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Web 2.0時代のベンチャー企業戦略:
「売上げは後回し」


Web 2.0ベンチャー企業で目立つのが、売上や採算性を求めるのは後回しにして、まず顧客を集めるという方針だ。背景には、オープンソースのツール群や安価なストレージ、ネットワークを駆使することで、企業経営の経費が格段に縮小されたことなどがある。


『Crusher』の共同設立者Philip Bensaid氏は、売上については考えていない。それよりも優れたサービスを築こうと努めており、資金面は何とかなると考えている。 Photo:Phillip Bensaid
『Crusher』の共同設立者Philip Bensaid氏は、売上については考えていない。それよりも優れたサービスを築こうと努めており、資金面は何とかなると考えている。
Photo:Phillip Bensaid
Philip Bensaid氏は、儲けを出すことについてはまったく考えていない。時代の先端を行くWeb 2.0的な、『Evite』と類似のオンライン招待状サービス『Crusher』の共同設立者であるBensaid氏は、少なくとも当分の間は、自らが出資したこの企業を、売上もなく広告もないまま維持しようと決めている。

「魅力的な製品を作ることと、儲けを出すことは連動しない」と、Bensaid氏は言う。同氏は、ビジネスパートナーであるEricson deJesus氏と共にCrusherを設立した。

「消費者向けの製品では、無理に利益をあげようとすることは、構想をゆがめかねないほどの強大な圧力になる。われわれは、製品を発展させるほうに注力するつもりだ。なんといってもそのほうが楽しい」

有料での演奏を依頼されるようになる前に、腕を磨いてファン層を大きくしておきたいと考えるガレージバンドのように、売上を求めるのは後回しにして、まず事業を確立し顧客を集めるという方針をとるWeb 2.0ベンチャー企業が増えており、Crusherもその1つだ。

こうしたベンチャー企業の多くが暗黙のうちにもくろんでいるのが、数年間懸命に活動したのち、大企業によって買収されるのを狙うという戦略だ。最近、米Microsoft社と米Disney社がそれぞれ、多くのベンチャー企業を買収する意向を明らかにした事実を見れば、この戦略の有効性は明らかだ。

企業の目指す方針が「急速な成長」だったドットコム時代の初期とは異なり、自力での成長を目指す現在のベンチャー企業には、忍耐を続ける余裕がある。オープンソースのツール群、ウェブを活用するクラウド・コンピューティング(cloud computing、ネット上に拡散したコンピューティングリソースを使って、情報サービスやアプリケーションサービスを提供するというコンセプトのこと)、安価なストレージ(外部記憶媒体)、ネットワークを駆使するバーチャル・オーガニゼーション(仮想組織:ネットワークによる共同開発・共同製造体制。組織を越えてリソース/サービスをリンクさせること)」などのおかげで、ベンチャー企業は小さな資力でより多くのことができるようになったと説明するのは、ベンチャー投資企業の米Levensohn Venture Partners社で業務執行役員を務めるKeith Benjamin氏だ。

「ドットコム・バブルのときは1000万ドルかかったことが、現在は50万ドルでできる」とBenjamin氏は言う。そして、現在のベンチャー企業が資金を費やすのは、まず製品開発に対してであって、豪華なパーティーや米Herman Miller社のモダンな椅子、スーパーボウルの広告などにではない。

「バブルの時代に企業は、注目を得るためだけに1000万ドルを投じ、その注目が持続するかどうかは気にもしなかった。現在、企業は回転資金を製品開発につぎこんで、製品が広く受け入れられるかどうかを見極めようとする。このためには、ずっと忍耐強くならなければならない」と、Benjamin氏は語る。

事業資金の消費が少ない場合、初期投資家への返済のためにベンチャー企業が新規株式公開(IPO)に依存する必要性は低くなり、最終的に買収されることを期待する戦略への志向が強くなる。

「ベンチャー企業が買収をめざす戦略は、以前より受け入れられやすいものになっている。なぜなら、今はより少ない資金と時間で企業を設立できるからだ。以前は、企業を設立するにはたくさんの資金が必要で、IPO以外の手段では必要額を集めることができなかった」と説明するのは、エンジェル投資家であり、ウェブサイトを対象にコンテンツをテキストメッセージに変換するサービスを提供するベンチャー企業米TextMarks社の最高経営責任者(CEO)も務めるAriel Poler氏だ。

売上を出していない企業の場合、投資家の判断基準となる指標がないので、企業は、自社の評判や可能性を巧みに売りこむことで、買収主となる可能性のある企業に自社の価値を大きく評価させることができる。ただしこの戦略は、Web 2.0のベンチャー企業よりもオープンソースのソフトウェア企業のほうでより一般的だと、Benjamin氏は言う。

「大企業向けオープンソース・ソフトウェア企業は、現実ではなく夢を売るというパターンにぴったりあてはまる。人々の心をわしづかみにして、財布もよろこんで差し出させるような企業も、今後は出てくることだろう」

ウェブ企業は、たとえすぐに到達する見込みではないとしても、売上をあげるようになるまでのはっきりとした道筋を示す必要があると、ベンチャー投資企業米Azure Capital社のゼネラルパートナーMike Kwatinetz氏は指摘する。

「『YouTube 』や『MySpace』は、買収時点では実質的な利益がまったくあがっていなくても、よい買収対象だった。その理由は、利益をあげる可能性が明らかなうえ、現実性が実感されたからだ」

それでも、Web 2.0バブル時代のこの段階において、ベンチャー企業の価値を高めるのは、利益力というよりは、いかに急速に人々に広範に受け入れられるかという伝染力の強さだ。

楽曲、動画、ウェブページなどのコンテンツ共有サイト『Plum』のCEOを務めるHans Peter Brøndmo氏は、次のように述べる。

「数字が重要なのはもちろんだ。だが、最も大事な数字は、ドルの桁がくっついたものではない。大事なのは、ページの訪問数やサイトの業績を測る数字だ。ベンチャー投資企業を訪れて、『われわれは月に200万人のアクティブユーザーを確保している』と言えば、大きな反応が返ってくるだろう。だが、『売上は200万ドルだった』と言ってもたぶんさほどの反応はないと思う。もちろん、両方を達成して、今後億単位のドルを稼ぎ出す途上にあると示せれば、どんな投資家も注目し、素晴らしいと言うのは間違いないが」

[日本語版:ガリレオ-向井朋子/小林理子]


※この記事は米国「WIRED」の記事を翻訳したものです。
  WIRED NEWS 原文(English)

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