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大沼 照幸 Teruyuki Oonuma

フォワード・NO.8

普段はおっとりとしたイメージだが、いざラグビーとなれば持って生まれたキャプテンシーを発揮する、大沼照幸選手。リーグ後半戦はゲームキャプテンを務め、チームが窮地に陥った時、必ずや彼の力がチームを後押しする。絶対に気持ちで負けないーそれが彼のラグビーに懸ける想いである。

高校・大学・社会人、全ての世代でキャプテンを務める

大沼 照幸

――ラグビーを始めたきっかけについて教えてください

中学校までやっていた硬式野球を高校でも続けるつもりでいたんですけど、うちの中学校の校長先生が偶然にも久我山(國學院久我山)ラグビー部の部長さんと知り合いだった関係で、自分のことを紹介してくれました。当時から体が大きかったし、同じ中学校から國學院久我山に進んだ先輩から「全国で活躍できるよ」と勧められたこともあって、ラグビーに心が動きました。

――いきなり名門校でラグビーを始めたわけですが、戸惑いはありませんでしたか?

ラグビー部に入るためのセレクション(入部テスト)があって、集まった選手からいろいろ話を聞くと実績のある人ばっかり集まっていたので、初心者の自分が本当にやっていけるかなと正直不安はありました。でも久我山では1年生だからといってボール拾いに回されたりすることはなく、最初から3年生に混ざって同じ練習をやらせてもらったため、徐々に戸惑いは無くなっていきました。

――高校から始めたラグビーですが、早くも3年生でU-19日本代表に選出されました

中学校では硬式野球部と一緒に陸上部にも入っていたし、基本的に走ることが好きだったので、走れることがラグビーをやる上でも土台になっていました。その上で徐々に技術が伴ってきたので選ばれたのかなと思います。それと、入ったばかりの一年生から三年生まで同じ練習をするという久我山独特の練習方法のお陰で、先輩から吸収するのも早かったのかなと思います。

――3年生(93年度)の全国大会では、ベスト4に入りましたね

2年生の時、久我山は優勝候補にもあげられていたんですが、初出場の流通経済大柏に敗れてベスト16で終わってしまいました。翌年にまた同校と当たる組み合わせになったので、今度は絶対に負けられないと気合が凄く入っていましたね。リベンジした時はやっぱり嬉しかったですよ。

――ラグビーでは強豪というわけでない中央大学に進まれたのは?

監督から推薦してもらって決めました。どうしても行きたい大学もなかったし、スカウトの方が熱心に誘ってくださったので、これも何かの縁だなと思って中央大学に進むことにしました。

――大学のラグビー生活はどうでしたか?

他の強豪大学であったら自分がレギュラーになれる保証はなかったと思いますが、大学2年生から試合に出られるようになったし、当時の中央大学は前に出て激しいタックルをするという面白いラグビーをしていたので、入って良かったなと思いました。

名門・國學院久我山高校時代の勇姿名門・國學院久我山高校時代の勇姿

――U-19代表選手であっても、入学初年度はリザーブでしたが?

自分が入部した当時、No.8のレギュラーに4年生の川島さん(川島等  現中部電力監督)という素晴らしい選手がいらして、その人の存在が自分への励みになったというか、自分はもっとやらなきゃレギュラーになれないんだというのを感じました。

――4年間を振り返ってみていかがでしたか?

3年生(1996年)の時に大学選手権ベスト16に22年ぶりに進出したかと思えば、4年生の時には、自分がキャプテンでありながら下部リーグとの入替戦に進んでしまいました。まさに天国と地獄を見ましたが、それでもいい経験が出来たと思っています。

――その後NTT東京(当時)に入部された理由は?

仕事もしっかりやりたかったので、ラグビーと両立できるところを探していたところ、大学の先輩から声をかけていただいた縁もあってNTTを選びました。

――ラグビーと仕事の両立は、考えていたようにうまくできましたか?

最初はひどいものでしたね。自分自身だらしない生活を送ってしまっていて、練習は遅刻するわ、時には寝坊して出ないわ、それでもそんなに怒られない......自分も含めてそんなチーム状況でした。でもチームにはそれなりに大学時代に名声を馳せた選手が集まっていて、試合になればそこそこやれたので、厳しさが足りなかったんですね。その辺の意識は今とはかけ離れていて、今思えばお遊び気分の感覚でやっていたんですね。

――大沼選手は、そのチームを当時のキャプテンとしてどうまとめましたか?

