BCP策定にはテンプレートの活用がおすすめ!初めてでも使える雛形を紹介

BCP策定に着手してはみたものの、具体的な進め方の見当がつかず困っていませんか?そうした要望を受け、中小企業庁などの公的団体はBCP策定で使える各種のテンプレートを用意しています。特に初めてBCP策定を行う場合には、これらのテンプレートを利用することで漏れや抜けを防ぎ、必要な事項を網羅した計画書を作成できるため、非常に有用です。ここでは順を追って計画書の作成を進めながら、同時にBCPについての知識と理解を深められる工夫がされた便利なテンプレートを紹介します。

初めてのBCP策定にはテンプレートの活用がおすすめ

BCPとは災害などの緊急事態における企業や団体の事業継続計画(Business Continuity Plan)のことを指しています。2001年9月の米同時多発テロ以降その重要性が叫ばれるようになり、日本では2011年3月の東日本大震災を契機に改めて注目を浴びています。

このBCP策定の目的は、自然災害や人的災害などあらゆる緊急事態に対して事業が受けるダメージを最小限に食い止め、事業の早期復旧と継続を目指せる体制を作り上げることにあります。

とはいえ、BCPの必要性を十分に理解しながらも策定が滞っている企業や団体が多いのも事実です。2018年12月にNTTデータ経営研究所が実施した意識調査によると、自分の所属する企業がBCPを策定済みであるという回答は全体の約4割に留まっていることがわかりました。

さらに従業員規模別に見てみると、5000人以上の場合は「策定済み」「策定中」の回答が約9割を占めているのに対し、99人以下の場合では約4割しかなく、規模の小さい企業ほどBCPの策定率が低い状況が明らかになっています。(※1)

現在の企業のBCP策定状況のグラフ (従業員規模別)

現在の企業のBCP策定状況のグラフ (全体のもの)

現在の企業のBCP策定状況のグラフ (従業員規模別)

※1 出典:2018年12月 NTTデータ経営研究所「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第5回)」

なぜ半数以上の企業がBCP策定に取りかかることができていないのでしょうか?

策定への動きがなかなか進まないのは、BCPでは事業を脅かすあらゆるリスクを考慮した総合的な内容が求められていることが理由として挙げられます。地震や洪水など個別の災害に対処する場合と異なり、BCPでは多面的な内容が求められているのです。特に初めて計画書を作成する時には、確認しなければならない情報や記述が多過ぎるために、具体的な手順や作業内容を見失いがちになります。

そうした場合に役立つのがテンプレートの利用です。膨大な情報を整理しながらテンプレートを埋めていく作業を通して、情報を客観的に検証する機会も生まれやすくなり、より有用な分析と対策につなげやすくなります。

学べる!すぐに使える!おすすめのBCPテンプレート

では実際にはどのようなテンプレートが公開されているのでしょうか。ここでは、公共機関が作成し公開しているBCP策定のガイドラインやテンプレートを紹介します。

※各テンプレートの情報は2020年1月時点のものとなります。

中小企業庁

入門から上級まで4コース レベルに合わせてステップアップ

【ポイント】

  • 入門、基本、中級、上級の4コース別にテンプレートがあり、段階を踏んでレベルアップできる
  • 事前のセルフチェック表が充実しており、用語解説や財務診断などあらゆる要素をカバーしている
  • 「被災経験がないため、どのような災害を考えればよいのか分からない「被害想定が妥当か分からない」などの基本的な悩みに答えるQ&A集や、中小企業を対象にした最新の事例集が豊富である

中小企業の育成、発展の支援を行う中小企業庁は公式Webサイト内にBCP策定を推進するための特設ページ「中小企業BCP策定運用指針」を開設しており、BCP策定用のテンプレート「BCP様式」を公開しています。

このテンプレートはMicrosoft Word形式などの形でダウンロードできるようになっています。

この特設ページでは、最初に項目ごとに自社の取り組み状況を分析する「BCP取組状況チェック」を行い、担当者の知識の確認と現状の分析を促した後で、テンプレートを埋めて作成を進める形となっています。

また、テンプレートに併せて、知識を補完するための「用語集」も置かれるなどBCP策定に役立つ事象や要素が各所で詳しく解説されており、企業のBCPを評価するポイントまで網羅した総合的な知識を得るための情報源としても非常に有用なものになっています。

加えて、担当省庁の強みを生かして中小企業の特性や事情に沿った助言がなされており、財務診断モデルも製造業、卸・小売業、建設業など業種別に細かく用意されています。もちろん、具体的な事例も豊富に取り上げられており、中小企業の担当者が実態に即して作成できるように隅々まで工夫が凝らされています。

中小企業庁のテンプレートには入門、基本、中級、上級と4つのコースがあり、1~2時間で作成できる入門コースから始めてレベルアップしていくことを想定した構成になっています。ボリュームは多めですが、各要素を網羅した骨太なBCP策定を目指す場合にぜひ利用したいテンプレートです。

参考:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針 ダウンロード」

東京商工会議所

カラー図表が満載 東京都の被害想定情報も豊富

【ポイント】

  • テンプレートにカラー図表やフローチャートなどが豊富に使われて、読みやすいレイアウトが工夫されている
  • 防災計画書とBCPの違いなど基本的な事項が詳しく解説されている
  • 東京都の情報が豊富。最新の情報による東京都の被害想定が首都直下地震などパターン別にカラー地図や図表で紹介されている

