コロナ禍により、多くの企業でテレワークが導入されました。しかし、コロナが収束した後も、テレワークは継続されるのでしょうか?継続するために必要なポイントを考えます。
1.2022年になって、テレワークを取りやめる企業が増えている!?
2020年に流行した新型コロナウイルス感染症によって、日本企業の働き方は大きく変化しました。特に変わったのが、テレワークです。多くの企業で、オフィス内や通勤電車などでの密を避けるため、毎日のオフィスへの出社を義務とせず、自宅から仕事ができる環境が整備されました。
しかし、コロナ禍が始まって2年以上経った今、テレワークをやめる企業も増えてきているようです。
東京都が毎月発表している「テレワーク実施率調査」(※)によると、2022年10月のテレワーク実施率は54.1%で、前年同月の57.2%を3.1ポイント下回る数値となりました。さらにいえば、9月は51.9%(前年同月55.4%)、8月は58.6%(前年同月63.9%)と、前年同月と比べた実施率は軒並み低くなっています。
2022年5月には海外の電気自動車メーカーのCEOが、従業員に向けてテレワーク終了を宣言するというニュースも話題となりました。
2.逆に、テレワークをいっそう推進する企業もある
このようにテレワークを取りやめる企業がある一方で、テレワークをさらに推し進める企業も出てきています。
たとえば日本の大手IT企業では、2022年4月より、コロナ前から存在していた、午前中に所属先のオフィスに出社できる範囲に住むという就業規則を廃止。全国どこでも居住できる人事制度を新たに採用しています。
さらに2022年7月にはNTTグループが、社員の働き方を原則リモートワークとし、日本全国どこからでも働ける制度「リモートスタンダード制度」をスタート。勤務場所は基本的には「社員の自宅」とし、会社への通勤圏に居住する必要は無いことをルール化しました。
2022年は、ある企業ではテレワークを取りやめ、ある企業ではテレワークを推進するという、両極端な動きが目立つ年となりました。
3.コスト削減や災害対策、人材確保にもテレワークは有効である
しかし、今後のビジネスのことを考えた場合、テレワークをストップするのではなく、継続する道を選択した方が良いでしょう。なぜなら、テレワークは企業にさまざまなメリットをもたらす働き方だからです。
メリットの1つが、人材採用です。日本では今後、少子高齢化によって労働人口が減少していくことが予想されており、企業にとって人材確保は今後大きな課題となります。そのためには、従業員のライフスタイルに合わせて、多様な働き方を認めていくことが必要です。
テレワークを導入すれば、育児や出産、介護などを理由に退職を考える社員がいても、在宅勤務や時短勤務で仕事を続けやすくなります。企業としても、優秀な人材を手放さなくてすむことになり、社員の満足度や企業イメージを高め、新しい優秀な人材の採用にもつながる可能性があります。
加えて、災害時のBCP対策としても有効です。自然災害によって公共交通機関が利用できなくなり、従業員が通勤できなくなったとしても、テレワークで在宅勤務を行える環境を整えておけば、出社せずに業務が継続できます。
コスト面においてもメリットがあります。企業がオフィスを借りる場合、ビルの賃料や光熱費、設備のメンテナンスなどさまざまなコストが発生します。しかしテレワークによって、オフィスに出社する社員の人数が少なくなれば、オフィスがコンパクト化でき、コストもカットできます。
テレワークは従業員にとってもメリットがあります。オフィスに出社せず自宅で働けることに加え、移動中や移動先、サテライトオフィスやコワーキングスペースでも仕事ができます。さらにいえば、リゾートなどで休暇を楽しみながら行う「ワーケーション」という働き方もできるようになります。
4.テレワークでも、オフィスと同じように働くためには?
テレワークで注意すべき点は、従業員がオフィス以外の場所で働いていても、オフィス勤務時と同様、快適かつ安全に仕事ができる環境を、企業側が用意する必要がある点です。
たとえば、テレワーク用に新しいツールを導入したにも関わらず、従業員から「使いづらい」「慣れ親しんだ従来の環境で働きたい」と苦情が寄せられる可能性もあります。こうした場合は、社外からも会社のパソコンと同じ環境で作業ができる「リモートデスクトップ」を使うのが良いでしょう。
これに加えて、通信環境を管理するIT担当者の負担を軽くするためのツールも必要になります。たとえ従業員が離れた場所で働いていたとしても、管理者の稼働を抑えつつ、端末の一括管理ができる仕組みづくりが求められます。
コストパフォーマンスについても注意を払うべきです。いくら従業員やIT担当者の求める環境を用意しても、コストがかかってしまっては、テレワークを継続していくのは難しくなります。経理部門や経営者層など、社内のさまざまな視点から見て、納得できる方法を選ぶことが大切です。
5.たとえ見直すにしても、テレワークできる体制は残しておこう
コロナ禍が長引いていることで、テレワークを続けてきた会社でも「テレワークは従業員の顔が見えないし、そろそろ止め時か」という声が増えているかもしれません。しかし、テレワークを完全にストップするということは、ここまで述べてきたテレワークのさまざまなメリットを失うことになります。
もしテレワークを見直すにしても、いざという時にテレワークに切り替えられるような社内体制を用意しておくことは重要といえるでしょう。