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Vol.4


< その3 >

ICTによるリスクに対処しつつ、
事業継続管理にICTを有効活用

奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授 山口 英 氏情報システムがビジネスモデルそのものを表す現在、ICTは企業経営に不可欠となっている。ますます経営と密接になり、複雑化する情報システムが内包するリスクへ、適切に対処することが求められる。また、社会のICT化が進むにつれて、「企業は新たなリスクに対処する必要が生じてきました」と奈良先端科学技術大学院大学の山口英氏は話す。事業継続管理へのICT利活用のポイントや注意点を山口氏に聞いた。



ICT分野と他分野の専門知識を兼ね備えた人材が求められる

-今やICTは企業経営に不可欠なインフラとなっています。事業継続管理の観点において、ICTの構築・運用や利活用をどう考慮していくべきでしょうか。

山口

 情報システムは企業のビジネスノウハウを体現しています。しかも、取引や決済などが情報システム上で行われる「財直結型」になっています。一方、複雑化も進んでいます。これらの現状認識がベースになります。
 まず言えるのは、経営者にはビジネスと情報システムの関係の把握が欠かせないことです。情報システムがビジネスそのものと化している現在、事業を継続するために情報システムのリスクを分析して、どのような対策を講じ、それに対してどれだけ投資するかは、経営判断になりますから。

-情報システムのリスク管理は情報システム部門に任せきりではなく、経営者も積極的に関与していくべきなのですね。

山口

 その通りです。そして、情報システムは社会的リスクを負うようになっている点にも注意しなければなりません。たとえば、債権発生に認められるデータをきちんと識別して残しておくなど、必要とされる情報システムの実現には、もはやICT分野に加え、他分野の専門知識も備えた人材が求められる時代なのです。
 また、情報システムが複雑化し専門性が飛躍的に高まったなか、アウトソースと内製化のバランスという問題もあります。安易にアウトソースして問題が多発する場合もあれば、すべて内製化したせいでコストが膨れ上がる場合もあります。双方のリスクを加味し、どうバランスを取っていくべきか、現場と共に経営者が熟考していかなければなりません。

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ICTを利活用した業務の履歴保存でリスク管理

-加速するICTの発達によって、企業は新たなリスクに晒されるようになりました。

奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授 山口 英 氏

山口

 今はブログや掲示板などによって、個人がメッセージを発信しやすくなりました。そのため、個人のクレームなどはダイレクトに世の中へ発信され、瞬時に広がります。一方、流言飛語が飛び交いやすく、社会も流言飛語に対して過剰反応気味となっています。ひとつの失敗が、企業の事業全体に甚大な影響を与える危険性が、以前よりも飛躍的に高まったと言えるでしょう。経営者は事業継続管理を考える上で、このような世の中の変化や問題を念頭に置く必要が生じるようになりました。

-ICTを有効活用し、事業継続性をより高めるにはどうすればよいのでしょうか?

山口

 幾通りか考えられますが、基本となるのが業務における各種履歴の記録です。たとえば証券会社では、誰が誰宛にどのような内容のメールを送ったのかなど、詳細な記録を残しています。不正を抑制すると同時に、不祥事などが起こった際は原因の特定や経緯の究明に用いるといったリスク管理を行っています。
 現在はICTが発達したおかげで、証券以外の企業でも、業務の履歴をデジタルデータとして、容易かつ低コストで記録可能となっています。これは監視という意味合いではなく、企業文化や風土の形成として展開されるべきです。経営者はこのような視点や考え方のもとICTを利活用し、危機管理や事業継続管理のさらなる向上を図ることが望まれます。


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奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授 山口 英 氏

山口 英 氏

奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授

大阪大学情報処理教育センター助手、奈良先端科学技術大学院大学情報科学センター助教授、奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授等を経て、2000年より奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科教授に就任。2004年4月より初代内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)情報セキュリティ補佐官、2006年4月より内閣官房電子政府推進管理補佐官を兼務。




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