被災後の早期復旧のための5つの視点
BCPは策定したものの、実際に被災した際にうまく機能させることができなかったという話も少なくありません。その理由はさまざまですが、以下の5つの視点のうちいずれかが欠けていて、バランスがよくなかったというケースが多いようです。
1.人的リソースの視点
施設や設備が元通りになったところで、従業員が業務に復帰できなければ早期復旧は困難です。従業員の被災状況の把握や、少人数でのオペレーション方法、出社できない社員への対応などを明確にしておく必要があります。
2.施設・設備の視点
本社や生産拠点などの重要施設が損壊した場合、早期復旧が困難になります。施設そのものが無事でも、内部の設備が被害を受けた場合も同様です。これにより生産や調達ができなくなった場合に備え、代替できる手段を用意しておく必要があります。
3.資金の視点
被災により事業が中断した場合、どの程度の損害が発生するのか把握した上で、その間の事業資金に相当するキャッシュ・フローを確保しておけば有事の際もひとまず安心です。保険による損害補償や公的融資制度についても把握しておくのも大切です。
4.体制の視点
被災直後の混乱した状況の中で、自社のすべての事業を一斉に平常時に戻すことは困難です。そのため、経営層は速やかに優先順位を判断し、的確に指示を出す必要があります。また、指揮者が不在の場合は、誰かが代行できる仕組みを整えておかねばなりません。
5.情報の視点
施設や設備の被災が軽微であったとしても、業務に必要なデータが失われてしまっては事業の継続は難しいでしょう。広域災害に備え、遠隔地でのデータのバックアップは必須といえます。
BCPを策定するときはこれらの視点を考慮することが重要です。また、策定して終わりとせず、PDCAを回しながら常に改善し、緊急事態に備えることが望ましいといえるでしょう。
図:BCPの策定・運用サイクル
出典:中小企業庁ウェブサイト