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ティム・レネヴェ Tim LeNevez

バックス・CTB/FB

勤勉なプレーぶりに似合わず、普段は物事に頓着しないタイプだという、ティム・レネヴェ選手。母国オーストラリアではビッグクラブに所属し、また各年代で代表にも選ばれてきた。彼の豊かな経験値が、必ずやチームの進化を加速させてゆく。

ラグビー強豪国オーストラリアでの、数々の代表歴

ティム・レネヴェ

――ラグビーを始めたきっかけを聞かせてください

まず最初に、4歳からラグビーリーグ(13人制ラグビー)を始めました。それからキャンベラに引っ越してプライベートスクールに通い始めたのですが、その学校はラグビーユニオン(15人制ラグビー)が有名でした。私がラグビーリーグでプレーしているのを見た先生から、「上手いから、学校のラグビーユニオンでもプレーして欲しい」と誘われたので15人制ラグビーも始めました。その後何年か両方でプレーしていましたが、16歳のときにオーストラリアU-16代表に選ばれたのをきっかけに、ラグビーユニオンに専念しました。

――ラグビーユニオンに専念して、どうでしたか?

ラグビー(ユニオン)を勧めてくれた先生に感謝しています。ラグビーリーグはオーストラリア国内か、英国の一部のみでプレーされるだけなのに比べ、ラグビーユニオンは国際的にプレーされています。ですから多くの経験を積む機会に巡り会えるし、また日本のような国でプレーすることができてうれしく思います。

――U-16代表に選ばれたきっかけは?

学校でプレーをしていた時にACT(オーストラリア首都特別地域)代表に選ばれて、ナショナルチャンピオンシップに出場して好成績を残しました。それがきっかけでU-16代表に選ばれ、ニュージーランドと対戦することができたと思います。

――初めての国際舞台で、ニュージーランドと対戦したときの感想は?

ひとことで言うと、きつかったです。ニュージーランド代表のマオリ族やポリネシアの人は成長が早いため、身体が自分たちよりも大きかったからです。ですが、なんとか勝つことができました。若い世代でも国の代表でプレーをすることで責任もありますし、プレッシャーを感じながらプレーした思い出があります。

――若い年代から勝つことを義務づけられるプレッシャーがあるのですか?

他の国がどういう風に若い選手を育てているかわかりませんが、オーストラリアではやはり若い頃から真剣に勝とうという気持ちをもってプレーをしているのは事実です。ですが、高校生ぐらいまでは同時にそれを楽しみながらプレーをすることも大切です。そうでないと大人になった時にラグビーが嫌になってしまうので、競争心を持ちながらもラグビーを楽しむ気持ちを忘れないことが大切なのです。

――楽しさを味わうためにはどうしたら良いでしょうか?

大切なのは競り合うことを楽しむことです。やはり負けると悔しいし残念だと思いますが、負けても世界が終わるわけではないので、チャレンジを楽しむのが良いと思います。

試合風景

――U-16代表に選ばれた後の経歴を教えてください

U-16代表の後17歳で高校を卒業し、翌年オーストラリアU-19代表に選ばれ、さらに19歳でオーストラリアU-21代表にも選ばれてFBでプレーしました。そして、その年の終わりにACTブランビーズと契約することになりました。

――手元のプロフィールにはキャンベラ大学とありますが

オーストラリアではラグビーのクラブチームと大学は別なので、ラグビーをしながら大学に通っていました。大学は4年間のコースに行っていましたが、ラグビーをしながらだったので、ある年はパートタイムになったりして結局6年かけて卒業しました。

――ブランビーズというSuper12(現在Super14)出場のクラブと契約した時の気持ちは?

とても興奮しましたよ。19歳でしたし、キャンベラで一番大きなスポーツクラブですし、多くの有名選手とプレーすることを楽しみにしていました。

――ブランビーズでプレーした印象は?

ブランビーズにはとても強く優秀な選手がいましたので、たくさんの経験ができました。日本代表とも2回対戦しましたし、フィジーやトンガ代表とも対戦できました。しかし優秀な選手が多いというのは、同時に自分がスタメンで出る機会をなかなか得られないことを意味します。当時BKにはジョー・ロフやスターリング・モートロック(いずれも豪州代表)などのすばらしい選手がいましたので、自分は多くの時間をベンチで過ごし、スターティングメンバーになるのは本当に大変でした。

――2002年からは、オーストラリア7人制代表にも選ばれましたが

代表クラスのレベルとなると、どこに良い選手がいるかコーチ同士が教え合い、情報交換をします。自分は若い頃からブランビーズでプレーしていた為、それまで7人制に出る機会はなかったのですが、プレーを見ていたスカウターの方からコンタクトがありました。

――7人制代表でプレーしての感想は?

