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ネクスト・メディアとは何か 〜ネット&ライフスタイルの新時代〜 従来のメディアやビジネスに影響を与えながら、日々成長と変化を続けていくネットの世界。その現状と将来の展望を紐解いていきます。 powered by WIRED VISION

テーマ3 インターネットの本当の意味を考える
第1回 社会インフラとしてのインターネット、
その本当の意味


ここまで、Web2.0 の意味やコンテンツの新しい流通形態など、現在のインターネットで起こっている事象を概観してきました。インターネット自体、単なるツールという捉え方もありますが、インターネットがなければ始まらなかった新しいことがたくさんあるのもまた事実です。

例えば、ネットショップを考えてみると、アマゾンや楽天などに代表される大規模なものから個人のショップまで、誰もがインターネットを使ってモノを売ることができるようになりました。また、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をはじめとするネットコミュニティ、あるいはブログを基点にユーザーが情報を発信し、それが連携しはじめるCGM(コンシューマ・ジェネレーテッド・メディア)なども、インターネットがもたらした大きな成果だと思います。

こういったことを踏まえて、インターネットというものが本当は何のために存在し、我々はこれからどう向き合い使っていくべきなのか、ということをここで少し考えておきたいと思います。


メディアのためのインフラなのか?

「ネットメディア」という言葉をよく目にします。また、この連載の総合タイトルにも「ネクスト・メディア」という言葉が使われています。ニュースや特定テーマのWebサイトとテレビや雑誌などの既存メディアとの間には、広告掲載や読者の獲得などで競合も発生しています。では、インターネットはメディアのためのインフラなのでしょうか?

確かにインターネットには、メディアとして機能する側面があります。ニュースサイトは新聞社・通信社から雑誌社、Web専業のニュースサイト、地域ニュースや特定ジャンルの専門サイトまで、百花繚乱と言って良いような状況です。

とはいえ、インターネットには国境もありませんし、老若男女すべての人々が集まっています。インターネットは、あらゆる専門性を持つ人々が世界中から集まる、人種も言語も地域もすべてを包含した多様なメディアの集合体、という見方ができるわけです。こう考えると、結果的にテレビ以上に「マス」なのがインターネットなのです。しかし、オーディエンス(情報の受け手)がたくさん存在するという一方で、その多様さゆえにメディアとしてのターゲットを明確にしようとするとなかなか難しい、という問題も抱えています。

メディアの機能の一つに「世の中で起こっていることをそのメディアのオーディエンスの属性に合わせて分かりやすく伝える」というものがあると思います。しかし、インターネットは、オーディエンスの属性が多様であるために、特定の利用者をターゲットにして分かりやすく伝える、ということが実はそれほど得意ではないのです。

また、インターネットの特徴の一つである双方向性を生かしたメディアというものも、「炎上」や「荒らし」といった問題を考えると、中途半端な覚悟で始めるわけにはいきませんし、ある種の権威を持とうとしていた従来型のメディア企業にとっては、容易に運営できるものでもありません。

さらに、ブログなどの普及で誰もが容易に情報を発信できるようになったことで、何かが起こったときや何かを知りたいときに、メディアからの情報に頼らなくても、その当事者や関係者、その専門家などが発信している情報を直接手に入れられるようになりました。当然、取材結果を記事にしているメディアの情報よりも、早く、深く、正確な情報が容易に得られるようになりました。

こういった状況を俯瞰して見ると、インターネットが全体としてはメディア的に機能しているという側面はあるものの、そこから得られる情報については、オーディエンスが自分で探し出したうえで、その信頼性を判断しなければならない、という性格を持つに至っていることが分かります。つまり、このサイトさえ見ていれば安心していられる、無条件に信頼できる、ということが言えなくなってきたのです。

「2ちゃんねる」はその好例です。素晴らしい知見や深い情報がある一方で、匿名の雑談や罵倒などもたくさんあり、いわゆる「ノイズの多い状態」になっています。玉石混淆のその中から玉を見つけ出し、その真偽を判断できるだけのリテラシが要求されているのです。

こう考えていくと、インターネットが従来的なメディアのためのインフラとして本当に適しているのか、という疑問が湧いてきます。既存のメディアのサイトよりも、有意義な情報が至るところに存在する。さらに、それを見つけ出して分かりやすく組み合わせた、オーディエンスの手によるサイトが発生し、そっちの方がメディア的な存在として機能する。こういった状況が普通なのが今のインターネットです。同じ「メディア」という言葉を使ってはいても、従来のマスメディアの性格を引きずったままのメディアとはちょっと違ったものとして捉えるべきではないでしょうか。

フィルム、雑誌、テレビ、ネット・・・。情報やコンテンツにとって最適なメディアは何か?(CC)photo by *Solar ikon*
フィルム、雑誌、テレビ、ネット・・・。情報やコンテンツにとって最適なメディアは何か?
(CC)photo by *Solar ikon*

それでは、インターネットの利用シーンをいろいろと考えて、他の何かで代替可能なもの、代替が不可能なもの、ネットでこそ実行すべきもの、ネットの方が向いているもの、ネットには不向きなもの、といったように考えて、どんどん代替可能な用途や不向きな使い方を削ぎ落としていくとどうなるでしょうか?

私は、そうして残ったインターネットのコアなエッセンスは、「『コミュニケーション』と『投資』のためのインフラである」ということではないか、と考えています。

今回から始まるこの連載のテーマ3では、次回以降の3回に分けて、第2回「コミュニケーション」、第3回「投資」、そして、第4回「グローバル経済の中での個人の武器としてのインターネット」、という観点から考えてみたいと思います。「コミュニケーション」では、人と人をつなぐということをネットがどのように助けてくれるのか、という観点から考えます。「投資」では、ネットでの株の売買や商品等の先物取引、FX(外国為替証拠金取引)などが、インターネットの上に成り立っていること、さらに、グローバル経済の神経系としてインターネットが果たしている役割について考えます。最後の回では、「格差」やワーキングプアをもたらす要因の一つとしてのインターネットと、逆にインターネットを武器にすることで誰もがグローバルな経済の中で、何らかの役割を果たしつつ自立していけるのではないか、という可能性について考えます。

まず次回は、メールやチャットなどはもちろんのこと、Webサイトさえもコミュニケーションのために存在するのではないか、という仮定を立てて、コミュニケーション・インフラとしてのインターネット、人と人とをつなぐインターネット、ということから考えてみます。

ワイアード・ビジョン 編集委員 田邊俊雅


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