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ダレン・マーフィー Darren Murphy

フォワード・NO.8

スーツを着たその姿からは学者然とした雰囲気を醸し出すジェントルマン、ダレン・マーフィー選手。試合中は、敵をなぎ倒し圧倒的な突進力を見せるが、ラグビーに取り組むその姿勢は常に真摯であり、豊かな経験値をチームにもたらしている。

文化の違いを体験し、新しい経験を積むことを目的として来日

ダレン・マーフィー

――オーストラリアはラグビーが盛んですが、初めてラグビーに触れたのは?

私の両親はニュージーランド人ですが、ニュージーランド人にとってラグビーはかなり生活に浸透しているもので、父もプレーしていました。私が子どもの頃、オーストラリアのパースに引っ越しましたが、そこで人気があったのはオージーボール(オーストラリアン・ルールズ・フットボール)でした。でも父はラグビーの方が好きでしたので、父に連れられて地元のクラブの試合を見に行ったのが最初の出会いです。オーストラリアやニュージーランドでは、ラグビークラブは地域の社交場でもあリ、親子が一緒に過ごしたり友達を作ったりするコミュニティの場なので、ラグビーとの触れ合いはごく普通のことです。

――実際にプレーを始めたのはその地元のクラブですか

オーストラリアの地域のクラブには小さい子のためのジュニアラグビーと成人ラグビーがあり、7才の時に父が応援していた地元クラブのジュニアラグビーでプレーを始めました。3人の弟たちは今でもそのクラブでプレーしていて、私の家族はそのクラブチームに約18年間も関わっていることになります。

――その後、強豪クィーンズランドレッズに入ったいきさつは?

私が20歳の頃、当時パースにはトップレベルのラグビーチームがありませんでした。ですので、私は西オーストラリア代表や州代表でプレーしていましたが、それでもアマチュアレベルでしたので、レッズでもう少しプロレベルのラグビーをやろうと決めました。

――日本への移籍を選んだわけは?

クィーンズランドレッズではBチームで3年程プレーしていました。オーストラリアは、当時レッズを含めた3チームが南半球のクラブラグビーリーグの最高峰であるスーパー14(当時はスーパー12)に参戦していましたが、ポジションごとの人数に限りがあり、トップチームでのプレーの機会はありませんでした。そのままオーストラリアにいればスーパー14のトップチームのリザーブメンバーでプレーすることもできましたが、日本に行けば文化の違いや、新しい経験を積むことができると思ったんです。

――日本の印象はどうでしたか?

私が住んでいたパースやブリスベンはかなり小さい街なので、東京のような大都会に初めて来てその違いに唖然としました。それにたくさんの人が密集して暮らしているのに、犯罪が少なくて文化的で人はフレンドリーだし、こんな大きな街でいろんなことが上手に機能しているのがすごいと思ったのが第一印象でした。

――日本で生活を始めてみて、苦労はありましたか?

たくさんありました。外国人選手の先輩には、アダム・パーカー(昨年退団)やタイ・グラッシー(CTB)がいて、言葉が話せない私は二人に頼ろうとしていました。しかし2人とも赤ちゃんが生まれた時期で忙しかったので、私は新しい生活に溶け込むのが大変でした。例えばランチの注文や手紙を送ることなど、小さいことですが日々格闘していました。滞在期間が長くなるにつれて楽しくなり、もっと日本にいたいと思うようになりましたけど。

――初めて見た日本ラグビーについては?

日本のラグビーは、オーストラリアのラグビーとはかなり違うと思いました。日本のラグビー選手はハートがあり、闘争心も強く、またスピーディなので対応するのは大変です。ニュージーランドやオーストラリアの場合、もう少しゆっくりとしています。私にはその違いが面白く、新しいスタイルでプレーしてみたいと思いました。

――レベルはどうですか?

日本のラグビーはまだ世界的に見て高いレベルにあるとは言えないと思います。ニュージーランドやオーストラリアのチームは常に遠征して試合をしているので高いレベルで競っていますが、日本のチームは海外のチームとのゲーム経験があまりないからだと思います。

自分の経験をチームに伝え、トップリーグに昇格させることが目標

試合風景

――そういった日本のラグビー環境のなかで、モチベーションを保つのに苦労しませんか?

