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平成17年11月4日


東京都文化施設におけるIPv6技術を活用した
ビルファシリティ管理に関する実証実験の開始について



 NTTコミュニケーションズ(略称NTT Com)は、平成17年11月より東京都美術館、東京芸術劇場においてIPv6*1技術を活用したビルファシリティ管理実証実験を開始します。本実証実験は、ビル内の設備管理システムの遠隔・一元管理による省エネ・コスト削減および施設内の運用効率化・利用者サービス向上に対する有効性の検証を実施します。
 なお、本実証実験は、総務省が実施する「平成17年度IPv6移行実証実験」*2に基づいて実施するものです。

 近年、CO2削減などの環境対策や、エネルギー消費量削減を目指して、ビルファシリティ管理システムの高度化や、ネットワークを介した遠隔管理が進められてきています。しかし、従来の管理システムの多くはビルごとに独自のプロトコルで通信を行っており、地域に点在する複数のビルを一元的に群管理*3するには、複数のベンダによって作られたシステムの相互接続性、管理項目の共通化、ネットワーク上のセキュリティ対策など、様々な課題を解決する必要があります。本実証実験では、このような問題を解決する手段として、IPv6技術による通信プロトコルのオープン化・共通化を推進します。さらにIPv6の特徴である豊富なアドレスと、End-to-Endでのセキュリティの高さを利用し、複数の文化施設において、ビルファシリティ管理システムを構成する空調やエレベーターを一元的に監視・管理します。また、エレベーターの運行状況や温度分布計測など、システム内の様々な機器について、個々のベンダから直接保守や分析を行えます。
 本実証実験において利用するIPv6ネットワークは、NTTコミュニケーションズが開発したm2m-x*4技術をベースとし、End-to-Endのセキュリティ性の高い通信を実現しています。

 本実験を通じて、今後ネットワークを活用したビルファシリティの省エネルギー化や運用コストの削減を目指していくと共に、NTTコミュニケーションズではIPv6を活用した新しいマーケットの開拓と、ネットワークをより安心して利用できるようなマネージドサービスの提供を実現していきます。

【実証実験の詳細】
1. 実験場所
 東京都美術館(東京都台東区)および東京芸術劇場(東京都豊島区)

2. 実験期間
 平成17年11月~平成18年3月(予定)

3. 実証実験項目
  (1) ビルファシリティ群管理 (別紙1)
 美術館・芸術劇場における、エレベーターや空調などのビルファシリティ管理システムを、複数のベンダで構築し、さらに設備管理情報、監視映像などをビル施設外部から収集できるIPv6ネットワークを構築します。美術館・芸術劇場の外部にある中央監視センタや機器ベンダ拠点から、両施設の設備管理情報をEnd-to-Endセキュア通信技術、QoS技術*5などを用いて安全かつ確実に収集、分析できることを検証し、エネルギー消費量削減などの観点から群管理の有効性評価を行います。

  (2) 情報共有に基づく運用改善 (別紙2-1
 静粛性が求められるため携帯電話や館内放送が使いづらい美術館などの文化施設内に無線IPv6ネットワークを構築し、セキュアかつリアルタイムな情報共有を実現します。ビル施設の特定部分に人感センサ*6、IPカメラを導入し、そこから得られた入場者数や監視映像などの情報を館内スタッフの携帯端末に共有します。これにより、入場者数の増減に対する最適な人員配置を実現し、館内の混雑解消や、施設内監視業務の効率化といった、運用改善における有効性評価を行います。

  (3) ビルファシリティを活用した利用者サービス (別紙2-2
 ビル施設の特定部分に温湿度センサ、人感センサを導入し、IPv6ネットワークを通じて外部の機器ベンダにおいてデータの収集を行います。温湿度と滞留者人数の相関関係を分析し、館内の混雑度に応じて空調の強さを変えるなど、空調設備の予測制御の可能性を検討します。
 また、大型表示装置を活用し、施設内外の各種情報やIPv6ネットワークにおいて収集した情報をリアルタイムで入場者へ提供することによる利用者サービスの向上効果についても検証します。


4. 今後の予定
 本実験で得た成果は、『IPv6移行実証実験Webサイト』で国内外に広く公表します。http://www.v6trans.jp/jp/index.html

 なお本実験は、東京都(東京都新宿区、知事:石原 慎太郎)、東京都歴史文化財団(東京都港区、理事長:氏家 齊一郎)、ジョンソンコントロールズ株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:ケヴィン・ジェイ・パスクア)、東芝エレベータ株式会社(東京都品川区、代表取締役社長:下野政之)、日比谷総合設備株式会社(東京都港区、代表取締役社長:木村信也)、フジテック株式会社(大阪府茨木市、代表取締役社長:内山 高一)、ブロードバンド・エンジニアリング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:牧村 功)、松下電工株式会社(大阪府門真市、代表取締役社長:畑中浩一)、株式会社三菱総合研究所(東京都千代田区、代表取締役社長:谷野剛)、株式会社山武 (東京都千代田区、代表取締役社長:小野木聖二)の協力により実施されます。

  *1   IPv6
 Internet Protocol Version 6の略で、インターネットによる通信を行うために必要な通信規約の次世代の規格です。現在のインターネット規格であるIPv4(Internet Protocol Version 4)では、一台一台のマシンにつけるIPアドレス(電話でいう電話番号のようなもの)が足りなくなる恐れがありますが、IPv6では使えるIPアドレスが飛躍的に増加し、十分な数が確保されます。そのため、冷蔵庫やテレビなどの家電製品や、自動車など、いろいろなものをインターネットから制御できるようになります。その他、セキュリティ機能が強化され、各種設定も簡素化できます。IPv6は、次世代のユビキタスネットワーク社会を実現する上で、基盤となる技術です。


  *2   IPv6移行実証実験
 総務省により、インターネット基盤全体のIPv4からIPv6への円滑な移行を実現するために実施されている実証実験です。平成15年度からの3カ年計画で、ネットワーク運用上の課題の解決、移行モデルの策定等を目的とし、最終年度の平成17年度は、地方公共団体との連携を強化し、具体的なニーズに適合するIPv6ソリューションの有効性を検証します。


  *3   群管理
 一つの監視拠点から、複数の施設設備を一括して監視・管理することを示します。本実証実験ではIPv6ネットワークのオープン性を活用し、ビルファシリティの群管理を実現します。


  *4   m2m-x
 NTTコミュニケーションズがSIPとIPsecをベースに開発した、新しいEnd-to-Endの通信マネジメント方式です。
ネットワークに接続されるPCはもちろんのこと、家電や制御機器などのNon-PCの機器(="m"achine)でも「安全」「簡単」「低コスト」な双方向リアルタイム通信を実現するプラットフォーム技術です。


  *5   QoS技術
 QoSとはサービスの品質を意味し、特にネットワークにおいて、ユーザーの意図通りの回線利用を実現するための技術として注目されています。実際には通信の目的に応じて最適な帯域割り当てを行なうことで、それぞれの通信に求められるレスポンスタイムやスループットを確実に確保するための技術です。優先度の高い通信に確実に帯域を割り当てるということで、従来コンピュータの内部で処理されていたジョブスケジューリングをネットワークに拡張したものと考えられ、実際の処理においては、ルータやスイッチなど、通信が集中する部分で優先度を考慮したパケットの中継を行なう、という形で実現されています。


  *6   人感センサ
 施設内の出入口等に設置し、通過人数をカウントします。人感センサは、射出ビームの遮断回数によって通過人数を感知するもので、本実証実験では、カウントされたデータを収集・分析し、施設の運用改善や、利用者サービスの向上への効果を検証します。





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