今までやっていて一番激しかったのは、U-21ワールドカップでした。非常に強い選手が集まって国のために1ヶ月かけて戦っていたので、とてもタフな状況でした。7人制の方も観客が多く集まって楽しい雰囲気の中でやれるのですが、自分としてはやはり15人制でやっていくほうが合っていると思いました。

――2003年夏にブランビーズを退団し、やはり強豪クラブであるランドウィックでプレーすることになりました

ランドウィックには非常に優秀なコーチ陣がいましたので良いシーズンを過ごすことができ、特に2004年にはグランドファイナルで優勝しましたので、とても楽しい日々を過ごすことができました。

――そして、2005年にはフランスに移籍することになりました

フランスのAuch(オーシュ)という当時1stディヴィジョンに昇格したてのチームから誘いがあったので行きました。プライベートスクールに行く前は、日本でいうアメリカンスクールのような存在の、フレンチスクールに通っていたのでフランス語も話せますし、自分のルーツはフランスの家系でしたから、フランスには一度行きたいと思っていたんです。

――その後、日本に来ることになったのはどういった事情があったのでしょう?

Auchとの契約が終わりオーストラリアに戻った際に、旧知のコーチから「もし日本でプレーをする気持ちがあるなら手助けができる」と誘いがあり、良いチャンスだと思いましたので、コンタクトを取ってもらうことになりました。日本でプレーをしているオーストラリアの選手をたくさん知っていましたので、いつか自分もプレーしてみたいと興味を持っていたんです。

――実際に日本のラグビーを見て、プレーをしてみてどう思いましたか?

基本的に、早いペースでボールが展開されるラグビーですね。英語ではルースプレーまたはブロークンプレーといいますが、パスを連続で素早く展開したり、たくさん端から端まで走り回り、インターセプトして50m走ったりといった特徴が見られるので、早いペースでエキサイティングだと感じました。

自分の経験を若手に伝えて、チームをトップリーグにあげたい

自分の経験を若手に伝えて、チームをトップリーグにあげたい

――2006年NTT東日本ラグビー部に入って、その第一印象は?

非常に良い印象でワクワクしました。自分はBKなので後ろに目がいってしまいますが、BKには若い選手が多く、足も速く非常に俊敏な印象がありました。「こんなに足の速い選手がいるんだ。」と驚いたものです。

――チームに対して、どう貢献したいと考えましたか?

今シーズン(07-08シーズン)はまず最初に、BKのディフェンス面での強化を目標に立てました。昨シーズン(06-07シーズン)はウィングがパニックになって必要のない所に出てきたりしましたので、トレーニングでは効果的にディフェンスができるようにアドバイスしました。この点は目標を達成できたと思っています。
もう一つの目標として、若手の成長の手助けをするということでした。なぜそのプレーをするかということを、考えながらやるようにアドバイスしました。自分の目の前で何が起こっているかを考えながらプレーしないと、自分のスキルを磨くことはできないからです。時々行き当たりばったりのプレーが見受けられたので、ヨシオ(君島良夫)、ゲン(柏原元)、シュウヘイ(河津周平)らには、ゲームを分析できるようにアドバイスをしています。

――その上で今シーズン心がけたことはなんでしょう?

昨シーズンより質の高いゲームをしようと試みました。BKを使って目的を持ってゲームを組み立て、オープンなラグビーをしようとしました。その結果、昨シーズンよりも良いチームになることができたと思います。

――プレーオフで敗れたセコムとの差は何だと思いますか?

NTT Comには良い選手がいますし、スキルもあり、コーチングやゲームプランも劣っているとは思いません。セコムに負けたのは、大きな試合での経験の差です。セコムは昨年トップリーグでプレーしていましたし、年間通して非常にタフなゲームを経験しています。あの試合(プレーオフ)に関しては、そういったビッグゲームの経験の差だったのではないでしょうか。ただ、良い点としては入団1、2年目の選手のプレーが非常に良かった。来年彼らは必ず今年よりも成長しますし、ビッグゲームを既に経験しましたので、それを生かしてプレーできるのではないかと思います。

――今シーズンを振り返り、自分に点数をつけるとしたら?

非常に難しい質問ですが、点数をつけるとしたら10点中7~8点ではないかと思います。
シーズン初めに怪我もしましたが、自分としては毎試合100%力を出してプレーしたので、まあまあ満足しています。ですが試合に負けるのはやはり悔しいですし、特に12月の横河電機戦では勝つチャンスがあったのに負けてしまったので非常に残念でした。

――来年トップリーグに上がるためには、何をしなければならないですか?

個人的には、BKのプレーに良い影響を与え、これまで以上に若くてキーとなる選手をサポートしていきたいと思います。またゲームプランなどチーム作りも手伝えたらと思っています。チームとしては、仕事をしながらトレーニングをするので忙しくて時間が割けないという状況があるのですが、シーズン前からジムで身体づくりをするなど、個人トレーニングでもっと良い準備ができればと考えています。
また、ビッグゲームをもっと経験して、精神的に更にタフにならなければならないと思います。そうすればプレーオフのような競った試合でも上手にゲーム運びができ、きっと勝てるようになります。

――あなたがラグビーを続けている理由は?

まず、いつでも楽しんでプレーできているからです。また負けず嫌いなのでタフなゲームが好きだし、自分たちをテストできるような状況も楽しいです。ラグビーを通してさまざまな人と知り合えたり良い友達にめぐり合えることも楽しいし、トレーニングでただボールを投げあうだけでも楽しいです。だからこそ、自分を日本に呼んでくれたNTT Comをトップリーグに上げたいと思っています。日本人選手も常に一生懸命練習していますし、トップリーグに上がることは彼らにとって大きな喜びになるのではないでしょうか。

通訳:斉藤麻美