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磯田 金吾 Kingo Isoda

バックス・CTB

ShiningArcs設立以前の、NTT東日本ラグビー部からのメンバー。当時とは全く異なる今の環境で思う存分ラグビーに打ち込んでいる。昨シーズンは、トップリーグ公式戦に出場することができなかったが、常に高いモチベーションで練習に打ち込んできた。今シーズン、自身の目標はトップリーグ公式戦出場である。

磯田 金吾

個人技の陸上競技からラグビーの世界へ

――ラグビーを始めたのはいつからですか?

高校1年生の時からです。最初はラグビーをやろうと思っていたわけではありません。僕は中学校の時に陸上部だったんですけど、3年生の進路をどうするかっていう時に本当に何も考えていませんでした。高校の陸上レベルでは自分のスピードだと通用しないなと考えていました。その時期に、たまたま知り合いにラグビーをやっている人がいるというのを聞いて興味を持って、それを陸上部の顧問の先生にポロっと言ったら、その次の週に東京高校のラグビー部のセレクションに連れて行かれました。陸上部でしたからそれなりに足は速かったし、体格も中学生のわりには大きかったので、そのままトントン拍子にその日のうちに「来いよ」と言ってもらえて、それでセレクションに受かって、入部しました。

――陸上部では種目は何をやっていましたか?

短距離です。100メートル走と、あとはちょっと砲丸投げをやっていました。それとリレーもやっていました。

――陸上以外のスポーツは何かやっていましたか?

サッカーと水泳をやっていましたね。水泳は小さい頃からやっていて、サッカーは陸上を始める前の小学生の頃に1年間くらいやっていました。

――陸上の成績は良かったのでしょうか?

僕は墨田区だったんですが、墨田区の連合陸上という公立の学校が集まる大会がありまして、そこで3年生の時に100m走で1位を取りました。

――ラグビーの予備知識もなくセレクションを受けたのでしょうか?

そうですね。ルールもわからないし、試合を見たこともありませんでしたので、ほとんど何もわからずの状態でした。セレクションではとりあえず走って、ラグビーもちょっとやりしました。東京高校って陸上部が全国的に強かったので、最初はまあラグビーがもし駄目だったら、陸上部に入り直して頑張ろうかな、という軽い気持ちだったんですけど、いざ入部してみるとラグビーが面白かったし、途中で辞められるような雰囲気ではありませんでしたので(笑)、そのまま続けました。

――ラグビー部は厳しいところでしたか?

ちょっと恐い雰囲気もありましたが、僕が入った頃はそれほど厳しくありませんでした。先輩の山口(山口泰樹選手)さんや下山さん(下山貴弘・昨年度退団)のころはすごく厳しかったみたいですね。

――以前、下山さんにインタビューした時に、後輩をよく「かわいがって」いたと聞きましたが・・・

僕はほとんど何も無かったです(笑)。ちょっとやんちゃな同期のメンバーは、指導を受けていたみたいですけど。山口さんは一つ上の先輩でしたので、そこまで怖いイメージはありませんでしたが、下山さんは同期からも恐れられているイメージでした。今はすごく優しい人になって、こんな先輩だったっけ?こんなに面白いことを言う人だったっけ?と思うことはありました(笑)。

――ラグビーを始めてみて感想は

高校に入る前に日本選手権や高校全国大会の映像を見ていて、やっぱり怖いイメージがあったんですが、個人競技の陸上と違って皆で一つのボールを追いかけるというのがすごく楽しくて、まさかここまでラグビーを続けるとは思っていなかったです。僕の親もこんなに続けるとは思っていなかったみたいで、高校で終えると思っていたみたいですから。僕にとっては新しいことへの取り組みで新鮮でしたし、ラグビーをやっていて楽しかったですね。

――最初はどこのポジションにつきましたか?

足が速かったので1年生の頃はWTBをやっていました。それで高校2年生になって、一個上の代にCTBの選手がいなかったこともあって、CTBにコンバートされました。3年生の時は、今度はFBの選手がいなくなってしまったので、FBをやっていました。

――大学は法政大学に進学します。経緯を教えてください。

大学は何校からか推薦の話はいただいていたのですが、ちょっと自分が行きたいところじゃなかったんですね。東京高校は目黒高校とよく練習を一緒にしていたんですけど、当時、進路をどうしようか考えていた時に、目黒高校の監督が法政の出身で、「お前まだ決まっていないんだったら法政のセレクション受けてみろよ」と言ってくださって、それで法政のセレクションを受けて、合格して決めました。それまで法政という選択肢は頭に無くて、まだどんな大学かも全くわからない状態でした。 それで入ってみたら結構強いチームだということがわかって(笑)。セレクションを受けた日にちょうどリーグ戦の試合があって、法政は関東学院と試合をしたんですよ。関東学院が強いというのは知っていましたが、その試合で法政が勝ったので、すごいところに来ちゃったんだなとその時思いました。

――実際に入部して大学のレベルに触れてどう思いましたか?

東京高校はFWのチームだったので、パスとかBKらしいスキルの練習ってあんまりしていなかったのですが、大学になると全国から良い選手が集まって、皆ものすごく上手い選手ばかりでしたので、これは頑張らないといけないと思いました。

――何に一番苦労しましたか?

