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Vol.4


< その1 >

事業継続管理の適切な実践には
ステークホルダーの合意形成が不可欠

奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授 山口 英 氏政府による事業継続計画(BCP)のガイドライン発表なども追い風となり、現在、企業の事業継続への関心が高まっている。だが、奈良先端科学技術大学院大学の山口英氏は、企業の事業継続に対する取り組みの現状に対して、「形式を整えただけの事例が散見されます」と警鐘を鳴らす。企業は危機管理および事業継続管理(BCM)を実践する上で、どのような考えをベースに、どう取り組めばよいのか。山口氏に聞いた。



合理的に合意形成できるプロセスの構築が必要

-日本企業における危機管理、事業継続管理(BCM)の現状をどう評価されていますか。

山口

 危機管理および事業継続管理は、企業にとって必須と言うべき経営課題です。企業の総合力を判明できる尺度の1つなのですが、残念ながら現状を非常に危惧しています。と申しますのは、形式を整えただけの事例が多く見られるからです。 危機管理および事業継続管理は大前提として、何のために誰のために実施するのかを明確にしておくことが非常に重要です。目的が不明瞭なまま、事業継続計画(BCP)を作成したり、ソリューションやサービスを導入したりしても、ISO9000やISO14000やISMSなどに関して一部企業に見られるように、「取得・準拠しただけ」という実のない結果に終わってしまうでしょう。

-目的を明確化するには、どのようなアプローチが必要でしょうか。

山口

 株主や顧客、パートナー、地域社会など、自社のステークホルダーすべてから、リスクをどう捉え、どのような考えで対処していくかの合意が得られれば、目的を明確化できます。そのためには、合理的に合意形成できるプロセスをきちんと作ることが大切です。
 このような合意形成は事業継続管理の基盤であり、実はガバナンスそのものにあたります。そして、CSR(企業の社会的責任)や内部統制、新会社法などへの対応の基盤にもなります。事業継続管理も、CSRや内部統制なども、ガバナンスの切り口の1つなのです。ゆえに、合意形成が不十分では、何に取り組んでも失敗してしまうでしょう。

リスク評価

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長期的投資として適切に評価

-ステークホルダーとの合意形成は、定期的な見直しが必要になりますよね。

山口

 はい、形式だけ整えて終わりにしないためにも、継続的な見直し、そして改善が欠かせません。リスクは日々変動しますので、BCPもその変動に応じて変えていく必要があります。しかし現状では、見直しも改善もほとんど行われていないと言えます。
 日本では、ものづくりの分野において、PDCAサイクルによる継続的な見直しと改善が盛んに行われています。このような素晴らしい文化を持っているのですから、事業継続管理にも有効活用していくべきと考えています。

-目的を明確化した後、事業継続管理を適切に進めていくには、経営者は何に留意すべきでしょうか。

山口

さまざまな要素が考えられますが、まず挙げられるのがコストに対する考え方です。事業継続管理への投資は、想定した危機に実際に直面しない限り、効果は直接見えないものです。長期的投資として、そのリターンや社会性をいかに評価するかが大切です。適切な評価ができなければ、実際に災害が発生した際に言い訳できる程度の投資しかしないなど、形だけの対策になってしまいます。 また、コンサルタントを採用する場合は、製品やサービスを売るだけのコンサルタントではなく、企業の内部環境と外部環境を適確に把握した上で、適切な方法論で支援してくれるコンサルタントを選ぶことです。 その上で、事業継続管理の施策が普段のオペレーションに無理なく埋め込まれるようにすることです。でなければ、実効性は期待できません。

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奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授 山口 英 氏

山口 英 氏

奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授

大阪大学情報処理教育センター助手、奈良先端科学技術大学院大学情報科学センター助教授、奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授等を経て、2000年より奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科教授に就任。2004年4月より初代内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)情報セキュリティ補佐官、2006年4月より内閣官房電子政府推進管理補佐官を兼務。




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