単にBCPを策定すればよいわけではない
企業は災害が起きても事業を継続させるために、平時にBCPの基本方針を策定しておく必要があります。そして万一災害が発生した場合には、従業員とその家族の安否確認や、自社の設備、拠点、取引先の被害状況を把握するための初動対応を皮切りに、作成したBCPに基づいた復旧対応を実施していかなければなりません。
このように有事の際に道しるべとなるBCPは非常に重要です。しかし、BCPの策定を焦るあまり、出来合いのテンプレート(ひな型)をそのまま流用したとしても、企業にとって本当に実効性のある計画にはなりません。実情を勘案せずに作ったBCPでは、文字通り「計画倒れ」になってしまうおそれが高いのです。重要なのは、自社が「なぜ、BCP策定をするのか」という目的を見失わないことです。
どんな計画であっても、策定する前には土台となる戦略や基本方針の検討が必要です。そして、計画通りに物事を進めていくためのマネジメントも欠かせません。BCPも同様で、「計画書」を作るところから、継続的な運用、改善していく仕組みづくりまで、PDCAサイクルとしてとらえることが大切です。
そこで最近では、BCPとBCM、BCMSをセットで考えることが増えてきました。BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)が事業継続のために平常時に行うべき活動や、緊急時における体制や行動の手順などを記載した計画を指すのに対し、BCM(Business Continuity Management:事業継続管理)は策定したBCPを継続的に運用し、従業員を教育・訓練する活動や管理の仕組みであり、BCMS(Business Continuity Management System:事業継続マネジメントシステム)は策定したBCPに不備や不整合がないか、継続的に検証・改善を行っていく仕組みのことです。要は、「計画」が計画倒れに終わってしまわないように、運用や改善の仕組みも取り入れておきましょうということです。
なお、国際標準化機構(ISO)のISO22301では、BCPではなくBCMSを規格化していますが、「BCPのISO」ととらえられることが少なくありません。このことからもわかるように、今日では「BCP」と言っても計画(策定から実施まで)のみを指すのではなく、PDCAサイクルを回して継続的に改善していくことを含んでいると考えるのが一般的です。この記事でも、以後はその意味で「BCP」を用いることにします。