株)の3社に分社されております。掲載内容は2020年3月現在のものです。
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中部電力株式会社
事業概要
1951年設立以来、中部地域におけるエネルギー供給を長年に渡り支え続けてきた。2020年4月に送配電事業を担う中部電力パワーグリッド株式会社と、電気販売事業やガス事業を展開する中部電力ミライズ株式会社、そして持株会社(中部電力)に分社化。コーポレートスローガンは「むすぶ。ひらく。」であり、このメッセージには、人と人、人と社会をつなぎ、結び合わせることでこの先もコミュニティを支え、そして人の可能性と未来をひらいていきたいという思いが込められている。
(掲載内容は2020年3月現在のものです)
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