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Smart Factory

蓄電池システムのメンテナンスを自動化するAIテクノロジー

再生可能エネルギーの
安定供給を支えるAIを開発せよ

脱炭素化。今、この言葉が世界中のキーワードになりつつある。しかし、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは自然現象の大きな影響を受けるため、“安定供給”という観点ではまだまだ課題も多い。発電設備や通信設備ではバックアップ用の電源として、蓄電池システムが広く利用されていて維持・管理には専門家による診断が必要となる。
大規模な設備になると数十万個の電池を使用するため、人間の診断だけでは手が届かない。これでは再生可能エネルギーの普及が加速するはずもない。AIの技術で、専門家の知見を再現できないか。スマートファクトリー推進室が動き出した。

Member プロジェクトメンバー

  • 伊藤 浩二 Koji Ito

    イノベーションセンター テクノロジー部門
    ビジネスソリューション本部 事業推進部
    スマートファクトリー推進室兼務
    電気工学科 電気工学専攻修了
    1998年入社

  • 切通 恵介 Keisuke Kiritoshi

    イノベーションセンター テクノロジー部門
    情報学研究科社会情報学専攻修了
    2016年入社

  • 横谷 直人 Naoto Yokoya

    ビジネスソリューション本部 事業推進部
    スマートファクトリー推進室
    商経学部卒業
    2006年入社

  • 藤澤 裕記 Hiroki Fujisawa

    ビジネスソリューション本部 事業推進部
    Smart Factory推進室
    理学部化学科卒業
    1998年入社

Roadmap ロードマップ

  • Phase 01 課題抽出

    蓄電池システムのメーカーから、蓄電池の異質を発見するために新しいテクノロジーを活用したいという相談を受け、予備実験へと踏み切る

  • Phase 02 予備実験

    蓄電池システムの課題解決に、AIを活用することが可能なのか。お客さまと二人三脚でデータを突き合わせ、AIの有用性を徹底的に検証。

  • Phase 03 技術開発

    異質な蓄電池のデータを抽出するためのアルゴリズムをいかに構築するか。実際の環境に可能な限り近づけることで、実用性を高めていく。

  • Phase 04 課題分析

    「蓄電池システムの故障予兆検知技術」の開発に成功。100%の精度によって、専門家がいなくてもメンテナンスできる蓄電池システムを可能にする。

  • Phase 05 事業化

    開発成功のリリースにより大きな反響を得た。この技術のビジネス化、さらには蓄電の新たなプラットフォームを目指してプロジェクトは拡大していく。

Phase 01

課題抽出

そのデータは、そもそもAIに扱えるのか

最初に相談を受けたのは、AIチームのプロジェクトマネージャーを務める伊藤だった。「声をかけてくださったのは、蓄電池システムの開発・販売を手掛ける株式会社GSユアサ(以下、GSユアサ)の技術者の方でした。長年、電池の研究される中で、私たちには見分けることができない微細な波形の違いも見分けることができる方でした。一方で、蓄電池の異質を発見する方法として、人の感覚だけに頼るのはもちろん、単なる統計処理にも限界を感じられているご様子で、AIで何とかしたいという熱い想いを感じました。」再生可能エネルギーの蓄電池システムでは、数十万個という膨大な蓄電池が並ぶことになる。これを専門家が一つ一つを維持・管理することは困難であるため、AIの力で自動化したいというのが依頼だった。だが、果たしてAIは専門家の代わりに、蓄電池の声を聴くことができるのか。「そもそも各電池の違いを見極める手段として、ディープラーニングの技術が使えるかどうかもわからなかったため、まずは予備実験から始めることにしました」。

Phase 01

Phase 02

予備実験

データも、データの見方も、お客さまだけが知っている。

予備実験を担当した切通は、大学時代からデータ解析の経験があった。しかし、社会実装に向けたデータ解析には、学問レベルとは異なった難しさがあるという。「学術レベルでは、評価するためのデータや指標がオープンデータで与えられ、ある程度決まっています。一方、社会実装する際のデータ分析では、まず現場のお客さましか分析するべきデータを持っていません。しかも、私たちにとって“蓄電池”というのも全く未知の領域ですし、提供いただいたデータをお客さまがどのように扱われているのかも知らないため、評価の指標自体がわからない状態です。その指標をお客さまとすり合わせながら構築していくのですが、すこしでもブレるとAIによる分析結果がお客さまの知見と合わなくなる。そこの整合性を、お客さまとの二人三脚で徹底的に合わせていく作業でした」。また、ビジネスで活用する際には、事業性という指標も欠かせない。AIで正確なデータ分析を実現し、さらにはそれが事業に収益をもたらすものにならなくては、お客さまに価値をご提供することができないのだ。

