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河津 周平 Shuhei Kawadu

バックス・WTB/FB

今シーズンはバイスキャプテンとしてBK陣のまとめ役もこなしている、河津周平選手。ラグビーを始めてから今まで、やるべきことをひたすら考え実践していくことで一歩一歩着実にステップアップしてきた。今季の目標はひとつートップリーグ昇格。そして兄との対戦が今から待ち遠しい。

ラグビー一家に生まれ育って

河津 周平

――ラグビーを始めたきっかけは?

親父が熱狂的なラグビーファンで、我が家ではラグビーをやらないと生きていけない状況だったんですよ(笑)。冗談に聞こえるかも知れないですけど、本当なんです。まず2つ上の兄貴(河津賢太郎  現クボタ)が高校に入ると、親父がラグビー部に入るように命令しました。で、兄貴が拒んでいたら兄貴と親父がギスギスした感じになって家のムードがすごく悪くなってしまい、結局兄貴が折れてラグビーをやり始めました。それを僕は見ていたからどうせ自分もラグビーから離れられないだろうと思っていたし、兄貴も楽しそうにやっていたので自分も始めました。

――では高校から始められたんですね

いや、正確には中学校3年の時から。高校入学がまだ決まっていない段階で親父に「お前、練習に行け」みたいなことを言われて、兄貴の高校の練習に何回か行った事がありますね。ま、兄貴もいたからそんなに嫌じゃなかったですけど。3月の春合宿から参加させられてました。

――半ば強制的に始まったラグビー人生ですが、高校時代はどうでした?

1年生ではラグビーをすること自体が初めてで、何もわからない状況だったのでがむしゃらにやりましたし、兄貴がいたので助けてもらったかなと思います。が、2年生では兄貴がいなくなって何も出来なくなってしまって、どうしたら上手くなれるかラグビーのビデオを毎日見たりしてずっと勉強していました。すると今度は親父に「お前はラグビーの才能がないから辞めろ」って言われたんです。悔しかったですね。

――その後、明治に入るきっかけは?

3年生になった時に進路をどうするかという話になって悩んでいたら、親父に「お前1年生の時に明治に行きたいって言ったんだから明治に行けよ」って言われたけど、花園にも出場していない僕にしたら明治は雲の上の存在で、行けるわけないじゃんと思っていたんです。でも明治の紫紺のジャージを着ている姿を想像したらワクワクしてきてダメ元で目指してみようと思って。その辺からプレーに対する反応や判断が自分の頭の中で整理できてきて楽しくラグビーが出来るようになり、大分県代表にも選ばれて、国体の時、明治の関係者に見に来てもらったのがきっかけでした。

――自分で明治に行きたいと言った状況を覚えていますか?

言ったとは思うんですよ。確かビデオとか見ていて、親父が明治の事を褒めていたんですよ。で、自分も調子に乗ってノリで「俺も明治に行くか」みたいなことを言ったのが事の発端ですね。その言葉でまさか本当に明治に行くことになるとは思わなかったですけど。

――河津選手がいた頃の明治は、なかなか勝てない時期でしたね

低迷期だったからなぁ。勝ちたいとは思っていたけど、特に試合に出ていた4年生の時は、チームが壊れていく様を見た感じですね。1回崩れてしまうと、こうなってしまうんだって。大学選手権の時もチームはいっぱいいっぱいの状態でした。

試合風景

――他の強豪校と比べて何が足りなかったのでしょう?

なんだかんだ言っても、明治大学ラグビー部という金看板がありますよね。明治でラグビーをやっているだけでチヤホヤされるし、ファンも多いし、新聞も取り上げてくれるし......そういうことに惑わされてしまっていた選手がけっこういましたね。Aチームでも紫紺のジャージを着ただけで満足してしまっている選手がいて、全員が一丸となって何が何でも優勝するというハングリー精神はなかったですね。

――その状況で河津選手はどうやってモチベーションを保とうとしたんですか?

自分が2年生の時に、兄貴が関東学院で全国優勝しているんですよ。それを見ているから感じたんでしょうけど、絶対優勝したいという思いが切れることはなかったのでモチベーションが下がる事はなかったですね。

――ただ試合出場は4年生からですね

そうですね。3年間出られませんでしたね。活躍すれば試合に出られるとかそんなことばかり思ってましたけど、完全にはき違えていました。4年生になってベクトルを自分に向けてもっとレベルアップしなければと考え直してから、出られるようになっていきました。

――何か変わるきっかけがあったのですか?

後輩から「がんばってダメなら才能がないんだから諦めなよ」って言われてしまったり、合宿でCチームに落ちて悩んでいた時に兄貴から電話が来て「がんばれとは言わないけど、お前は俺の弟なんだから俺ができてお前にできないことはない。やれるんだからやれよ」って言われて、やれることは貪欲にやろうと気持ちを入れ替えました。

――明治での4年間を振り返ると

チームとしては苦しい時期でしたけど、先輩後輩にも恵まれました。寮に入って一緒に生活してましたし、思い入れは強いですよ。そして、紫紺のジャージは一番の誇りですね。今でも後輩が着ているのを見ると、着たいなぁと思いますから。

スリリングに敵を欺くプレーを見て欲しい

――NTT入部のいきさつは?

