I.業績の概況

(1)市場環境および事業基盤の変化

世界の経済は、一部新興国での景気の減速が見られるものの、米国市場が堅調な回復を見せるとともに、欧州の景気が底をうち、日本の景気も回復に向かいつつあるなど、全体的に回復傾向にあります。このような経済情勢のもと、世界の多くの企業が、競争力のさらなる強化を図るとともに、新市場への参入や新たな成長分野への投資など、積極的な経営を進めつつあり、そのような経営を支える柔軟かつ強固なICT基盤が求められています。

(2)経営概況

当社は、このような経営環境の激しい変化を踏まえ、2011年に新たな事業ビジョン「ビジョン2015」を策定し、「Global ICT Partner」というスローガンのもと、2015年度に連結収益1.5兆円以上、グローバル売上高2倍以上(2010年度比)を目標指標としてグループトータルでの成長を目指すこととしました。2013年度は、「ビジョン2015」達成に向けた事業構造の転換と成長を加速する年と位置付け、「Global Cloud Vision 2013」のもと、グローバル、クラウドといった成長事業をしっかりと軌道に乗せていくことを目指してきました。

まず、サービスにおいては、グローバルシームレスなサービスの展開、サービスラインアップの拡充を図りました。各事業分野別の主な取り組みは以下のとおりです。

<各事業分野別の取り組み>

○クラウド基盤:

プライベートクラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」では、ネットワーク仮想化技術を活用して、お客さまオンプレミス環境の円滑なクラウド化を支援するクラウドマイグレーションサービスを2013年6月に世界で初めて提供開始し、10月にはデータベースのクラスタ構成や高速ストレージなどのお客さま基幹システムのクラウド化に求められる機能・性能を大幅に強化しました。また、オーストラリアとドイツの2拠点を新たに加えて、世界9カ国/地域・11拠点へ提供エリアを拡大しました。パブリッククラウドサービス「Bizホスティング Cloudn」では、高いセキュリティと膨大なアクセスが求められるECサイトなどに対応するため、2014年1月に「Compute(VPCタイプ)」の提供を開始しました。

データセンターサービスでは、グローバルレベルでのサービス品質共通化、サービスレベルのさらなる向上を目指して創設した「Nexcenter」ブランドのもと、2013年4月に「東京第6データセンター」、5月に「香港 ファイナンシャル データセンター」、「イギリス スラウ 2 データセンター」、2014年3月に「インド バンガロール 2 データセンター」の提供を開始しました。加えて、2014年1月に米国のRagingWire Data Centers社を買収するなど、国内外のデータセンターを大幅に拡充しました。

○データネットワーク:

2013年4月に提供開始した「OCN モバイル エントリー d LTE 980」を、通信容量や速度の異なる5つのコースを揃えたNTTドコモのLTE対応モバイルデータ通信サービス「OCN モバイル ONE」として2013年8月にリニューアルするとともに、お客さまがより身近にお求めやすくなるよう、コンビニエンスストアでの販売を国内で初めて2013年12月に開始、さらに自宅でも外出先でもお得にインターネットをお楽しみいただけるよう「OCN光サービス」と「OCNモバイルONE」のお得なセット割引「OCN光モバイル割」を2014年3月に開始するなど、お客さまの声にお応えするサービスを強化しました。

また、オペレーションの統合による事業の効率化や、ネットワーク仮想化技術を活用したサービスの拡充を図るため、マネージドサービスや仮想化技術に強みを持つ、米国のVirtela Technology Services社を2014年1月に買収し、企業向けネットワークサービス「Arcstar Universal One」の提供エリアも160カ国/地域から196カ国/地域へと拡大しました。

さらに、高品質で信頼性の高いIPバックボーンに対するニーズに応えるため、国際インターネット接続サービス「グローバルIPネットワーク」の新たな接続拠点をインドネシアのジャカルタなど4ヶ国6都市に開設しました。

○ボイスコミュニケーション:

法人のお客さま向けには、業務用の電話帳をクラウド上で管理できる「Web電話帳」機能を、2013年4月は「Arcstar UCaaS」にて、2013年10月は「050 plus for Biz」にて、それぞれ提供開始しました。また、個人のお客さま向けには、050IP電話アプリ「050 plus」において、050 plus同士でテキストメッセージをやりとりできる機能や、通話相手に聞こえる送話音量を自動調整する機能を追加し、より使いやすいサービスを目指した機能拡充・品質改善を図りました。さらに、2014年2月に「Arcstar UCaaS」の新たなプラットフォーム(通信設備)を欧州および米国に開設し、低遅延で信頼性の高いコミュニケーションサービスをグローバルかつスピーディに提供する基盤を構築しました。

また、会議系サービスでグローバルな顧客基盤と対応力を持つ、フランスのArkadin International社を2014年1月に買収し、会議系サービスの機能拡充や提供国の拡大を加速しました。

○アプリケーション&コンテンツ:

企業の働き方改革を支援するクラウド型サービスの拡充として、クラウド型メールサービス「Bizメール」において、モバイル機器による外出先からセキュアにメール利用できる環境やスケジューラーとの連携、社内外との連携機能のオプション機能を追加するとともに、2013年10月には手軽な映像コンテンツ作成とセキュアな共有を可能とする「Bizビデオシェア」、2013年12月には企業内のID・パスワードを一括管理可能とする「Bizパスワード」や、社内外のコミュニケーション活性化およびプロジェクト管理の効率化に最適な企業向けSNS 「Bizグループワーク」の提供を開始しました。 