僕の同期で同じポジションに、今はリコーのCTBの金澤(金澤良選手・リコーブラックラムズ)がいたんですけど、すごく上手い選手で、こんな上手い奴と一緒にやってレギュラー取れるのかなと不安に思っていました。けれど、そいつが持っていないところを伸ばせばいい、自分のアピールできるところをしっかりやればいいと思って、タックルや縦への突破などは特に意識してプレーしていました。やっぱり周りの人たちのスキルがすごく高いので、高校の時より更に面白くラグビーをすることが出来ました。

――選手層の厚い大学でレギュラーを争うのは大変だったんじゃないでしょうか。

僕は3年生の時に1本目のメンバーに入ることもありましたが、公式戦の先発メンバーで出場した事は無かったです。リザーブで何回かメンバーに入ったことはありましたけど、それくらいでしたね。やっぱり人数も多かったですし、大変でした。法政はAチーム~Dチームまであるんですけど、4年生の時はレギュラーチームには入れなくて、僕は大体Cチームにいました。人数が多いとレギュラーに選ばれなくて諦めてしまう人がいるんですけれども、4年生がそこで腐ってはいけないし、そんな部分を見せてはいけないと思っていましたので、モチベーションを高めて練習をしていました。

――大学卒業後はNTT東日本に入社します。

ラグビーでどこかに行きたいなという気持ちはありました。就活も自分でやっていましたが、やっぱりそれまでずっとラグビーばっかりやっていたので中々うまくいかないというか、アピール出来るところもラグビーしかありませんでしたので。それで就活も全く決まらなくて、どうしたらいいかわからなかった時期に、NTTに在籍しながら大学に教えに来てくれていた、高校の頃からお世話になっていたコーチに相談しました。その方が「お前のことは昔から知っているし、真面目だし、真剣にラグビーに取り組むのなら」と僕を推してくれたこともあって、それがキッカケになってNTTに入社しました。

――NTT東日本に入団されて、どんなチームだと思いましたか?

僕がいた頃の法政は、そんなにFWが強いチームじゃなかったんですね。でもNTT東日本には、馬屋原さんとか大沼さんとか体格の良いFWが多くいたので、物凄くラインアウトが上手く、スクラムも強かったので、FWのセットプレーが安定しているとこんなにラグビーって違うんだなと思いました。

ベテランだけどこんなにやっているんだ、というところを若手に見せたい。

――2007年にShiningArcsになってからは周りの環境もすごく変わってきたと思います。

僕が入社した頃は、毎月部費を払って、その中から遠征の費用を出したり、練習着やテーピングテープなどを購入していました。遠征も夏休みを利用して自腹で行っていたりしましたので、今とは全く違う環境でラグビーをしていました。今は練習着も支給してもらってこんなに良いグラウンドがあるのですが、当時はトップリーグでプレーが出来るとは正直思っていませんでした。

――チームが強化を始めたことに伴って、レギュラー争いも厳しくなってきますね。

CTBには、J・Pネルやクレイグ・ウイングがいたり、以前にはティム・レネベがいたり、タイ・グラッシー等すごい外国人選手がいました。だから、自分は試合に出られないかもしれないと思っていましたが、練習からしっかりやり続けていれば、先発出場じゃなくてもいつかはチャンスが巡ってくると思って、常にモチベーションを保ちながら練習をしていました。僕はどちらかと言うとレギュラーの選手が怪我した時に代わりの選手として出場することが多かったので、例え交代出場をしてもチームのレベルを落とさないでしっかりと穴埋めが出来るように、パスやタックルのスキルを磨く努力をしていました。

――去年はサテライトリーグに出場していました。昨シーズンを振り返って思うことは?

一昨年にサテライトリーグが始まって、サントリーや三洋と試合をした時はボロ負けだったんですけど、去年対戦してみると、そんなに差を感じませんでした。チーム全体のレベルが上がっているし、差が埋まっていることが実感できました。僕はトップリーグには出場していませんが、自分の実力やスキルも上がったんじゃないかな、という自信にもなりました。

――一昨年に比べてからどこが変わったのでしょうか?

やっぱり僕らはトップリーグで戦うチームなので、トップリーグの試合に出ていなくても、自分もみんなと同じ質の練習しているので、試合の感覚は分かるようになるんですね。それに、やっぱりトップリーグに上がったからには試合に出たいという気持ちもありますし、その気持ちをアピールする場面がサテライトしかないので、みんなも気持ちが入っていたということもあると思います。一昨年にボロ負けをして悔しい気持ちもあったので、そういう思いも影響していると思います。

――現在29歳ですが、もうベテラン選手と呼ばれる年齢になりますね。

もう次で30歳。ベテランに足を踏み込んだ感じですね(笑)。自分では、まだベテランだと思っていなくて、入社した時からいる選手もいるので、自分がベテランになっている実感が無いです。でも今年入って来た人は、やっぱり僕のことをベテラン選手だと思っていると思うのですが、あまり年の差を感じさせないように、若手みたいな感じで練習に入っていったり、チームの雰囲気を上げたりしています。「ベテランとして」じゃなくて、「ベテランだけどあんなにやっているんだ」と、「だから俺らもやらなきゃいけないな」という風に意識が変わってくれたらと思っています。

――今年の目標を教えてください。

個人としては、トップリーグの試合にまだ出ていないので、試合に出たいですね。
チームとしては去年よりいい成績を残して、入れ替え戦じゃなくもっと上位に行きたいですね。