関東に残りたかったというのがありましたね。兄貴も、大学の同期もたくさんいましたし。それで明治の先輩に相談をして、ビデオを見てもらって話が進んだ感じですね。

――入部2年目でバイスキャプテンになった感想は?

本当のことをいうと「マジかよ、俺かよ!」と思いました。最初メールが来てしばらく考えている間に監督から電話が来て「やります」って答えたんですけど、いざ覚悟を決めるまでには時間がかかりましたね。

――指名された理由は何だと思いますか

多分僕を選んだ理由は、毎年いいところまで行っているけど勝てなかったので、何かを変えたかったじゃないかと思っています。

――前半戦が終わって首位ですが

勝ち点5の5連勝は最低限のノルマだと思ってましたから、首位を意識するというのは全くないですね。

――ただ、ここ2試合続けて苦戦しましたね

モチベーションが低かったのは釜石戦。明治安田生命戦はモチベーションが低かったわけじゃなかったです。試合をやっている時も負ける気はしなかったですけど、向こうのプレッシャーを感じて上手く対応できなかった部分がありましたし、相手の出来もよかったと思います。

スリリングに敵を欺くプレーを見て欲しい

――BK陣の課題はありますか?

大きな修正点というのはありませんが、いろいろ細かい約束ごとやコミュニケーションなど小さなところを微調整していく必要があります。うちのHB団は、要求が本当に多いので嬉しいですね。

――嬉しいというのは?

ちゃんと発言できるのは、自分の考えや理論を持っているということです。そういうのを聞いて納得して合わせてみたり、そこから新しいプレーができたりするので貴重ですね。自分の意見を主張する選手の声はなるべく聞くようにしています。

――そのルーキーのHB団の働きぶりに関して

二人とも才能ありますよ。良夫(君島良夫)については、大学時代も知ってましたからこの位はできると思ってました。拓(友井川拓)は元々ハーフじゃない選手だし、最初はどうかなと思っていましたけど、やらせたら才能も理論もあるのでやりやすいですね。

――河津選手個人としては、前半戦はいかがでしたか?

個人としてはノーコメント。個人的な事はバイスキャプテンになってからはあまり考えないようになりましたね。試合前になれば個人的な課題も頭の中で整理しますけど、今はチームとしての課題や目標、確認事項しか考えてないですね。

――後半戦のポイントとなる試合は?

最初のサントリーフーズ戦ですね。元々強いチームで、BKは速いしセットプレーがもっと良くなれば上位争いをしてもおかしくないと以前から思ってました。その初戦をいい感じで乗り切ることができれば、波に乗れると思います。

――終盤の3試合は、実力的にはどこも紙一重ですね

僕自身は楽しみですね。強いチームとやりたいですから。強いチームとやって勝ったら初めて評価されると思ってます。

――河津選手の注目して欲しいところは?

僕は相手を欺くのが好きなんですよ。身体が小さいしスピードで相手を振り切るタイプじゃないので、その分敵味方の状況とかタイミングを考えながら相手の裏をかくプレーをしたいので、そこを見て欲しいですね。ステップを切ったりパスを決めるところとか。それに人を生かすところですね。まあ、相手を出し抜くためには何でもしますよ。高校のコーチに言われましたもん、「BKは騙し合いだよ」と。

――今季の個人的な目標は?

セルフコントロールですね。体調管理。去年はモチベーションのコントロールはできたんですけど、学生と社会人では練習量も違ってシーズンに入ると身体が思うように動かないという場面もありました。今年は1試合1試合に向けてトレーニングの強度を考えて、体重を落とさないように最後まで身体をしっかり作っていくのが目標ですね。

――ラグビーを続ける理由は?

「本当に好きな事に理由はない」って高校のコーチは言っていましたけど、僕は本当にラグビーが好きなんです。スリリングで刺激的でアドレナリンも出る反面、頭も使うし、そういう対照的なものが一緒になっているところがいつまでたっても飽きないですね。

――ライバルは?

兄貴。目標というか、早くトップリーグに上がって兄貴にタックルしたいですね。兄貴の存在は大きいです。兄貴がいなければラグビーやってないですから。

――お父さんは、今でも試合を見に来られることはあるんですか?

ほとんど毎試合、大分から見に来ていますよ(苦笑)。

――では最後に、ファンにメッセージを

昨年とは全く違う、生まれ変わったチームになっています。特に、僕を含めて若手の活躍を見てください。基本的に自分は活躍することしか考えていないですから(笑)。とにかく全部勝つので、勝つところを見て欲しいですね。そして絶対優勝します。