Phase 02

Phase 03

技術開発

社会実装を実現するために

予備実験の成功を受けて、AIチームは本丸への挑戦を決断する。だが、日本製品の品質は高く、蓄電池で故障が発生する事例が少ないという問題もあった。「正常な稼働データしか手に入らなかったため、異質な蓄電池を発見するための実験環境を、人為的につくり出さなくてはならず、お客さまに通常の電池ではないデータをいただいて評価することにしました」と語るのはプロジェクトマネージャー兼解析担当の横谷だ。しかし、この手法では実験の前から“異質”の答えがわかっているため、たとえAIが検知できたとしても手放しで喜べる結果とは言えない。「これでは実用性に欠けるため、次の段階として正常なデータの平均値をとり仮想的な正常電池をつくった上で、仮想的な正常電池の特徴をAIで学び、学習した正常電池の特徴から外れるものを“異質”とする手法をとりました」と語る横谷だが、この時点である大きな問題の存在に気づく。蓄電池は経年変化や季節変化の影響も色濃く受けるため、“今日の正常”が“明日の正常”とは限らないのだ。光明が顔を出したと思えば、新たな課題が顔を出す。まさにこれこそが、AIテクノロジーの社会実装の難しさとも言えるだろう。

Phase 03

Phase 04

技術検証

メンテナンスフリーAIの誕生

数々の困難を乗り越えたからこその飛躍なのかもしれない。AIチームは複雑に変化する“正常”にも追従し、“異質”を抽出できる「蓄電池システムの故障予兆検知技術」の開発に成功する。その精度はほぼ100%。これによって専門家による目視も必要なくなり、最大で故障の2ヵ月前には“異質”を発見できるようになった。「当時は1週間に1回という短期間のサイクルで解析を実施していました。こうした高速でプロジェクトを回せる体制が整っていたことも、今回のような技術が生まれる大きな土壌になったと思います」という横谷の言葉に、伊藤も頷く。「お客さま、営業、解析、そして技術開発チーム。プロジェクト全体に一体感があったことも大きかったですね」。スマートファクトリー推進室は、先進的な技術の事業化を目指す部署だ。常に困難がつきまとう彼らのモチベーションの源泉とは何か。「今回の技術は、再生可能エネルギーの安定供給を支えるものです。こうした社会への影響が大きいプロジェクトに携われることが純粋に嬉しかったですし、技術者としては誰もやったことがないような開発の方が腕が鳴りますから」と入社5年目の切通は笑う。

Phase 04

Phase 05

事業化

数百億円規模の市場創出を目指して

この技術の登場は、ニュースリリースで発表されるとともに大きな反響を呼んだ。「今回の成功は数十億円、数百億円の事業規模になる可能性を秘めています」と語るのは事業検討支援担当として新たにチームにジョインした藤澤だ。「従来はお客さまの課題に応えるかたちでソリューションを開発するビジネスが主流でした。しかし、今回のケースは売り切り型、つまり売って終わりというプロジェクトではありません」。成果報酬型と言えばいいのだろうか。今、NTT Comはコンサル段階からお客さまの懐に飛び込み、お客さまとともに事業創出を目指すBtoBtoXというビジネスモデルの構築に力を注いでいる。「お客さまの目線で見れば、将来の成果が見えないなかで莫大な投資をするのは難しい。しかし、NTT Comが先行投資すれば、クライアントも事業変革に挑戦しやすくなります」。藤澤によれば、今回の技術開発も故障予兆検知だけに留まるものではないと言う。「この成功を取っ掛りにして、蓄電におけるプラットフォームといった大規模なビジネスを創造していきたい」。チームはすでに次の未来を見据えている。

Phase 05