東京23区内商工業者のための団体である東京商工会議所も「BCP策定ガイド」として、BCPの必要性を解説した策定ガイドとテンプレート、策定事例をまとめた啓発パンフレットを公開しています。

この策定ガイドのテンプレートには「事業継続戦略(BCS)様式」と「事業継続計画書(BCP)様式」の2種類が掲載されています。まず、策定ガイド冒頭のチェックシートで事業の概要を再確認した上で、BCS様式のテンプレートを埋めながら戦略を考えることになります。さらにBCP様式のテンプレートは「概要」「戦略」「個別計画手順」「追加個別計画手順」の4要素に分けられており、「概要」でBCPの方針や目的などを明らかにして、「戦略」の項で事業の優先順位と目標復旧時間(RTO)を決めて戦略を立て、個別の計画手順作成でテンプレートを埋めながらBCPのフォーマットに落とし込むという形を取り、作成の全工程にわたって細かくナビゲートされています。

東京商工会議所のテンプレートは、カラー図表が豊富に使われており、既存のBCPに関する事例も豊富に掲載されています。作業のイメージや完成モデルのイメージがしやすいです。また、初動対応や緊急対応、災害対応、復旧対応といった一連の行動を分かりやすくまとめたフローチャートも掲載され、災害発生時の対処について、対応方法を検討する際に使いやすいレイアウトになっています。策定ガイド全般を通して見やすさ分かりやすさに配慮がなされており、特に広く従業員に向けた分かりやすい解説が必要な場合には大いに参考にしたい内容です。

参考:東京商工会議所 BCPなど企業の防災対策支援

事業継続推進機構

まず防災対策から始めたい場合に

【ポイント】

  • 防災計画と防災対策を立ててからBCP策定につなげる構成で、気軽に始めやすい
  • テンプレートの記入項目ごとに詳しい解説が記載されており、参考にしながら書きやすい
  • BCP関連の勉強会やセミナー、資格認定などアフターフォローが充実している

事業継続推進機構(BCAO)は、災害、事故、事件といったリスクの発生時における事業継続対策の推進を目的とし2006年に設立された特定非営利活動法人です。こちらも「中小企業BCPステップアップガイド」の名称で、中小企業向けのBCP策定テンプレートを作成し公開しています。

事業継続推進機構のテンプレートは3部構成になっており、第1部でBCPの前段階となる防災計画と防災対策に焦点を当ててBCP策定の基礎固めとして位置づけている点が他と異なる大きな特徴です。これは、大企業に比べてリソースに制約がある中小企業の事情を考慮し、部門のトップから現場の従業員まで社内の全員に取り組みを定着させることを重要視しているためです。その後の第2部で重要業務を認識して計画書の骨組みを作成し、第3部で本格的なBCPの計画書を作り込んでいく流れになっています。途中、BCPへの理解を深めるための全体解説や、BCPの完成度を確認するためのチェックリストなども用意されています。また、テンプレートの記入項目ごとに策定方法や留意事項などのガイドラインが詳しく記載されており、記入例も項目内に詳しく記載されているので必要な情報を書き込む要領でBCPを完成させることができます。

他にも、公式WebサイトではBCPに関する資格として、事業継続に関して実務に必要な基本的知識を問う「事業継続管理者試験」や試験合格者を対象にしたレベルアップセミナーや勉強会など幅広い取り組みを行っています。疑問点を解消したい場合やBCPに関する知識や情報を継続的に学びたい場合にはこういった勉強会に参加するのもよいでしょう。

参考: 事業継続推進機構 中小企業BCPステップアップガイド使用のお願い

そのほかBCP策定の参考になる資料

そのほかにも、官民含めてさまざまな機関や団体がBCP策定の参考となる資料を提供しています。内閣府は「防災情報のページ」で各都道府県の事業継続に関する取り組みや参考資料を紹介していますし、各省庁や都道府県など自治体、各業界団体なども地域や業界の事情に合わせたガイドラインを公開している場合があります。

NTTコミュニケーションズでは安否確認システムなど災害に強い通信サービスの提供を軸に、緊急連絡用端末の設置やシステムサポート、従業員向けの研修などBCPを運用に乗せるための「BCP対策ソリューション」を提供しています。BCP策定では地域情報や関連省庁のデータなど多面的な情報を参考にして検討を重ねることが重要です。計画内容に不備がないか第三者の視点でチェックしておきたい場合にもおすすめです。

BCP策定時の注意点やポイントについては「災害に備える!BCP策定の手順と注意点」もご参照ください。

最新のガイドラインを確認して適切な計画を

有効なBCPを策定するためには、環境の変化や関連省庁の方針変更などにも合わせて最新のガイドラインを確認することも大切です。既に更新された情報がある場合、古い情報に基づく計画書では、有事の際に運用に支障が生じる可能性もあります。内閣府、経済産業省、中小企業省など関連省庁の動向に注意を払い、常に最新の情報を取り入れるよう心がけてください。

初めてBCP策定に着手する場合には、信頼のおける公的機関や団体が公開しているテンプレートを活用することで、労力を削減しつつも一定の水準を満たした計画書を作り上げることができます。まずは、各種のテンプレートを比較検討し、自社の状況に合った取り組みやすいテンプレートを選ぶことから始めてみてください。なお、 BCPの実践と訓練のポイントについては「BCPは訓練と運用がカギ!マニュアルの有効性を確認して有事に備える」をご参照ください。

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