コロナ禍にあってオンライン研修を採用する企業が増えています。しかし、手作業などの細かな技術継承にはオンラインは向いていません。解決策はあるのでしょうか。
1.コロナ禍でオンライン研修は当たり前の存在に
新型コロナウイルスの感染予防のため、人が集まる催しの多くが、中止や延期、または規模を縮小しての開催となっています。集合することが難しくなり、企業では会議や研修もオンラインで行われるようになりました。
株式会社ビジネスコンサルタントは今年5月に、698組織774名を対象とするオンライン研修に関するアンケート調査(※)を実施しました。それによれば、約半数の企業がオンライン研修を「導入している」と回答しています。
調査時点から半年を経過した今でも、コロナ禍は続いているため、導入すると答えた企業の割合はより増えていることが予想されます。
2.オンラインでは教えづらい“感覚”をどうやって継承するのか?
しかし、オンライン研修は万能というわけではありません。もちろんメリットとしては、新型コロナウイルスの感染防止、研修受講者の移動時間や交通費の削減、会場を手配するコストや手間の削減などがあります。
一方で、例えば手を動かしながら覚えるような、身体的スキルを必要とする技能、実作業を伴う技術など、感覚が求められる作業については、オンライン研修では伝えるのが困難です。
こうした技能の場合には、講師が細かく作業する様子を映像で見せるだけでは、なかなか受講者の身に付きません。受講者自身が実際に作業を試しながら、講師からの具体的なアドバイスが必要です。これをもとに繰り返し反復練習することで、はじめて習得が可能になります。
特にものづくり産業、たとえば製造業、建設業における特殊技能は、そのほとんどが実際に手を動かしながら学ぶものとなっています。
3.ARスマートグラスで、熟練技術者の作業の様子を共有しよう
しかし、オンライン研修に向かない分野では、今後も現場指導に頼らなければいけないというわけではありません。グラス型のIoT端末「ARスマートグラス」を用いた遠隔作業支援ソリューションを使うことで、こうした懸念が払拭できます。
ARスマートグラスを外部のネットワークと接続すれば、装着者の視野に入った映像を、遠隔で共有できます。メガネのように装着するだけで、ビデオ通話や作業に必要な動画や画像をハンズフリーで閲覧することが可能になります。

このARスマートグラスを用いれば、熟練技術者は遠隔地にいながら現場の新人作業者と同じ目線で作業確認ができます。たとえば、現場の新人作業者がARスマートグラスを装着することで、そこから送られてくるリアルタイムな映像を事務所内の熟練技術者が確認し、音声やテキスト、画像を用いてサポートするといったことができるようになります。
新人作業者は、そのサポートに応答する形で作業を進めることにより、作業の手順に関する細かい部分までを習得できます。一方で熟練技術者にとっては、研修場所まで出向く必要がなくなり、移動負担の軽減や人材育成の手間が省けます。もちろん、熟練技術者が現場に赴き、その他の新人がオフィスで確認するというスタイルも可能です。
4.製造業や建築業だけでなく、美容・医療業界でも使える
このスマートグラスを用いた遠隔作業支援は、製造業や建築業以外でも利用できます。美容関連では美容師や理容師など、両手を使いながら技能を習得しなければなりませんが、スマートグラスを用いることで、作業者は自由に手を動かしながら、視野を共有している熟練技術者からリアルタイムで具体的な細かい指示を受けることができます。
さらに医療関連では、医療体制が十分ではない離島やへき地での診療でも活用できる可能性を秘めています。現地の医師はスマートグラスを装着しながら、遠隔地の専門医の診察やサポートを受けることができます。
たとえコロナ禍であっても、技術や技能の伝承が必須であることには変わりはありません。社会は高速かつ大容量の通信が利用可能な5Gの時代を迎えつつあり、スマートグラスによる技術継承が、今後はスタンダードになるかもしれません。もし技術継承に不安を抱えているのであれば、検討する価値はありそうです。