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01 篠田陽一氏

来るべきユビキタスネットワーク社会の脅威と対策



〜安心・安全なICT社会をめざして〜

インターネットの普及が進み、その通信方法も多岐にわたってきた。また、家電機器をつなぐネットワークやセンサーネットワークなど、新たなネットワークも育ってきており、従来のインターネットと融合する「次世代ユビキタスネットワーク」の到来も遠い未来の話ではなくなっている。このような複合的ネットワークには、どのような問題が潜んでいるのか、利用者や提供者、それぞれの立場でどのよう対策をすべきなのか。篠田教授は、「次世代ユビキタスネットワーク」をも構築する大規模ネットワークシミュレーション実験環境「StarBED」で、これらの問題に取り組んでいる。

PART1「次世代ユビキタスネットワーク」に潜む脅威

利用者の利便性を向上する「次世代ユビキタスネットワーク」は、同時に広範化していくネットワークにおける脅威という重要な問題も懸念されている。新しいネットワーク社会にはどのような脅威が存在するのか、またその脅威をどう検証していくのか。北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の篠田陽一教授に将来のユビキタスネットワーク社会の脅威と、その検証を行っている大規模ネットワークシミュレーション実験環境「StarBED」について聞いた。

ネットワークの脅威は「人の肌」に近い場所へ

次世代のネットワークセキュリティに関する研究をされていらっしゃいますが、将来私たちの社会にどのような脅威が訪れるのでしょう?

篠田 近い将来、あらゆる電子機器がネットワークにつながる、ユビキタスネットワーク社会が訪れます。接続される端末は、これまでのパソコンだけでなく、人間の肌に非常に近いところで動作するようになるでしょう。たとえば、電球がセンサーネットワークにつながっていて部屋の明るさを感じ取って調節したり、空調やお風呂なども外気温や人間の行動をセンサーで感じ取って室温や湯温を調節するといった感じです。また、これらのスイッチもワイヤレスになり、制御する部分と実際に電力を流す部分が別々になってきます。このような社会では、新しい脅威も発生します。

攻撃には多彩な手法が考えられ、たとえば制御する部分を乗っ取られてしまうと、人間の肌が直接被害を受けてしまいます。寝ている間に暖房を冷房に切り替えてみたりするようなことだってできてしまうかも知れません。制御部分をすべて乗っ取ってしまえば、脅迫に使うことも可能になります。さらに人為的でなくても機器の故障やソフトウェアの不具合も脅威になります。ポットのお湯が沸かなくなる程度なら影響は少ないですが、適温だったお風呂のお湯が体を洗っているうちに高温になっていたりすると危険ですよね。たくさんのものがネットワークにつながる時代が来たときに、これらの脅威・攻撃についてどこまでを想定して対策を講じれば良いか、技術開発や技術の適用とともに、社会的コンセンサスを作って行かなければならないと思います。そのためにはまず、こういうものが壊れる時にはどう壊れるのか、壊れる時の特性や、だれも経験したことのない被害の相場感を調べるといったことが必要になります。そこで「タウンネットワークシミュレーション」という研究を行っています。


インターネットの安心・安全のための大規模ネットワークシミュレーション実験環境

「タウンネットワークシミュレーション」は、大規模ネットワークシミュレーション実験環境「StarBED」で研究されていますね。

篠田陽一氏

篠田 はい。インターネットは現在、巨大な通信インフラであるだけでなく、社会基盤としてもさまざまなサービスが提供されており、経済活動や生活に直接影響を与える重要なものになりつつあります。また、ユビキタスネットワークを構成するセンサーネットワークやホームネットワークなども、従来のインターネットと綿密に関係しています。しかし、重要なインフラであるだけに、新しい技術の導入に向けた動作試験や信頼性、安全性の検証、教育目的での実験などを、今動いているインターネット上では行うことができません。これらの要求に応えるために構築されたのが「StarBED」です。

「StarBED」は独立行政法人情報通信研究機構(以下、NICT)の北陸リサーチセンターに構築されています。現時点で900台弱のネットワーククライアントにそれぞれ複数台のクライアントOSを動作させることで、最大10万ノード規模の仮想ネットワーク環境を生成することが可能です。クライアントはVMwareなどの仮想化環境よって4つから10、50といった数のOSを起動することができ、OSの変更やコントロールはリモートアクセスで行えます。現実のインターネットに近い、非常に大規模なネットワークシステムをシミュレートできるので、商用利用を含むさまざまな実験や検証が実施できるのです。 ※ノード : 通信ネットワークを構成するコンピュータなどの通信機器のこと


篠田陽一氏
篠田陽一氏 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) 情報科学センター教授 1989年工学博士(東京工業大学)。1988年東京工業大学工学部助手、1991年北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授、2001年北陸先端科学技術大学院大学情報科学センター教授。2006年独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)北陸リサーチセンター(StarBED)統括責任者(兼務)および、情報通信セキュリティ研究センター長(兼務)。2007年内閣官房 情報セキュリティセンター 情報セキュリティ補佐官(兼務)。


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