モチベーションを保つことは簡単です。チームにはたくさんの選手がいましたし、みんないい人なのでゲームに勝つために力を貸したかったし、勝った後みんなが喜ぶ顔を見たかった。また友達が応援に来ている時に勝つと、試合後みんなで盛り上がって、次の試合へのモチベーションが高まります。

――今までで印象に残っている試合を教えてください

何試合かありますが、チャレンジマッチへの出場権がかかった2年前の三菱重工相模原戦は特に思い出に残っています。負ければシーズンが終わるという試合で、チームもみんな気合が入っていてプレーにもキレがありました。勝利で試合が終わった後みんなの顔を見ると、感動してとてもよい表情を浮かべていました。

――体制が変った今季、快進撃が続いていますね

良いスタートが切れたのは、気迫が過去よりも高かったからでしょう。チームの外からも素晴らしいサポートがあり、会社は力を尽くして盛り立ててくれています。それがチームに活気を与え、トレーニングも試合もハードになり、みなさんもゲームを見てくださればチームが試合ごとに良くなっているのがわかると思います。また観客も多くなり、全てがうまく回り出していると感じます。だから私たち選手が次にチャレンジしなければならないのは、会社をはじめサポートしてくれる皆さんにお返しするため後半戦でさらに強いチームにしていくことです。

――観客が増えたといっても、オーストラリアとはずいぶん差があると思いますが

もちろん、みんな大観衆の前でプレーしたいと思うでしょうし、私もそうです。ただ観客の人数は問題ではなく、大切なのはサポーターの情熱です。現在サポーターの中にはかなり熱狂的に応援してくださる方もいて、本当に嬉しいと思っています。

――今シーズンのNTTコミュニケーションズ  ラグビー部の特徴は?

今まで私たちはFWの密集からトライをあげることが多く、FWが強いと言われていました。今年はBKに素晴らしい新人が入ってBKの攻撃のバリエーションが増え、洗練されたものとなり、どこからでもトライができるようになりました。このチームは経験豊富なベテランがいるだけでなく、良い新人もいて両者が上手くミックスできていると思います。

――トップリーグ昇格という目標に、ダレン選手はどう貢献していきたいですか?

このチームは力を持っていると思いますし情熱もありますから、十二分にトップリーグに行けると思います。自分個人としては、オーストラリアでプレーしていた時もそうでしたが、フィールドにいる誰よりもベストを尽くした良いプレーでチームに貢献して、NTT Comをトップリーグに上げようと思っています。

――後半戦に向けて具体的にどうプレーしようと考えていますか?

私の役目は、チームが前に進むようにする事。私のポジションはボールランナーとも呼ばれるもので、ディフェンスを走り抜けボールを前に運んで、攻撃の突破口を作ることです。また、サードローとしてFWをリードし高い意識をもってプレーすることも心がけています。後半戦は徐々に強いチームと対戦しますが、最後の2試合のセコム戦と横河電機戦が最大の見どころになると思います。特に秩父宮で行う横河電機との最終戦は、勝てば素晴らしい結果が待っていると思いますので、ファンの皆さん、ぜひ応援に駆けつけてください(笑)。

――今年で日本が4年目になるダレン選手の今後の目標は

繰り返しになりますが、今現在の目標はチームをトップリーグに上げることです。私個人の目標としては、私の妻も日本が好きで生活を楽しんでいるので、できるだけ長く日本にいて私の日本語をペラペラにしたいと思っています(笑)

7才の時から、ラグビーは人生の一部となった7才の時から、ラグビーは人生の一部となった

――ダレン選手にとってラグビーとは?

ラグビーをしている選手は同じことを言うと思いますが、ラグビーは私にとっては人生の一部であり、生活そのものです。オフシーズンになると何をしていいかわからなくなります。7歳から常にプレーしているものであり、引退したら生活が寂しくなるでしょう。今ラグビーの全てを楽しんでいます。この生活も、友情も、トレーニングや試合への準備も、プレーすることも、勝つことも、全てです。

――本場の国から来て、若手にはどんなことを教えていきたいですか?

基本的に、まずテクニックを教えたいと思います。ラグビーは小さなミスを何度も繰り返すスポーツなので、落ち着いてタックルに集中するようにとか、正しいヒットポジションやボールを置く位置を正確にするなど、テクニックを完璧にしていくことです。精神面に関しては、フィットネストレーニングの時もそうですが、ゲームではより重要になるものです。練習ではテクニックに集中しますが、ゲームでは自分ができる限り中心となってリーダーシップをとり、疲れていても立ち、倒れている選手がいたら励まして立ちあがらせたい。それに私たち外国人選手はラグビーをチェスのように理詰めで考えているので、体力的な強さと同様に考えることや相手よりも賢くプレーすることも教えていけたらと思います。

――応援してくれるファンにメッセージを

いつも応援ありがとうございます。圧倒的な勝利を重ねることでトップリーグに昇格し、みなさんに恩返しができることを楽しみにしています。

通訳:江口美和子