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牧野二郎弁護士コラム 内部統制事始め
Vol.6 日本の伝統と内部統制
歴史ある日本の企業がお手本に

いつものように企業のことをぼんやりと考えていて、ふと気がついたのですが、わが国には数百年も続いている事業がほんとうに多数、存在しますね。三井、住友などのいわゆる旧財閥系は言うに及ばず、京都や浅草などにたくさんある老舗や伝統工芸に代表される職人の世界にも、数百年間以上も続いてきた、というものがたくさんあります。そうなのです。いまさら内部統制などと、大げさに言わなくても、そのお手本のような事業体、企業はごく身近なところにあったのです。

「新日本永代蔵 ―企業永続の法則 」船橋 晴雄 (著)によれば、建築業の「金剛組」はなんと1400年も続く企業だそうです。そのほか身近なところにある有名な企業が実に400年、500年と事業活動を進めていることがわかります。

こうした日本企業は、わが国の風土の中で、人々の人となりを踏まえて、合理的な経営を進めてきたのですから、それ相応の経験や真理を体得しているのです。そうした企業は、家訓や、創業の精神を「定め」として代々受け継いできています。

信用が基礎、清貧に徹すること、隠し事は禁止、不正な行為も禁止、間違えはすぐに報告、失敗は良いが失敗を隠すことは許されない、などなど我々のDNAの中にもある事柄が山ほど伝えられていました。

先人の教えには内部統制が存在する

私が一番驚いたのは、「儲けすぎてはいけない」という教えがあったことです。私は儲けること、利益を上げることは企業の鉄則、事業の存在意義とも考えていました。しかし、先人はこう教えているのです。「こちらが儲かるということは、相手方が損をすることになる」、と。心がけるのは、損がないこと、だと教えます。損をしないということは、相手が得をするかもしれない、それは相手が満足してくれることであり、信用につながるというのです。そうなのです、損を出さない程度の仕事であれば、相手方を喜ばせ、長く事業を続けられるというのです。

先人の教えの中には立派な内部統制が存在しているのです。何をもっとも大切にすべきなのか、そして信用を確保するための基本方針、さらには販売や営業の帳簿作り、正確で迅速な報告、番頭手代の教育、点検作業などなど。

伝統に学び、あるべき姿を追求する

牧野二郎 アメリカの事業活動は、やっと200年目です。アメリカは今日まで資本主義を牽引し、スクラップ・アンド・ビルド(破壊と構築)を基本理念に、激しい競争を繰り返し、次々と淘汰を繰り返し、経済を活性化してきました。まさに「動の世界」を作り出してきたといって良いでしょう。しかし、長い歴史をみてみますと、永続企業としての品格や確かさ、安定にかけては、わが国の企業、事業体のほうが数段優れているように思います。

何もアメリカ人に教えられなくても、わが国には立派に内部統制が存在しているというわけです。横文字の原理原則を、金科玉条のように崇拝しなくても良いのです。我々の身体の中に染み渡っているはずの、伝統の統制機能を呼び起こし、それを鍛え上げれば良いのです。そして同時に、情報化という新しい時代に向かって、必要な自己変革をしていけば良いのです。伝統というのは、革新の連続だとも言います。守ることではなく、変化しながら、続けること、こだわりながら変化することなのです。この、こだわりの部分が、創業の精神の核心部分であり、その企業、事業体の得意とするところなのでしょう。

我々はまず、こうした伝統に学ぶ必要があります。そこには伝統を守り、育ててきた原動力があり、基本理念があるはずです。それこそがわが国の企業のあるべき姿、あるべき内部統制の姿だと思うのです。