法人のお客さま総合 > ICT Vision > ICT キーパーソンズ > 03 森川博之氏


情報通信ネットワークは進化を続け、携帯電話やデジタル家電など私たちの生活・行動に欠かせないものになっている。今後ネットワークはさらに進化、細分化し、あらゆるものがネットワークにつながるユビキタス社会が到来するのは誰もが予測のつくことである。森川教授は、センサーによって取得する実空間情報のネットワークでの活用など、ユビキタス社会の概念を再定義し、新しいサービスの可能性を模索している。今回は、一連の研究の構想や成果、そして近い将来に向け日本企業がなすべきことについて伺った。
実世界の情報がネットワークに取り込まれていく「ユビキタス」はこれからの社会を語るときに当然のごとく使われている言葉であり、すでに私たちが住む世界はユビキタス社会であるという声も聞く。では、森川教授の考えるユビキタス社会とはどのような社会なのか。その実現に向けてどのような研究に取り組んでいるのだろうか。
ユビキタスネットワーク社会の定義
ユビキタスという言葉は一般化しつつありますが、教授が考えるユビキタスネットワーク社会とはどのようなものでしょうか?

森川 ユビキタス社会というと、多くの方は「いつでもどこでもインターネットに接続し、色々な情報を入手できること」と認識されていると思います。見方を変えると「コンピューティング(Computing)資源」、「ファイルやアプリケーションソフトなどのコンテンツ(Content)資源」、「インターネットに接続するためのコネクティビティ(Connectivity)資源」という3つの"C" がどこにでもある環境といえます。私たちはこれを「3C everywhere」と呼んでいます。この環境を実現することは、現在の技術の延長線上にあり、今の技術を外挿すればよいので、それほどチャレンジングなことではないと考えています。
私たちの考えるユビキタスネットワーク社会とは、場所を選ばずインターネットに接続できることは最低限の必要条件であり、さらに「インターネットに実空間情報や実世界情報といったものが組み込まれていくような世界のこと」を指しています。センサーなどがネットワークに接続され、実世界情報や実空間情報がインターネット上を駆け巡るようになると、今とは全く違うサービスやアプリケーションができるのではないかと期待しています。
プライバシーゼロプロジェクトとは
教授の研究の代表例として「プライバシーゼロプロジェクト」というものがあると聞きましたが、これはどのようなものでしょうか?

森川 「プライバシーゼロプロジェクト」という名前は非常に語弊のある名前で、個人のプライバシー情報をさらけ出すような印象を受け、非常に誤解を招きそうなので、基本的には研究室の中や講演だけで使用しています。本来このプロジェクトは、さまざまなセンサーから得られる、実空間情報をすべて集めてみよう、集めた情報で何が出来るのか明らかにしよう、ということを目的としています。
私たちが進めている「プライバシーゼロプロジェクト」の代表的な研究に、「CoCo」というものがあります。センサーを使って人の現在の姿勢などの状態情報を推定する研究です。現在販売されている携帯電話には、かなりの割合で加速度センサーが搭載されていますので、「CoCo」の研究では、この加速度センサーを使い、人の今の状況を把握しようとしています。つまり、携帯電話を持っている特定のユーザーが現時点で立っているのか座っているのか、あるいは歩いているのか、走っているのか、さらには、バスに乗っている、地下鉄に乗っている、車の中にいるといったその人の状態や状況を把握するものです。

単一加速度センサーを用いた「姿勢推定技術」よって抽出される「歩行」「走行」「直立」「着座」などといったコンテキスト。多様なユーザーに対しても十分な推定精度を保つため、短時間の学習データからユーザーごとに適切な推定基準を設定できる「ユーザ適応機構」を導入している。
こうして得られた人間の状態情報を活用することにより、新たなサービスやビジネスが創出できるのではないだろうか、そう考えたわけです。

