近年、企業の製品やサービスの品質問題が報じられる中で、日本を代表する企業を目にすることがある。その一方で、優れた製品を提供し続け、業績を伸ばす企業も多い。こうした違いの背景は日本企業の業務品質に格差が生まれていることにある。この10年余り、戦略を持たず、リストラとコスト削減だけで生き残りを図ってきた企業は現場が弱まり、業務品質の劣化を招いている。「エクセレントカンパニーといわれた企業でも、そうした状態が続けば、ブランド価値を喪失し、一気に崩壊する可能性がある」とローランド・ベルガー会長の遠藤 功氏は警鐘を鳴らす。業務品質を高め、付加価値の高い製品やサービスを生み出すには、どこから始めるべきなのか。遠藤氏に聞いた。
企業の業務品質=現場品質に格差が生まれている
――今、日本企業が抱える最大の課題は何なのでしょうか。
遠藤 最近、日本を代表する企業で製品の品質問題が続発しています。そうした企業は、この10年余り、明確な戦略を持たずに、リストラとコスト削減を追求、非正社員化とアウトソーシング、乱暴な成果主義の導入などによって、生き残りを図ろうとしてきました。その結果、現場力が徐々に弱くなり、その矛盾が品質問題として今、噴出しているのです。現場が強い企業とそうでない企業で業務品質に明確な格差が生まれている。これが最大の問題です。
――日本企業は品質が優れていると自他共に認めてきたわけですが。
遠藤 製造業であれ、サービス業であれ、日本企業の生命線は品質です。いくらコストダウンを図っても、所詮中国やインドにはかないません。品質が悪くなれば、生き残る術はないのです。いかに、付加価値の高い製品やサービスを提供していくか。これがカギです。そのためには、現場を徹底的に重視することです。経営は現場をコストセンターだと考えて、給料を引き下げ、非正社員化してきました。それを根底から改め、現場はバリューセンターだと位置付け、社員・非正社員を問わず、現場の生み出す価値を極大化することに目を向けるべきです。

人づくりのプログラムを見直し、教育に投資し直すことからの再出発を
――人材を生かすためには、人づくりが重要ですね。
遠藤 現在、業務品質が高く、業績のよい企業は継続的に人づくりに大きな投資をしています。こうした企業は自前で教材を準備し、手作りで教育をしています。ケーススタディも自分の会社で起きたことです。そうすれば、自分がその立場に立たされたら、どうしようと真剣に考えるし、仕事の上でも役に立ちます。とても手間がかかりますが、そこまでやることで、人は育ち、業務品質も向上するのです。社員に対する教育を外部の研修専門会社に丸投げしたのでは人は育ちません。
――「継続は力なり」とはいいますが、実際にそれを続けるのは難しいと思いますが。
遠藤 そうした企業には、やり続けることで色々なことを成し遂げた、「よいお手本」が社内にいます。実際にやっている人が身近にいて、その取り組みが成功すれば、皆納得し、その人を真似ようとします。創業時からの夢だったジェット機開発に、創業者亡き後も取り組み続け、40年余を経てついに事業化に動き出した自動車メーカーがあります。携わってきた技術者は社内で批判されたこともあったかもしれませんが、やり続けたのです。創業者の夢や志を継ごうという社員がおり、それを認め、粘り強くやり続ける企業文化が根付いているのです。それが企業の強さなのです。製品の不良など現場の劣化が表面化した時に、それを真正面から受け止め、経営問題として手を打たずにいると、どんなエクセレントカンパニーでも、ブランド価値を失い、一気に崩壊する危険性があることを心すべきだと思います。
ICTトレンド解説 第二回INDEX
その1 |
品質は日本企業の生命線 現場に軸足を据え、人づくりで業務品質向上を! |
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