そういう自分の練習態度でしたから、まさか自分がキャプテンはないだろうと思っていたんですが、投票で選ばれてしまいまして......でも選ばれたからにはやらなければと。自分は口べたなので、グランドの中で身体を張っている姿を見せればみんながついて来ると思ったので、自分の中での100%のプレーをするということを意識しました。そうして自分としてもチームとしても、上を目指していこうという姿勢に変わっていったと思います。

――第18回 アジアラグビーフットボール大会(2002年)では、日本選抜にも選出されましたが

その前の関東代表の豪州遠征に参加させてもらっていたことで選抜されたと思うのですが、高校時代に着させてもらって以来の桜のジャージだったので、心が昂りました。

――日本選抜の成績はどうでしたか

結果としては韓国に負けてしまって準優勝でした。自分はその直前に国内のリーグ戦で顎の骨にヒビが入ってしまったまま「大丈夫です。できます」と現地に行ったのですが、案の定腫れてきてしまいました。監督だった向井さん(向井昭吾 現コカ・コーラウエストレッドスパークス監督)に「俺がお前の選手生命を奪うことはできないから、気持ちはわかるが試合には出せない」と言われ、全試合スタンドで見るという悔しい思いをしました。その日本選抜で自分と同じくNO.8をやっていたのが先ほど話した大学の先輩の川島さんだったので、どうしても出たいというのもありました。

――川島選手に成長した姿を見せたかった?

川島さんという存在を目標にしていたので、自分のプレーを直に見てもらいたいという気持ちは凄く強かったですね。川島さんとの差がどのくらい縮まったのか、実際のプレーで確認したかったので、余計に悔しかったですね。

全てはチームのために

――今までで一番印象的だった試合を教えてください

その試合は今でも鮮明に覚えているんですが、2年前にワールドと対戦した入替戦です。直前のチャレンジマッチ2(トップイースト、トップウェスト、トップキュウシュウの各リーグ2位チームが行う入替戦進出をかけたプレーオフ)で腰を痛めていて、試合前日に痛み止めの注射を打ったのに足に力が入らない状態でした。でも、選手層も薄かったし監督からも「とりあえず出てくれ。すぐ変えてやるから。」と言われて出場しました。前半3-0でリードしていましたが、何度もアタックされて倒されて、皆ボロボロになってもまた前に出てタックルしていました。みんな満身創痍で向かっていく中で、自分も結局80分フルタイムでプレーし、試合をやりながらみんなのがんばりに感動していました。後半相手が新しい選手をどんどん入れてきて50点ぐらい取られて敗れてしまったのですが、気持ちがあればどんなチームとでも互角に戦えるという意味で、自分のラグビー人生でのベストゲームだったと思います。

――今シーズンよりNTTコミュニケーションズ ラグビー部となって、何が変わりましたか?

シンボルチームとなることによってさまざまな援助をいただくと共に、やらなければいけないという意識が出てきたなと感じています。激しさが全然違いますよね。例えば以前まではコンタクトプレーの練習は、ケガをするのが嫌だなという空気がありましたが、今はみんなが必死になってボールを守るためにぶつかっていますね。

全てはチームのために

――大沼選手のプレーのどこに注目してもらいたいですか?

タックルとかアタックという個々のプレーではなく、敢えて言うならチームのために身体を張ったプレーを見て欲しいですね。

――今シーズンからFLに転向されましたが

ずっとNo.8でしたが、今シーズンが始まる前に監督から「FLをやってくれ」と言われました。しばらく消化できずにいて、「No.8の座をダレンと勝負させてほしい」と監督に言おうと何度も思ったんですけど、チームの中での自分の役割を考え直して、FLへの転向を決意しました。

――今シーズンも残り一試合。チームの手ごたえは?

昨年もそうだったのですが、今までは下位との対戦が続く序盤から終盤近くまでは勝ち進めても、最後の最後に勝てなかった。今年こそ真価が問われるのが、最後の試合。そこで勝って初めて、今年のチームが昨年より良くなったかなと手ごたえがつかめると思います。

――その最終戦(12/24)をどう戦いますか?

横河電機とはNTT東京時代からいろんな因縁もあって、ライバル視しているチーム。ここ数年は勝ってきていますが、絶対負けたくないチームの一つなので気持ちをどれだけ前面に出せるかが大事になってくると思います。

――ラグビーで学んだことはなんですか?

トライを取ったヤツが偉いんじゃなくて、そこに至る過程があってこそトライが生まれるということです。まさしく「One for All, All for One」の考え方です。そこから人生や仕事にも生きてくる自己犠牲の精神を学べたと思います。

――優勝、そしてトップリーグ昇格を期待して最終戦に足を運ばれるファンにメッセージを

自分たちはトップリーグに上がるという信念を持ってプレーしているので、それを後押ししてくれるみなさんの声援があれば絶対に勝てると思います。勝ってトップリーグに行きましょう。
最後に、今自分が思っていることをもうひとつだけ言わせてください。後半戦、山本監督にゲームキャプテンを命じられてやっていますが、加藤キャプテンが出ていれば断っていたと思います。彼は今ケガでゲームに出られずにずっと見ているだけで、本当に一番苦しい思いをしているはず。逆の立場だったら自分はあそこまで耐えられるのかなと考えたりもします。加藤が出られるようになるまで、加藤の分までがんばりたいと強く思っています。応援よろしくお願いします。