|
Chapter2.
なぜ、緊急地震速報配信サービスが可能なのか?
効率的な一斉配信を実現したNTTコミュニケーションズの技術
◆IPv6マルチキャストで効率的な一斉配信
 |
NTTコミュニケーションズ株式会社
ブロードバンドIP事業部
サービスクリエーション部
阿部 剛 |
|
気象庁の緊急地震速報は、2004年2月から開始した試験運用を通じ、活用方策の検討が行われてきた。試験運用の中で、安価な伝送手段としてインターネットでの配信も試みられていたが、伝送遅延や情報の欠落などの品質面での課題が挙げられていた。また、将来的に多くのユーザが利用した場合に、従来の1対1で通信を行うユニキャスト配信には限界があることが目に見えており、一斉配信する技術への期待が高まっていた。
このような業界での課題に対し、通信事業者として検討し、行き着いたのがIPv6マルチキャストでの配信だ。IPv6マルチキャストによる緊急地震速報配信は、唯一NTTコミュニケーションズだけが行っている。
IPv6は現在一般に利用されているIPv4に比べて膨大な数のIPアドレスを設定できるため、パソコン以外のものを含め様々な機器をネットワークに接続し、相互に通信するなど、ブロードバンド・ユビキタス時代のコア技術の一つとして注目されている。また、マルチキャストは、ネットワーク上にある複数の端末に対して、データを一斉に配信する技術で、緊急地震速報のように、同時に同じ情報を効率よく配信するのに適した通信方式だ。このIPv6マルチキャストをすぐにでも全国レベルで利用することが出来るネットワークが必要だが、NTT東日本・西日本が提供している「フレッツ」回線のIPv6サービスを利用することで、実現可能となった。
◆より確実な配信を実現するIPv6

緊急地震速報は「配信」、「伝送」、「受信」、「制御」と大きく4つの機能に分類することができ、その4つがそろって初めて有効に活用できる。NTTコミュニケーションズは、この4つの機能において、「配信」、「伝送」を中心に取り組んでおり、受信端末におけるIPv6マルチキャスト配信サービスに対応した通信仕様の定義も行っている。
また、NTTコミュニケーションズは、より確実な配信を行うために、各企業に設置してある受信端末とサーバ間の通信が正常に行えるかを確認する死活確認(ヘルスチェック)を実施している。具体的には、数十秒間隔で受信端末とサーバ間でハードウェアヘルスチェック、アプリケーションヘルスチェック、配信ヘルスチェックの3段階で確認を行っており、ヘルスチェック結果で異常があると、企業の担当者へ警告メールを送るなどのサービスも提供し、確実な配信をサポートしている。すべての受信端末にIPアドレスを付与してダイレクトな死活確認ができるのも、IPv6環境だからこそのメリットである。
◆新しい情報の活用で安全対策やBCPが一段と進化
受信端末の開発はパートナー企業が進めており、用途に応じて受信端末の選択が可能だ。現在利用できるのは、IPテレビ電話「フレッツフォン」シリーズをはじめ、Windows® XP搭載のパソコンで動作する緊急地震速報受信・警報表示アプリケーション、防災・通信機器メーカーが開発した外部機器制御用の装置などがある。これらの受信端末には、あらかじめ経度緯度や地盤の情報などを入力しておく。緊急地震速報を受信すると、設定情報に基づいて受信端末が設置された場所での主要動(S波)到達時刻と震度を計算し、計算の結果、例えば震度4以上であれば、警報を鳴らしたり他の装置を制御したりするのである。オフィス、工場、商業施設、マンションなど、活用の場は多彩だ。
NTTコミュニケーションズには、すでに、安全対策やBCPへの関心が高い企業から、多数の引き合いがある。
不特定多数の一般市民がいる商業施設では、混乱が予想されるため、利活用方法の検討は慎重に行う必要があるが、将来的には当たり前のように利用されることが期待される。過渡期では、こうした施設の防災センターから、各テナントの責任者にだけわかるキーワードを使った放送を行い、火元管理をいち早く行うといった対応が行われている。
またマンションの場合には、各住居のインターホンで一斉放送する機能、あるいはエレベーターを最寄り階で止める機能や警報をエントランスや館内駐車場に放送する機能などを備えていることをアピールすれば、賃貸客や購入客への付加価値を高めることにもつながる。
いずれにしても、10秒ほどの猶予の間に最適な行動をとるには、普段から実地の練習を何度も行っておかなければならない。受信端末を設置した企業は、さまざまなレベルの警報が発せられたときを想定した対応策をBCPに取り込み、定期的に訓練を行うことが不可欠であろう。
また、学校の防災教育に、緊急地震速報に対応する訓練を取り入れれば、長期的には、社会全体が、緊急時の対応を落ち着いて的確に行えるようになるに違いない。 |