BP総研・桔梗原が解説! 働き方改革先進事例 CASE6スマホ内線化でコミュニケーション改革 
スキマ時間活用で残業削減を実現

※本ケーススタディは、2019年1月に日経 xTECH Activeに掲載された記事の転載です。

社内外を意識しないコミュニケーションが生産性向上のカギ

【日経BP総研・桔梗原 富夫が見る、この事例のポイント】
働き方改革を実現する上で不可欠なのが社員の生産性を高めるための仕組み。その1つがコミュニケーション基盤です。ただし、業種や業態、あるいは社風によってもコミュニケーションの方法は違います。エネサーブは、外出が多い営業担当者や技術者などの移動時間や作業の待ち時間を有効活用し、業務効率化と残業時間の短縮を図るためにコミュニケーション環境を見直したようです。

大和ハウスグループのなかで電気設備メンテナンス事業の先駆者であるエネサーブ。2003年には電力小売事業にも参入し、多様な地域・業種の顧客に対し、電力会社の送電線を介した電力販売が現在の主力事業だ。

今、同社が特に力を入れているのが省エネに関するコンサルティングサービスだ。

以前はCSRの一環として環境問題に取り組む企業が多かったが、最近は、より重要な経営課題として省エネに取り組む企業が増えている。同社は、電気設備の常時監視のため24時間遠隔監視システムを独自開発しており、そこから得られる膨大なデータを活用すれば、きめ細かな電力利用の合理化提案を行うことが可能。今後は、より経営に直結するコンサルティングサービスを事業の柱にしようと考えているのである。

そんな同社が働き方改革への取り組みを本格化したのは2016年。勤務時間体系の見直しや制度改革などを行い、柔軟に仕事ができる環境を整備してきた。しかし、これだけでは十分な成果を出すことは難しかったという。

というのも、同社の営業担当者や技術者は客先に出向くことが多く、勤務時間の6~7割は社外で活動している。そうした社外にいる社員にかかってきた電話への対応や内勤社員とのコミュニケーションにムダが多く発生していた、それが働き方を変え、生産性を向上する上で大きな障壁となっていのだ。

作業はあくまでも顧客の業務に合わせて行うため、待ち時間などのスキマ時間が発生することも多かった。そこで、外出中の社員のスキマ時間の有効活用することで、これまで帰社してから行っていた業務を現場で対応することができるのではないかそのためにいかに社外と社内をシームレスに連携させるか。考えた末に、同社が出した解決策がスマートフォンの内線化による音声コミュニケーション環境の見直しだ。実際の改革事例を見ていく。

何が社外の社員への連絡を躊躇させていたのか

エネサーブ株式会社
常務取締役
管理本部長 兼 財務部長
西澤 稔 氏

「働き方改革は、残業時間を削減し、コストを削減できる施策と捉えがちですが、それ以上にムダな時間を有効な時間に変えて、生産性向上を図ることが重要です。社員のポテンシャルを引き出すために、重要な経営テーマとして認識しています」と同社の西澤 稔氏は話す。

特に課題を感じていたのがコミュニケーションだ。

全国に16の事業所がある同社の社内コミュニケーションは電話を利用することが多い。以前は各拠点にPBXを設置し、拠点間はIP電話サービスで疑似内線を実現。その上で社外に出る社員には携帯電話を貸与し、彼らへの連絡は外線通話で行っていたという。

冒頭で述べた通り、基本的に顧客や取引先からの電話は会社の代表番号で受けて、社外の社員に取り次ぐ。「また、社員間の連絡についても、社外にいる社員に電話をかけると通話コストがかかるため、まず内線にかけ、不在だということがわかったら携帯電話に電話をかけるというのが一般的でした。営業担当者や技術者はほとんど外出しているのがわかっていても、基本的には、この段取りを踏んでおり、余計な手間と時間がかかっていたのです」と同社の野阪 努氏は言う。

エネサーブ株式会社
総務部
副部長
野阪 努 氏

さらに携帯にまでかけるのは緊急案件という先入観があり、気軽に電話をかけるには心理的なハードルがあったという。そのため、外出先から社員が帰社するのを待つ社員も多く、帰社してから対応する業務量が多くなり残業時間が増える要因にもなっていた。

この問題を解決するためにエネサーブは、音声コミュニケーション環境の見直しに着手。全拠点オンプレミスのPBXを撤去してクラウド上のPBX機能と内線機能を利用できるNTTコミュニケーションズのクラウド型PBX「Arcstar Smart PBX」にリプレースした。同時に営業担当者を中心に社員にスマートフォンを配布。これを内線端末として利用して、社員が社内外どこにいても、そのことを意識せずにコミュニケーションを行える環境を実現したのである。

既存PBXの一斉クラウド化に踏み切る

実はコスト削減の観点からPBXを撤去しようという動きは以前からあった。

「クラウドサービスであるArcstar Smart PBXなら、これまでオンプレミスのPBXの運用管理にかかっていたコストなども削減できる上、社員に貸与したスマートフォンを内線電話として使うことで、コミュニケーションを改善して、外出中の社員のスキマ時間の有効活用にもつながる。コスト削減と働き方改革の2つを両立できるのは大きな魅力でした」と野阪氏はArcstar Smart PBXの導入を決めた理由を語る。

