課題・ニーズ
災害対策のためにDRサイトを構築していたが、データ同期が1日1回だったため、災害発生時にデータ消失の恐れがあった。
背景
建設業B社では、財務会計や管理会計にERPパッケージを活用しているほか、情報管理システムを整備してプロジェクトで日々使われるファイルを管理するなど、ITを積極的に活用して業務の効率化を進めています。これらのシステムはオンプレミスで運用されていましたが、これとは別に災害対策を目的としたDR(Disaster Recovery:災害復旧)サイトをクラウド上に構築しました。災害などによってオンプレミスの本番サイトに問題が生じた場合、DRサイトに切り替えることで事業を継続する形です。
このようにIT環境における災害対策を整えたB社ですが、現状では不十分だという思いがありました。具体的な課題だと考えていたのは、本番サイトからバックアップサイトへのデータのコピーです。災害発生時にバックアップサイトのシステムを利用して業務を遂行するには、バックアップサイトのデータが本番サイトと同一である必要があります。しかしネットワークの帯域の問題から、本番サイトからバックアップサイトへのコピーは1日1回しか行えなかったため、最大で1日分のデータが消失する恐れがあったのです。
当然、ネットワーク帯域を拡大してデータを同期する頻度を高めることも考えられましたが、それによって大きくコストが膨らむことから断念していました。この課題を解決することになったのが、NTTコミュニケーションズの「Enterprise Cloud」です。
対策
Enterprise Cloudは日本の関東と関西、アメリカ、イギリス、ドイツ、シンガポールなど、複数のリージョンでサービスが提供されているクラウドサービスであり、本番サイトとDRサイトでそれぞれ異なるリージョンを選択することで、容易に災害対策が図れるクラウドサービスです。
また、各リージョンは最大10Gbpsと広帯域のネットワークで接続されており、異なる拠点で構築したシステム間の同期に利用することが可能になっています。B社にとって大きかったのは、このネットワークが無料で提供されている点でした。
本番環境とバックアップサイトをクラウド化することで、DRサイトとの通信部分であるネットワークコストの負担を抑えつつ現状の課題を解決できると判断し、B社はクラウド化を決断しました。
お客さまの声
以前から災害対策には取り組んでいましたが、コスト面で思い切った施策を打ち出せない悩みがありました。しかし今回、クラウド間を接続するネットワークを無料で使えるEnterprise Cloudを利用することで、コスト負担を抑えつつシステム全体の可用性を高められました。本番サイトをクラウドに移行する手間はありましたが、運用コストの削減などといったメリットも生まれているので、今回の選択は間違っていなかったと感じています。
成果
B社はまず、Enterprise Cloud上にバックアップサイトを改めて構築し、続けてオンプレミスで運用していた本番サイトを別リージョンのEnterprise Cloudに移行しました。こうして本番サイトとバックアップサイトの両方をクラウド化した上で、リージョン間を結ぶネットワークを利用してシステム間を同期します。
従来は帯域面の問題から1日1回しか同期が行えませんでしたが、広帯域のネットワークになったことで、ほぼリアルタイムにデータを同期することが可能になりました。これにより、仮に災害が発生して本番サイトの利用が不可能な状況に陥っても、データのロスは最小限で済むため、業務への影響も抑えられ、迅速に事業を再開できるようになったのです。
本番サイト、DRサイトとの接続にはArcstar Universal Oneが使われており、本番サイトのサーバーが災害によってダウンすると、リージョン間をつなぐネットワークを介してDRサイトに接続する構成にしました。またB社拠点とDRサイトをインターネット回線上でIPsecを使って接続し、Arcstar Universal Oneに障害が発生してもシステムを利用できるように工夫しています。
※Enterprise Cloudは2021年5月26日に「SDPFクラウド/サーバー」に名称変更しました。