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2004年2月10日 日経新聞掲載
阪神・淡路大震災以降、住民の生命と財産を守るために、それぞれの自治体は防災の強化を進めています。そんな中、人口約39万人を抱える藤沢市は、最新のITを駆使した総合防災センター開設を目指し、自治体IT事業として国内初となる「PFI※的手法」を用いました。NTTコミュニケーションズは、災害情報の一元管理・共有を可能にする防災システムの構築・保守・運用のみならず、施設そのものの設計から建設にいたるまで各業者を通じてトータルに提供。機動性の良さを発揮して、全国でも類をみない高度な防災体制を実現させました。
※PFI(Private Finance Initiative)とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の賃金、経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい方法です。
神奈川県藤沢市では、1999年に消防庁舎の建て替えを機に、総合的な災害対策を実現するための手法を検討。総合防災センターの設立を決定しました。そして、IT分野において、当時としてはまだ日本ではモデルケースがなかったPFI(Private Finance Initiative)を利用して、民間企業の資金やノウハウを活用した公共施設作りに着手しました。その結果、NTTコミュニケーションズの持つ高い技術力と総合力を活かした、戦略的なアウトソーシングが実現したのです。

前例のないPFI的手法で総合的な災害対策
低いイニシャルコストで最先端の技術を導入

 藤沢市は、約39万人が居住する湘南地方の中心的な都市である。同市では市民が一生安心して暮らしていける街作りを進めるためには、住民の安全を確保することが不可欠と判断、総合的な防災拠点として防災センターを構築する計画を1999年より進めていた。
 その背景には、阪神・淡路大震災のような、死者が約6,400人という戦後最大の災害を二度と起こしたくないという切実な願いがあった。阪神・淡路大震災と同規模の地震が発生した場合、総合的な災害対策を実現できなければ、被害が時間の経過と共に拡大してしまう。特に藤沢市は、東海地震のような大規模な震災が起きる可能性が指摘されている地区だ。このため、地震をはじめとする大規模災害への対策を重要視していたのだ。
 ただ、総合的な防災を実現するためには、最新システムの導入やシステム間の連携等、IT技術を効果的に活用することも必要となる。また、災害時でも災害対策本部として安定的に機能する、免震設備や自家発電施設など、様々な機能を建物に付加することも必要となる。だが、自治体の財政事情から、数十億に上るイニシャルコストは、多大な負担となる。
 そこで藤沢市では、当初海外で注目を集めていた民間の資金とノウハウを活用するPFI(Private Finance Initiative)を用いて、総合防災センターの設立に取り組んだのである。当時の日本はPFI法も制定されていなかったため、非常に斬新な取り組みだったと言えるだろう。

設計から運用までをトータルでマネジメント
先進性が全国の各自治体から注目を集める

 藤沢市では、前例のないPFI事業を実行するにあたり、試行錯誤を繰り返した。例えば、導入システムの概要や調達条件を記述したRFP(Request For Proposal)の作成や、民間企業とのリスク分担の明確化などについては、地元の有識者や専門の大学教授などを招き、研究を重ねていった。設計から運用までトータルでアウトソースするのが有効と判断し、それを前提にPFI事業を実行に移したのだ。そして、様々なベンダーの中から、NTTコミュニケーションズの総合力が評価されて、事業者として選定された。
 NTTコミュニケーションズ e-ガバメント営業部 課長の渡部洋史は、「当社も、阪神・淡路大震災の被災経験があります。また、ライフラインを支える通信キャリアとして、災害対策に関する様々なノウハウを蓄積して参りました。それらのノウハウを活かし、当社の総合防災ソリューションである被害状況把握システム等、総合的な災害システムをご提案したところ、藤沢市様のご意向と一致したのです。」と選定された理由を語る。
 NTTコミュニケーションズは、藤沢市に選定されたことで、建物とシステムをトータルサービスとして提供するためのマネジメント、システムインテグレーション、事業オペレーションを行う立場となり、建物やネットワークインフラ、各種消防・防災システムの機器、アプリケーションに至るまで一元的に提供したのである。施設の設計や建設、ファシリティー、機器などは、パートナーに各分野のスペシャリストを採用し、総合防災センターの完成度を高めた。
 NTTコミュニケーションズの収益モデルとしては、イニシャルコストと運用管理を20年間の使用料として回収するものであった。いわば先行投資型のビジネスモデルであり、財政にも負担が少ない方式として、全国の各自治体からも注目を集める結果となった。

藤沢市の前例のない画期的な取り組みを
NTTコミュニケーションズがノウハウを活かしサポート

 藤沢市は、総合的な災害対策を実現するため、従来では難しかった組織の連携を実行した。というのも、大規模災害に対して迅速かつ的確な対策を施すためには、市役所全体が同じ指揮系統の元で動く必要がある。市民の安全を第一に考えれば、縦割りという既成概念を払拭する必要があったのだ。
「藤沢市様は、市長をはじめ職員の総意によって、災害発生時にはフラットに連携できる仕組みを作られました。」と、渡部は藤沢市の画期的な取り組みを評価する。
 このような経緯で設立された総合防災センターは、震度6の地震が起きても、建物や内部に損傷を受けない免震設備のほか、災害時に電力会社からの送電が停止してもシステムが稼働できる自家発電設備や太陽光発電設備を導入した。
 さらに、大規模災害が発生すると様々なシステムが連携する。例えば、大地震が発生した際には、市内14箇所に設置された震度計より、地震観測収集システムが震度情報の収集を行い、観測情報を指定の端末に自動的に表示する。地震観測収集システムと被害予測システムとの連携により、地震被害予測を行い被災直後の対策に役立てることが可能である。また、地震観測収集システムと危機管理システムとの連携により、地震規模に応じた各部課の災害応急対策マニュアルを自動表示することも可能である。その他、被災後、地域ごとの被害状況を把握するため、市民から市の災害対策本部と建設部門に入った通報情報や各地域に派遣した職員からの被害状況報告、消防指令台システムからの情報を収集、一元的に管理し、災害対策本部にて災害対策の意思決定に役立てることのできる被害状況把握システムも用意されている。

システムだけでなく人事面でも効果を発揮
蓄積したノウハウで新たなソリューションを展開

 一方、総合防災センターは、人事面でも大きな効果を発揮した。消防と防災という2つの指揮系統が同じ建物内で待機することで、日常的にフェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションが行えるようになった。これまでになかった情報の交換や共有を行え、連絡が密に取れるようになったのだ。
 さらに、大規模災害への対策だけでなく、火事などの災害が発生した際にも対応が迅速になった。例えば、総合防災センターでは、119番通報を受信すると自動的に火災現場を共通地図システム上に表示するとともに、高所監視カメラによって火災現場を100インチのスクリーンに映し出す。また、消防車や救急車出動の本指令を出す前に予告指令を出すことにより、火災現状到着時間の短縮も実現している。
 渡部は、「NTTコミュニケーションズでは、総合防災センターのシステムを構築する上で、災害時の情報連携のプロセスをより実践に近い形でシステムに反映することに努めました。藤沢市との情報共有を積極的に行った結果、ほかの自治体はもちろん、民間にも活かせる様々な総合防災ソリューションのノウハウを蓄積することができました。」と今回の成果を語る。
 NTTコミュニケーションズは、これまで蓄積したノウハウや実績を活かし、災害対策を行う人の動きや考えをITでサポートする、総合防災ソリューションを充実させていく。そして、今回の藤沢市のような、リスクマネジメントを含むセキュリティ対策にも積極的に取り組んでいく方針だ。