全拠点の既存のPBXの中には、保守契約を残しているものもあったが、管理をシンプルにするために同社は一斉にリプレースすることを決めた。

エネサーブ株式会社
総合システム室
室長
西澤 徹 氏

同時に社内の固定電話(ビジネスホン)については必要最小限にして、IP-Phoneやスマートフォンへと入れ替え。「Arcstar Smart PBXは、スマートフォンにアプリをインストールすることで内線端末として利用できる。営業職を中心に配布するスマートフォンも簡単に内線端末としても活用できます」と同社の西澤 徹氏は説明する。

現在、会社の代表電話にかかってきた電話も、社内からそのまま内線で保留転送が可能だ。これにより営業担当者や技術者は、顧客や取引先などからの電話を直接受け、素早く対処するようになった。

また、社員同士の連絡も相手がどこにいるのかを気にすることなく、通話コストのかからない内線電話で互いに通話を行っている。「いったん内線にかけてから外線でかけ直す」「外出している社員の帰りを待つ」といった二度手間はなくなった。「携帯は緊急時だけという心理面ハードルもなくなり、相手がどこにいるのかを気にせずに、気軽に電話をかけています」と西澤 稔氏は話す。

図●現在のエネサーブの電話システムの構成

図●現在のエネサーブの電話システムの構成

クラウド型PBX(Arcstar Smart PBX)によって、
PBX設備を持たずにスマートフォンを活用した内線化が実現されている

残業時間は1割近く減少、通信コストも25%削減

導入後の成果について野阪氏は「残業時間はこの1年間で1割近く減少しています」と説明する。

もちろんこれは多岐にわたる取り組みの成果だが、外出中の社員がスキマ時間を使って、問い合わせ対応などを行うことが増え、帰社後に残業することが減ったこと、社内での電話対応や伝言メモ作成作業が軽減したことなど、スマートフォンの内線化により社内コミュニケーションが円滑になったことも重要な要因の1つになっている。

またArcstar Smart PBXの導入によって、外線で行っていた外出中の社員の携帯電話への通話料が不要になったことで毎月25%ものコストが削減されている。

働き方改革に向けたコミュニケーション変革というと、Web会議や社内SNS、チャットの導入など、新しい形のコミュニケーションツールに注目が集まることが少なくない。しかし、社内外の連絡手段として、現在でも電話は重要な役割を果たしている。エネサーブのように内線やモバイルなど音声コミュニケーション環境を効率化・合理化することの意義は大きいといえるだろう。まずは自社のコミュニケーションの足下に着目し、それをどう変革するかを考えること。今こそこのような姿勢が重要なのではないだろうか。

コミュニケーション環境の変化を把握し、パートナーと共に最適な取り組みを

働き方改革の過程で、必ず考えなければいけないことの1つが「コミュニケーション環境の見直し」である。昨今、「働き方改革の実現」を謳った、多種多様なコミュニケーションツールが登場しているが、1つのツールだけで働き方改革を実現するのは難しい。様々なコミュニケーション手段を、自社の業務にフィットしたかたちで用意できているかどうかが、働き方改革の成否に大きな影響をもたらす。

コミュニケーション環境を見直す際には、自社における、以下の「3つの変化」を把握することが重要となる。

1つ目は、「働く場所の変化」。働き方改革の目玉として、在宅勤務やテレワークの制度を導入した企業も多いだろう。「いつでも・どこでも」場所を選ばずに働けることは重要なポイントとなっている。

2つ目が「人の変化」だ。スマートフォンの普及に伴い“スマホネイティブ”な世代が登場し、PC中心のコミュニケーション環境の整備だけでは、すべての社員に満足してもらえる環境が実現しにくくなっている。また、世代により、コミュニケーションに対する考え方がまったく異なるということを、働き方改革を推進する側が理解しておく必要があるだろう。

そして3つ目が「ツールの多様化」。従来の電話やメールなどといった特定のツールだけを使うのではなく、連絡相手や自社の業務実態に合わせて、チャットツールや電話会議など適したツールを複数組み合わせる。これにより、TPOに合わせた働きやすい環境が実現できる。

こうした変化は日々起きており、働き方改革に必要なICTを自社だけで検討・構築するのは困難な状況になりつつある。働き方改革を実現するためには、NTT Comなどのパートナーの存在が不可欠だ。

NTT Comは、ネットワークインフラからクラウド、各種アプリケーションまで提供可能であり、自社サービスだけでなく、多様なパートナーベンダーのソリューションを最適に組み合わせた形で一元的に提供・サポートすることが可能。またNTT Com自身も長年に渡り働き方改革を実践しており、成功だけでなく、失敗からも得たノウハウを基にした提案が行える。時流の変化に即した、働き方改革の成果を上げるための取り組みを、強力に支援してくれるだろう。