
コンプライアンスをどう進めるか、と迷われている方は多いと思います。内部統制の目的の第一はコンプライアンスだ、と言ってもいいでしょう。しかし、口でいくら唱えたとしても、だめなものはだめ。一体どうしたら良いのか、という悩みをよく聞きます。
物事を進める場合に、法的な問題、法的リスクを考えるのは鉄則です。そのために守るべきルール、約束事を明確にする、しっかりとした契約を結ぶというのは確かに必要でしょう。ですから、ビジネスを開始する場合には約款を作成し、様々なトラブルを想定して、その回避策を検討するのです。このような手順を経て成立したビジネスなら、コンプライアンスは完璧なはずなのですが、現実にはクレームの嵐や社員の不始末が連続するといった事態も珍しくありません。そのときに必ず聞かれるのが、「体制は作ったのだが、魂が入っていなかった」という言い訳です。
企業の内部統制全体にも同じ問題が起きています。内部統制の組織図、構造図は膨大で、複雑に、そして精緻に作られていることが多いのです。ゆるぎない概念で構成され、反論の余地の無い、立派なものとなっていたりします。米国のCOSOに従い、正確に作りこまれたそれは、監査法人も舌を巻いてしまうほどです。
しかしながら、さてそれが動いているのか、経営者はちゃんと理解できているのか、というと、はなはだ不安なことが多いようです。説明はきちんと聞いたし、本も買った、一通りのことをしたのだから、分かっているはず、とはいうもののどこか自信ないご様子なのはなぜでしょうか。どうしたら「魂が入った」内部統制になるのでしょうか。そこが明らかにされなければならないのです。
人間は左脳で論理的な内容を把握し、その後右脳でイメージ化して、空間的な位置づけや動き方をシミュレーションして、はじめて本当に物事を理解するといいます。すなわち論理だけではなく、イメージや空間構成も捉えないと、本当に理解できたとは言えないわけです。
今の多くの企業は、内部統制をあまりに左脳的に解釈しており、右脳を活用していないために、理解ができていないのだと思うのです。理論的には分かったつもり、なのに自信がないというのは、右脳が納得していないからなのです。
イメージや感覚で「なるほど」と納得できなければなりません。よく、腹に落ちる、とか腑に落ちる、といいますね。まさにそうした理解を得なければならないわけです。右脳は、形式ばった論理だけではごまかされない、それだけでは納得しないのです。これはとても良いセンスだと思います。それによって物事のバランスが取れているのでしょうね。
では、右脳が理解するには、どうしたらいいのでしょうか。 人間は物理的存在ですので、身体で理解するということがあります。それだけでなく、イメージが明確であれば、そこからも理解はできます。つまり、感覚にしっかりと訴えかけられるようなものがあれば、理解することができるのです。
たとえば、あるサービスを受ける場合に、約款を読んでサービスを理解することと、現実のサービス画面を見て、そのイメージからサービスを理解することがあると思います。おそらく前者が左脳的理解であり、後者、すなわち画面から理解するのが右脳的理解です。
つまり、右脳で理解をするには、論理を押さえるのではなく、身体を動かしたり、良いイメージを与えたりして、しっかりとしたイメージを持たせることが必要なのです。テレビや映画、動画、音楽といった、イメージを広げていくようなものを利用するのが手っ取り早い方法でしょう。
それでは、内部統制を右脳で理解するには、一体どうしたらいいのでしょうか。
論理で攻めてもだめですね。たとえばE-ラーニングにしても、論理を画像に貼り付けたようなものでは、せっかくの右脳ツールが活きずに、左脳のツールになってしまいます。右脳のツールは右脳に訴えるためのイメージを伝達することに利用すべきなのです。
たとえば、深夜勤務の後の疲労困憊した社員のイメージで考えてみましょう。内部統制ができていない場合、重要なデータの入ったノートPCを抱えて、よたよたと帰宅電車に乗り込みます。すると席が空いている。当然座ります。するといつの間にか居眠りです。そして、次に気付いたときには手に何も持っていない、電車の中にノートPCを忘れた、というイメージです。次に内部統制がしっかりしている場合をイメージしてみます。そもそもノートPCを会社に持ち込まないのですから、疲れて帰るときも手ぶらと言う具合です。楽しく飲んで帰ったりもするかもしれません。そして電車の中ではゆっくり夢の中、というイメージです。さて、どうでしょうか。内部統制で安全な業務を作るということがより深く理解できたのではありませんか。これでもまだイメージが足りないかもしれません。
あるいは、内部統制の成功で業務効率化した企業の見学なども有効でしょう。業績優秀な企業は、その様子を説明したり、見せてくれたりすることがあります。企業としても見学してもらって、客観的に評価されることで、内部統制に成功したことがしっかりと確認できるという面があるのでしょう。成功した企業はこうした方向に動いて透明性を高めていくものです。
このように、右脳で理解することこそが、本当の内部統制を進めるコツだと言えるでしょう。