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牧野二郎弁護士コラム 内部統制事始め
Vol.10 セクハラは防げるのか
終わらないセクハラの議論

セクハラ問題はながらく議論されていますが、おそらく当分続くことになりそうです。男と女がいるからではなく、男社会の中で少数の女性が弱い立場にある限り、そうした性的で不正なプレッシャーがかかることは避けられないでしょう。

これに対して、セクハラ防止委員会や改善委員会などが組織され、セクハラ手帳、セクハラの学習会などが開かれたりします。こうした指導も一定の教育効果がありますが、決して万全でもありません。実はこの問題は大変難しいのです。たとえば判断基準の不明確さがあります。女性にとっては嫌なプレッシャーと、歓迎すべきプレッシャーがあるといいます。嫌いな上司から強引に食事に誘われたらセクハラになるけれども、好意を寄せている上司に誘われたらそれはセクハラではなく、喜んで承諾します。肩に手をかけて話しかけるような行為の判断も女性の好き嫌いに強く影響されるようです。これは女性が持つ嫌悪感を重視しているわけですが、嫌悪感というのは、個人によって差がありますし、職場環境やその場の雰囲気など、様々な要素によって左右されることでしょう。そうしますと、この嫌悪感という感情は、相当幅のあるものであって、客観化が困難というべきでしょう。そこで「この程度なら良いはず」といった言い訳がはびこることにもなるのです。

セクハラは個人的な問題なのか、それとも管理の問題か

セクハラの発生や放置に関して、管理が問われることがあります。本来セクハラは個人の性的な嫌がらせであるわけですから、相当個人的な行動の問題といえます。しかし、そうした性的な嫌がらせが横行するような環境を放置したり、実際に発生したセクハラに対して的確な処罰ができていないといった問題であれば、職場の管理の問題ともなるわけです。従って、セクハラは個人の問題であると共に組織の問題ともなるのです。

ではどうすべきか

大胆な発想としては、男女平等の実現が挙げられるでしょう。数的な平等も重要です。女性の多い職場では男性の横暴、性的嫌がらせは、発生しにくくなるはずです。多くの女性が見ていますし、性的嫌がらせをすれば多くの批判や抗議が予想されます。下心があってもなかなか行動には移せないでしょう。そのうちそうした下心さえなくなってゆくはずです。性的な嫌がらせが許されるような雰囲気に問題があるのであって、そうした雰囲気を徹底的に除去すべきでしょう。

次に、透明性のある職場環境を作ることだと思います。たとえば、密室が無い、閉鎖性が無い、指揮命令が複数の系統にある、専属の部下を持つ制度は持たない、グループで仕事をする、といった工夫ができるでしょう。2人しか従業員がいない、といった職場ではこうした体制確保は難しいので、本社への報告を工夫すべきでしょう。部下から本社に直接報告することを義務付け、その報告に対して上司は一切関与できない仕組みを作るなどです。嫌がらせを受けた部下は、報告書で一切を報告でき、対抗措置が取れる仕組みを作るのです。こうして力のバランスを取ることなども必要になるでしょう。

バランスをとるということ

牧野二郎 こうしたバランス論で考えますと、セクハラは女性の感情論だけに依存するものではなく、女性の地位を向上させ、力のバランスを取ることで、制度的に対応できるものとして扱えるはずなのです。男性の立場からも、何が悪いか、何が嫌悪の対象なのかがはっきりするでしょうし、大いに議論できるはずです。バランスがよければ、乱暴なことをする気も起きず、まず同僚に相談し、協議して、円滑な業務遂行が出来るようになるはずです。セクハラに正しく対応するというのは、倫理問題とか女性の感情論なのではなく、バランスをとるという管理の問題だというべきでしょう。こうして安定したバランスの中であれば、男性としても正々堂々と女性の同僚や部下を食事に誘い、アプローチすることもできるようになるはずなのです。

簡単にリスクの大小が決まるように言ってしまいましたが、実はその判断こそが大事なのだと思います。判断の背景には企業戦略があり、自社の企業としての方向性に対して、そのリスクが重大か否かを検討することが重要だと思うのです。