
みなさんの会社では、そろそろ内部統制の設計が終わったでしょうか。その結果、大きな組織改革や、業務改革、様々な役割分担が実施されたのではないかと思います。各社で内部統制の担当をされる方は、優秀で真面目な方がそろっています。その設計内容もまた綿密であり、正確なものとなったことでしょう。
さて、取り上げるのは、「万物流転、総てのものが変化する」というものです。会社も人も変わるもの。変わらぬものなど何一つ存在しない、という前提で内部統制を斬っていきたいと思います。
「会社も人も変わる」で考えると、近年非常に多いのは複数の会社の合併です。企業はそれぞれ文化風土が異なります。仕組みも異なれば、業務内容ももちろん違うでしょう。管理方法すら違うわけですね。そうした企業が合同するとき、どのような変化が生まれるか、を考えてみましょう。大きな企業、吸収する存続会社が支配的に統合される場合は、その企業の規範が優先されますから良いのですが、その場合でも、吸収される側の遺伝子とも言うべき風土や習慣、行動原理はすぐには変わりません。徐々に変化しますが、その変化が完了するまでは二つの文化が並存することになります。ましてや、それぞれの企業内で同様の業務を持つ部門同士がひとつの部門に統合される場合には、一つの部門に異なる二つの文化が並存する体制が永続することになります。そうなると業務内容も管理も二つ必要になり、相互干渉が排斥され、おかしなことになります。
こうして、合併や業務提携など,企業風土、文化の異なるもの同士が一緒になったとき、文化の摩擦が生じて、事故に繋がる危険が増加します。管理コストは倍かかるということになるでしょう。
その対策として、管理体制や手法を平準化して、いつでも他社と合同できるような統一的な指標を総ての企業が持つべきだという意見もあるようです。まさに、管理体制や手法、すなわち内部統制の方式ですね。しかし、あるかどうかわからない企業合同のために、それらを平準化し、共通させてゆくのは、本末転倒です。無駄な費用が発生する可能性が高く、かつ、通常業務が非効率化する危険もあるでしょう。それぞれの企業には、独自の戦略があります。そうした戦略に基づいて、リスクを洗い出し、体制を整備しています。従って、戦略が違う企業同士で管理体制を平準化し、統一するのは困難なのです。
企業のさまざまな業務活動のなかには独自性や、ノウハウが詰まっています。それを生かしながら、効率性、差別化要素を強化してゆくことが求められるのです。そのことに気付かず、そうしたノウハウを捨ててまで平準化するのは大いに問題なのです。
それでは、企業はどうすべきなのでしょうか。私はそれこそが、まさに、万物流転を視野に入れておくことなのだと思います。
人事異動などで内部統制の担当者が変わる可能性があるのはもちろん、経営者が変わることもあります。監査役、監査法人も変わってゆくでしょう。要するに、企業においては、何一つとして、変わらず頼りになるものはないという認識を持ってもらいたいと思います。
それらを認識した上で、基本となるルーチンの部分や、資金流動を伴う場面、不正の温床となりやすい部分など、絶対に守るべきポイントを明確にして明示しましょう。そして、万一、企業合併などが起こってしまった際には、そのポイント部分を相手に飲ませ、それを新しい会社の基本とする、という条件をもって合併する、といった対応が望ましいでしょう。
ひとつの企業であるということは、最も危険なところは一括管理する、という原則は曲げてはなりません。しかし、そうした危険な部分以外については、多様な文化や様々なノウハウが混在していて良いでしょう。いや、むしろそのほうが、企業としての生命力を熟成させるかも知れません。そうした企業文化の摩擦がうまく利用されることで、より大きなエネルギーとなる可能性もあるのです。
企業にあっても、すべてのものは変化します。万物流転の思想を明確に意識して、変化をものともしない強靭な内部統制を築くこと。絶対に守る部分と緩やかにまとまりを求める部分とを明確に区分し、それらを合理的にコントロールする、という姿勢が求められるのです。
敢えてもう一言。内部統制自体も流転します。戦略が変われば、内部統制も変わります。これとても不変ではない、ということなのです。