BCPにとって盲点になりやすい「情報の視点」
前述の5つの視点のなかで、特に重視したいのが「情報の視点」です。もちろん5つの視点からバランスよく取り組みを行うことは大前提ですが、情報の視点は他の4つと比べて経営層に当事者意識をもってもらえずに「IT部門がなんとかしてくれるだろう」と丸投げになってしまうケースが少なくありません。
経営層の人間であれば、被災により交通機関が寸断して従業員が出社できなくなる、あるいは本社や工場が倒壊したり、事業継続のための資金繰りが困難になったりする状況をイメージし、そんなときにどんな手を打つべきか考えることは難しくないでしょう。自らが陣頭指揮を取れなくなった場合に、誰へどんな権限を移譲すべきかをシミュレーションすることもできるはずです。一方で、近年ますます高度化し複雑化するITシステムについて、被災した状況を描き、具体的にどのような対策をとればよいのかを考えるのは、ITの知識が不可欠です。
経営層の多くは、ビジネスにおけるITシステムの重要性をわかっているはずです。しかし多くの場合、システムそのものを深く理解しているわけではないため、「IT部門に任せた!」ということになりがちです。もちろん専門部署の協力を得ることは大切ですが、経営層も「情報の視点」からのBCPを企業経営全体の課題として捉え、真摯に向き合う必要があります。
今や、ITシステムは企業の営みに不可欠です。災害など万一の事態が発生し被災してしまった際、スムーズに事業を再開するためにも、改めて自社のITリスクを洗い出し、BCPの策定に目を向けてみてはいかがでしょうか。