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テーマ1 Web2.0の次を考える
第1回 Web2.0とは何だったのか?


「Web2.0」という言葉が聞かれるようになってずいぶん経ちました。最近は、ちょっと下火かな、という感じになってきましたが、この連載ではまず、「Web2.0の次」について考えてみたいと思います。でもその前に、Web2.0というのは何だったのか、ということを振り返っておくことには意味がありそうです。


コミュニケーションの中間領域

Web2.0のエッセンスの一つとして、「オープンな情報とクローズドな情報の間には、多様なオープンさの度合いを持った中間領域がアナログ的に広がっている」ということが言えると思います。そして、その中間領域でのコミュニケーションの価値が、これまでよりもぐっと高まってきたのではないでしょうか。

例えば、mixiの日記に書いたことはオープンな情報なのでしょうか?

一口にmixiの日記と言っても、公開範囲について「全体に公開」「友人まで公開」「友人の友人まで公開」という三段階から選ぶことができます。全体に公開という設定にしたとしても、それはmixiの中でしか見えません。mixiのユーザーでない人にその日記のURLを知らせたとしても、その人はその日記を見ることができません。

このように、公開するかしないかという単純な切り分けではなく、自分が所属するコミュニティや利用しているサービスによって、公開範囲をきめ細かく決められ、コミュニケーションの範囲を自由に設定できるようになってきているのです。

メールであっても同じようなことが言えます。ネットショップ等で一般公開用のメールアドレス、mixi用のアドレス、ごく親しい人だけに公開するアドレス、仕事用のアドレス、というように一人でたくさん使い分けるのが普通になってきています。そして、そのアドレスごとに公開する範囲が違っていて、オープンさの度合いによって使い分けているわけです。

Web2.0的なものの代表的な存在であるブログも、こういった構造の中にあります。例えば、影響力のあるブログを執筆する「アルファ・ブロガー」と呼ばれる人々がいます。アルファ・ブロガーの定義はなかなか微妙ですけれど、ここでは、ネットでの出来事やニュースなどをテーマにブログで頻繁に意見やコメントを公開していて、ある程度の固定読者を持っていて知名度がある、としておきます。

このアルファ・ブロガー間のコミュニケーションと、アルファ・ブロガーのブログを愛読している人達(オーディエンス)の間のコミュニケーションは、同じブログを中心にしたコミュニケーションではあっても、その内容はかなり違います。

そして、あるアルファ・ブロガーと別のアルファ・ブロガーのオーディエンスは、重なっている部分もありますが、異なったオーディエンスです。二人のアルファ・ブロガーが何かをコラボレートすると、その異なったオーディエンスの集団が交わる可能性が出てきます。

直接知り合うことはなくても、自分が信頼するアルファ・ブロガーを介して、「信頼できそうな」人と出会うことになるわけです。このオープンとクローズドの中間的な領域のコミュニケーションが、これまで以上に価値を感じさせるようになってきているのです。

ロングテールは誰もが享受できるものではない

Web2.0の代表的な概念であるロングテール理論も提唱されてから既に3年以上が経過。最近では見直しがかかっている。(写真は提唱者のクリス・アーダーソン氏) (CC) photo by edans
Web2.0の代表的な概念であるロングテール理論も提唱されてから既に3年以上が経過。最近では見直しがかかっている。(写真は提唱者のクリス・アーダーソン氏)
(CC) photo by edans
Web2.0の特徴として「ロングテール」ということがよく言われます。しかし、このロングテールという考え方は、最近ではちょっと見直しがかかっています。

まず第一に、長いすそ野をビジネスに生かすには、圧倒的なシェアを持っていることや在庫や設備投資などに耐えるだけの資金的な体力が不可欠であることをネットにかかわる人々が実感し始めたのです。

例えば、オンライン書店のamazonは、創業以来ずっと赤字が続いていました。しかし、それに耐えながら事業展開する中で、ライバルが脱落し、それとともにブランド力も向上してきました。現在では、圧倒的なシェアとブランドです。そうなって初めて、ロングテールに相当する商品による売上が意味を持ってくるのです。

確かにロングテールは、ネットの仕組みを使って既存のマーケティングではすくいきれない部分をビジネスにすることを可能にするものです。しかし、現実のビジネスでは、ロングテールが収益的な意味を持つようになる前に力尽きてしまう場合が多い、ということもまた事実なのです。

次に、メディアのサイトを例に別の観点から考えてみましょう。広告が主たる収入源であるメディアのサイトは、記事へのアクセス数がビジネスのベンチマークです。もちろん、長くメディアを続けることやアーカイブを充実させることは、検索エンジン経由などでの古い記事への導線を確保することになりますから、重要なことではあります。

しかし、記事への実際のアクセス数という意味では、日々新しく公開している記事のほうが2桁も3桁も多いのが現実です。そして、公開直後の山を大きくすれば、つまり面白い記事、話題になるような記事を公開すれば、その記事のすそ野の部分も底上げされるのです。

ロングテールよりも、新しいものが魅力的であることの方が、コストパフォーマンスは良いのではないか、という議論です。Web2.0で言うところのロングテールというものは、メディアにおける過去記事のアーカイブだけに相当するものではないのですが、ある一つの側面を示すモデルだと思います。

Web2.0で相対的に低下した既存の大手メディア

そして、前述のアルファ・ブロガーやアルファ・ブロガーが書くコンテンツ(ブログのエントリ)に比べて、従来の大手メディアの記事の魅力が衰えてきているということが言えるようになったのだと思います。

ブログというシステムは、検索しやすいアーカイブを自動的に作ってくれます。この点で、メディアのサイトと個人のサイトのロングテール的な機能にはほとんど差がなくなり、最初の山の高さ(単純なアクセス数というよりは影響力なども加味した意味で)でアルファ・ブロガーがメディアのサイトを超えるようになってきた、というのが最近の状況だと思います。

テクノロジー(ここではブログ)が、マスメディアと個人をシステム的に同じ条件にしたことで、従来のメディアの「専門家に聞いてきたことを多くの人に分かるような記事にして配信する」という機能が不要になってしまったのです。つまり、メディアが聞きに行くべき専門家が直接ブログで公開している、という状態です。流通などで顕著な「ネットでの中抜き」が、メディアのジャンルでも同じように始まった、と言えるでしょう。

次回は、ブログでのコミュニケーションということについて、アルファ・ブロガーの例なども交えて、もう少し考えてみたいと思います。

ワイアード・ビジョン 編集委員 田邊俊雅


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