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牧野二郎弁護士コラム 内部統制事始め
Vol.12 リスクの尻尾(しっぽ)をつかむ
「知らなかった」では済まされない

お土産は・・・・で決まり。まさに定番のお土産となっていたお菓子。作りたてでおいしいと思っていたら、賞味期限切れの冷凍保存品であったとは驚きです。騙されたと思うと同時に、我が舌の頼りなさを実感しました。ふがいなさと、それ以上の憤りを感じていたら、今度は老舗料理屋の銘を冠したお菓子の賞味期限まで偽装していたことが分かりました。ここまでくれば世も末か、と思うほかないのでしょうか。

不思議なのは、責任者が「知らなかった」「現場でやっていたこと」という逃げ口上に終始していることです。「知らない」と言えば、許されると思っているのでしょうか。知るべき立場の人が、「知らなかった」というのは、免責の言葉ではなく、知るための努力をしなかったという「任務懈怠(けたい)」の責任を認めたものとするのが裁判所の考え方になっています。「知らなかった」ことの責任は重大なのです。

隠しきれないリスクの尻尾

では、「知らなかった」と言わなくて済むように、必要なことを確実に知っておくにはどうしたらいいのでしょうか。忙しい経営者に、すべてを知っているように求めても、それは無理というものです。経営者には経営上知らなければならないこと、経営判断のために知っておくべきことは無限にあるといっていいでしょう。そんな多忙な中にある経営者や管理者はこの問題に対して、どう対処したら良いのでしょうか。

私は、リスクの尻尾をつかむことをお勧めします。チャンスをつかむには、その前髪をつかめ、というそうですが、リスクの場合にはそう簡単に姿を見せません。隠ぺい、粉飾は隠されるものであり、ごまかされるのが常です。実際にそこに存在していても、その表れ方は多様で、把握がしにくい。報道されるまでは確かではなく、内部者ですら事前にキャッチするのは難しいもののようです。

そこで私は提案します。こうしたリスクは、逃げ回っても、尻尾(しっぽ)までは隠し切れず、見えることが多いです。例えば、偽装の現場は巧妙に隠されていてなかなか見えなくても、偽装に利用したシールが大量に消費されているはずです。シールの使用度合いを見れば不合理が見えてくるでしょう。製造個数と、その日の販売個数の差は売れ残りになります。ところが、その売れ残りが再度売られたら、製造個数以上の売上が上がったことになります。この数字の違いは隠せないですね。在庫の管理や食品の品質管理、衛生管理などを、単なる点検行為に終わらせることなく、注意深く実施すれば、隠されたリスクの尻尾(しっぽ)は見えてくるのです。

疑うのではなく、より良くするために

牧野二郎 リスクを探す、その尻尾を探すというと、性悪説に立って、徹底して疑うべきではないか、という意見が出てきます。それもひとつの方法論ですが、疑われる方はたまったものではないでしょう。痛くない腹を探られるのは苦痛でしかないのです。そのようなことを繰り返していて、事業効率が上がるはずはありません。それが慣習化すると、疑われないように、何もしない、動かない、定められた以上のことはしないというのが基本となり、事業の成長や改善は見られなくなるでしょう。

リスクの尻尾をつかむには、現場担当者と同じ目線で、品質向上や事業の改善、効率化の姿勢を明確にして、業務を見つめることに尽きます。業務をどうしたら良くなるか、という視点で徹底的に見つめ直し、検討し直し、改善することが必要です。そこに犯人探しや、責任追及という行為を持ち込んではいけません。なぜなら、仮に失敗した人を特定できたとしても、再発する危険が除去されない限り、第二の犠牲者が出ることになりますから。

注意深く、現場の業務改善を実施すると、その中でリスクの尻尾が必ず見えてきます。そうした姿勢をもつことで、リスクを回避できれば、「知らなかった」という言い訳をする事態には決してならないはずなのです。