また、「Bizメール」の海外での販売を2014年3月から台湾で開始しました。一方、個人のお客さま向けには、日本最大級の無料オンライン家計簿サービス「OCN家計簿」にセキュリティと使い勝手を高める多数の新機能を追加し、「Kakeibon(カケイボエヌ)」として2013年12月に提供を開始しました。また、新たな事業領域としてクラウド型日本語教育サービス「Visual Learning .Japanese」を2013年10月に開始するなど、新たな事業分野への取り組みも積極的に推進しました。

○ソリューション:

クラウド化に向けたシステムコンサルティングから設計・構築・システム移行までワンストップで提供する、クラウドマイグレーションサービスにおいて、クラウドサービス上でERPパッケージを導入する基幹系システムソリューションを国内外で提供するなど、サービスの高度化とグローバル化を積極的に推進しました。

また、提供中だったセキュリティサービスを新たなグローバル統一ブランド「WideAngle(ワイドアングル)」としてリニューアルし、2013年6月より提供開始しました。あわせて、NTT Comグループのセキュリティ事業をグローバルシームレスに拡充するため、Integralisグループの社名をNTT Com Securityに変更しました。

セールスにおいては、グローバルアカウントマネジメントシステム(GAMS)により、世界各国のGlobal Account Manager(GAM)とNational Account Manager(NAM)が連携して、グローバルにビジネスを展開しているお客さま企業の課題解決に向け、グローバル一体の取り組みを加速しました。GAM・NAMによるアカウントプランの高度化などを目的としたGlobal One Meetingの定期的な開催や全世界統一の営業支援システム(SFA)を活用した活発なコミュニケーションに基づいた営業展開により、大型案件の受注実績を着実に伸ばしてきました。

オペレーションにおいては、当社の業務のみならず、NTT America社やNTT Europe社のサービスオペレーション業務などを、NTT Comグループ会社であるEmerio Globe Soft社やNetmagic Solutions社へオフショア化するなど、標準化・自動化を推進し、グループ全体として最適化に向けた取り組みを加速しました。

また、グローバルシームレスなマネジメントを推進するため、ICTシステムでは、グローバル共通のERPシステムを構築し、2013年10月よりNTT Singapore社にてパイロット導入を開始するとともに、会計・調達などの業務プロセスのグローバルでの標準化およびICTシステムの統合を推進しました。さらに調達においては、グローバル一括調達によるレバレッジを効かせた価格低減などによる競争力の強化を図りました。また人材においては、外国籍社員の採用を継続し、新卒採用を含めたトレイニーを拡大するなど、グローバル人材の育成に取り組みました。

セキュリティ管理においては、全社ICTシステムの総点検を実施し、ソフトウェア脆弱性への対応や、統合リスクマネジメントサービス「WideAngle」の全社ICTシステムへの適用を進め、セキュリティリスク低減策を講じるとともに、脆弱性判定情報の配信プラットフォーム(ISMP)を利用した全社ICTシステムの一元管理による、インシデント発生時の対応プロセスの整備を図るなど、セキュリティリスクマネジメントレベルの向上を図りました。

当事業年度の、グローバルシームレスなサービスやセールスの展開、オペレーションの最適化などの進展などは、アナリストによるベンダー比較レポートにおいても高い評価の獲得につながりました。具体的には、米ガートナー社のグローバル通信事業者評価レポートや、米IDC社のアジア太平洋地域のクラウド・DCサービスを評価するレポートにおいて、「リーダー」に位置付けられております。

(3)経営成績

NTTコミュニケーションズ株式会社単体の営業収益については、クラウド基盤収入は対前年比109億円増(+26.2%)の529億円、ソリューション収入は対前年比231億円増(+18.1%)の1,506億円と増収の事業分野がある一方で、データネットワーク収入は対前年比▲121億円減(▲3.0%)の3,915億円、ボイスコミュニケーション収入は対前年比▲216億円減(▲6.8%)の2,964億円となりました。以上の結果、営業収益全体としては、対前年比▲7億円減(▲0.1%)の9,440億円となりました。

次に、営業費用については、ソリューション収入に伴い経費が対前年比254億円増(+6.3%)の4,260億円となりました。また、ボイスコミュニケーション収入の減などの影響により通信設備使用料が対前年比▲93億円減(▲4.4%)の2,041億円となりました。以上の結果、営業費用全体としては、対前年比38億円増(+0.5%)の8,305億円となりました。

これにより、営業利益については、対前年比▲46億円減(▲4.0%)の1,134億円となりました。当期純利益については、特別利益として不動産の売却益により161億円、特別損失として海外子会社の株式評価損など60億円を計上した結果、対前年比236億円増(+36.2%)の889億円となりました。

なおNTTコミュニケーションズグループ全体では、営業収益については、海外子会社の好調に加え、NTTコミュニケーションズ単体の減収幅が縮小したため、対前年比357億円増(+3.0%)の12,304億円と、6期ぶりの増収となりました。また営業利益は対前年比116億円増(+9.9%)の1,279億円となりました。