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いまさら聞けない「デジタルトランスフォーメーション」ビジネスを変える3つのフェーズと2つの力(後編)

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Amazonは、世界で最もデジタルトランスフォーメーションの実現に近い

この2つの力を兼ね備えた企業は限られた存在です。そこに最も近いとされる企業は、Amazonではないでしょうか。

Amazonは企業理念として、「最高の顧客体験」を掲げています。例えば、Amazonの商品ページには「1-Click™で今すぐ買う」というボタン(ワンクリック・ボタン)があります。このボタンを押すと、住所やクレジットカードの入力、確認画面に移って確認ボタンを押すこともなく、即座に注文が成立します。有料のプライム会員であれば送料もかかりません。この便利さに、つい余計なものまで買ってしまう人もいるはずです。そして、この便利さ故に、同じものを買うのならAmazonを使う人も多いでしょう。この仕組みはAmazonの特許であり、他の会社が同様の仕掛けを組み込むことはできません。また、そんな会員の注文履歴を機械学習で分析し、次に何を買うかを予測して、配達先のそばの倉庫に予め置いておくことで、他社にはまねできない短納期を実現しているのです。

また、ダッシュボタンという、ネット・ショップにあるワンクリック・ボタンを物理的なボタン(機器)に置き換えたサービスもあります。ダッシュボタンを押すと、カミソリの刃やマウスウォッシュ、洗剤などの日用品、シリアルやミネラルウォーターなどの食品・飲料、美容、ペット、ベビー関連商品など、頻繁にリピートする商品が配送される仕組みです。それら商品を保存する冷蔵庫や使用する洗濯機などの機器にダッシュボタンを貼り付けておきます。商品が少なくなった、または使い切ったら、その場でボタンを押すだけで、最短ならば注文当日に自宅へ届く仕組みです。ダッシュボタンは、ボタンを押すだけでその商品を買えてしまうという点で、広告や宣伝などの費用が不要です。これらの点がマーケティングの常識を破壊するサービスといえるでしょう。

Amazonは、リアルな世界にも進出をはじめています。2017年にシアトルでレジ無しのコンビニAmazon Goを開店。この店舗形態を、2021年までに全米で3,000店舗にすることを計画しています。また、企業向けのサービスであるAmazon Fulfillmentは、商品の在庫管理、販売、決済、配送などの一切の業務を代行するものです。それらに「最高の顧客体験」というソリューションを盛り込むことで、製造業者をAmazonの顧客に取り込んでしまおうとしています。これが倉庫業や運送業などの企業に対する破壊的競争力なのです。

このようにネットに加えリアルでも顧客接点を拡げれば、膨大な行動データを集めることができます。これらのデータを活用することで、倉庫の品揃えをより最適化し、適切なタイミングで顧客へ商品を推奨し、注文が入れば即日配送といった「仕組み」も強化されていくでしょう。一旦このような基盤が出来上がれば、事業やマーケティングなどにおける長期の戦略・施策を最適化することができるようになり、その仕組みを様々な事業へ横展開することも容易となります。Amazonは、「業務がITへ、ITが業務へとシームレスに変換される状態」、すなわちデジタルトランスフォーメーションの第3フェーズを目に見える形で実現している一例といえるでしょう。

不確実性がますます高まるこれからの時代、企業が生き残るためには、ビジネス・スピードを加速して変化に即応し、現場に必要なサービスをジャスト・イン・タイムで提供できる力を持たなくてはなりません。デジタルトランスフォーメーションの実現は、企業が必ず取り組まなければならないテーマになろうとしているのです。

斎藤昌義
ネットコマース株式会社代表取締役

1982年、日本IBMに入社、営業として一部上場の電気電子関連企業を担当。その後営業企画部門に在籍した後、同社を退職。1995年、ネットコマース株式会社を設立、代表取締役に就任。産学連携事業やベンチャー企業の立ち上げのプロデュース、大手ITソリューション・ベンダーの事業戦略の策定、営業組織の改革支援、人材育成やビジネス・コーチング、ユーザー企業の情報システムの企画・戦略の策定などに従事。