NTT Com グローバル Watch vol.4

NTT Com グローバル Watch vol.4

アジア地域で求められる事業継続リスク対策

自然災害が企業の事業継続に与える影響については、2011年東日本大震災であらためて認識が深まった。もちろんリスクは国内だけにあるわけではない。アジア地域でも2011年のタイ洪水に見られるような自然災害への備えが欠かせない。大規模な自然災害は一拠点の機能を失わせるだけでなく、企業のサプライチェーン全体に大きな影響を及ぼす。リスクを回避し事業を継続するためには、事業継続計画(BCP)の策定が喫緊の課題となっている。

BCP対策のグローバルトレンド

企業活動は事業継続を脅かす多種多様な「リスク」との闘いだ。大規模な自然災害やパンデミック(世界的な感染症の流行)などが発生すると、業務は継続できず、企業に損害が生じる。そのため、このような災害や事故などの緊急事態に備えて、企業にとって「中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画(※1)」の策定が一般化してきている。
特に情報システムへの依存が増大している昨今、ITを意識したBCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)・DR(災害復旧:Disaster Recovery)計画の策定を欠かすことはできない。

図1 事業継続計画の概念図

BCPを策定することで、災害が発生しても事業を継続させると同時に、復旧までの時間を縮減することができる。

出典:内閣府「事業継続ガイドライン 第一版」

もともと世界の企業にBCPの重要性が認識されるようになったのは、2001年の米国同時多発テロだったといわれる。以降欧米では、多くの企業がBCPの重要性を認識して取り組みを進めており、中には、BCPに関してグローバルで統一した基準をもつ企業もある。日本でも東日本大震災をきっかけに改めてBCPに対する意識が高まり、具体的な対策を講じる企業が増えてきた。

※1 出展:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」

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アジアでの企業活動におけるリスクとBCPの必要性

一方で、世界的に企業活動がシフトしつつあるアジア地域では、経済発展が優先され、膨大な国費の投入を必要とする防災インフラの整備は進んでいない(※2)。ところが、アジア地域は他の地域に比べて洪水や地震などの自然災害の発生率が高く、新型インフルエンザなどによるパンデミック発生の危険性も高い。つまり、いまBCP対策が緊急に求められている地域のひとつが、アジアであると言える。

図2 地域別にみた世界の自然災害(1978〜2008年)

発生件数、被害額ともアジア地域が抜きんでて大きな割合を示している。

出典:内閣府 防災白書(平成22年版)

自然災害のリスクという点で端的な例が、2011年に発生したタイの洪水だ。タイは日系企業の進出が3100社以上(※3)と多く、大手自動車、電気、化学メーカーで多くの被害が報告された。また、タイに進出する外資系企業のHDD(ハード・ディスク・ドライブ)工場への被害はPCメーカーに大きな影響を与え、HDD価格の世界的な高騰にも繋がった。
こうした洪水は、気候や地理的条件の似通ったミャンマーやラオス、カンボジア、ベトナム、バングラデシュなどの近隣諸国でも起きやすいという(※2)。

図3 鳥インフルエンザ(H5N1)発生国及び人での発症事例(2003年11月以降)

一例にすぎないが、人への感染、発病が報告されている鳥インフルエンザ(H5N1)の発症事例も、圧倒的にアジアが多い。

出典:厚生労働省 鳥インフルエンザ(H5N1)について(最新の発症者数については、こちらをご覧ください。)

パンデミック発生の危険性という意味でも、アジア地域への警戒を怠ることはできない。パンデミックでは、建物やコンピュータ・システムには何ら影響がなくても、それを使う人が会社に出勤できないという事態を想定しなければならない。流行が本格化すれば、出張、打合わせといった、業務に欠かせない人的交流も大幅に制限されるようになる。具体的には自宅─オフィス間の通勤、オフィス─オフィス間や顧客拠点への移動・出張などに影響が出る。

これからは、どの企業もこれらのリスクを念頭において、アジアでもより高い水準のBCP対策をとることが求められている。

※2 出典:高橋智幸・関西大学社会安全学部教授「タイ洪水、日本は世界一の防災技術で貢献を」

※3 出典:帝国データバンク「特別企画 : タイ進出企業の実態調査」(全国版)

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BCPソリューションとNTT Comの取り組み

BCPソリューションの一つとしては、DC(データセンター)の活用が挙げられる。遠隔地にBCP/DR用のデータセンターを用意し、企業データをDCへ、あるいはDC間でデータ保護を実施する広域災害を想定したサービスが効果的だ。これらは「MDR:マルチロケーション・ディザスタ・リカバリ・ソリューション」と呼ばれる。
企業は安全なDCにITリソースを預けたり、ホスティングサービスを利用したりすることで、リスクマネジメントを実施することができる。例えば、営業拠点が洪水に見舞われても、DC等にバックアップがあれば、災害前と変わらない環境で業務を継続できる。また、パンデミック環境下でも、データのバックアップがあれば、リモートオフィス等のサービスを組み合わせることで業務を継続できるようになる。
さらに電話やビデオ会議などを有機的に統合したユニファイドコミュニケーションシステムやモバイル機器への普段からの投資は、単に生産性向上というだけでなく、BCPの一環として重要な意味を持っている。

NTT Comでも、アジアにおけるBCP対策のニーズの高まりに応えて、BCP関連サービスの拡充を続けてきた。実際に、NTT Comが提供するMDRのサービスには、2012年1月から香港拠点が追加されている。香港拠点の追加により、すでに提供中の日本・アメリカ・ヨーロッパを含めた世界13拠点間でグローバル規模のBCPを実現することができるようになった。
またNTT Comでは、アジア全域でDC事業やインターネット接続事業を強化しており、これからも全世界中に拠点やサポート体制がある強みを活かし、アジアへ事業展開する企業にトータルかつ最適なサービスを提供していく。

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現地事業担当者からのメッセージ

NTT Communications (Thailand) Co., Ltd

2011年の最も大きな出来事は、50年ぶりともいわれる規模で起こった洪水です。700人以上の死者を出したこの大洪水により、2カ月間にわたりアユタヤ、バンコク地区の工業団地が浸水し、多くの企業が甚大な被害を受けました。

NTT Com タイでは同年10月以降、災害対策室を設置し、お客さまのIT資産緊急避難作業などの支援を実施いたしました(DCコロケーションの提供、サーバーの移設工事、緊急の回線の手配など)。この間、工場の浸水対策のため、サーバーや通信機器をDCに移設したいというお客さまが急増し、隣接するビルで提供しているDRレンタルオフィスの利用も100席以上に上りました。バンコク、アユタヤ地区ともに工業団地の排水が完了した後も、既存回線の復旧に努め、柔軟なサービス提供を行って参りました。

2010年の赤シャツ騒動に引き続いて今回の水害が発生したことから、地域におけるリスクを再度見直し、タイ国内のNW構成やサーバーの設置場所に関するご相談をいただくお客さまが増えています。今後は災害に強いICTインフラの強化と、クラウドサービスや業務用サーバーの移設などデータセンターをハブとしたBCP提案が望まれています。

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